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第49話

 カルロスの独壇場により過激派集団も言葉が通じない相手に辟易したらしく、秋雨に対して鼻息荒く絡んでいた姿が嘘だったのか足早にいなくなってしまった。

 周囲の視線は未だにあるものの、秋雨はカルロスへとお礼を告げた。


「ありがとう、助かった」

「はっはは、礼は不要さ。面倒事はさっさと片付けるに限るからな。ジョワユーズもそう思うだろう?」

「無論だ。面倒なものを放置すると後々足を引っ張られるからな」


 引き続きハイテンションなカルロスと喋る剣に、秋雨は困り顔を浮かべる。

 一方、少し離れたところにいる警察官が明らかに銃刀法違反のカルロスに対してどうするべきか思案している。が、あくまで遠くから観察するに終始しているようだった。

 それに気づいたエリスティマは「使えないわね」と呆れ気味に毒吐いた。


「それよりもカルロス。会談は東京で行われるのに、何で福岡にいるのよ? アンタが開催前で日本に到着していることに驚きだけど、会談とはまったく関係のない場所にいることにも驚きなんだけど?」


 イギリスとフランスというヨーロッパの国であるが故に、エリスティマはカルロスの性格を熟知している。

 大胆不敵にして、神出鬼没。脈絡のない唐突な行動を好み、誰にも縛ることができない自由人。それ故に他の十二勇士たちを心底困らせることは多々あれど、それ以上に信頼されるカリスマを有している。

 しかし、行動が読めない彼の行動には何かしらの意味を持っていることが殆どだった。


「確かに俺のような人間が馬鹿正直に定刻通りの動きをするわけがない。会談なんざ、正直レアに任せてしまいたいくらいだ。まあ、日本にも面白い奴がいるって話を耳にしたから、一足先に来訪したってワケだ」


 カルロスはそう言ってから、秋雨へと視線を向けた。


「風の噂だと頂点捕食者を二人退けたらしいじゃないか。俺はそんな君の顔を拝みに来たんだぜ?」

「は、はあ……とは言っても、俺一人だけの力じゃないぞ」

「ふむ、謙虚な姿勢は実に騎士道に通ずるものがあるな。実に素晴らしいな! ふむふむ、冷静に物事を考えることもある程度はできそうであるが――少しばかり悩みを抱えているようにも見えるな!」


 カルロスは断言するように言い放つ。


「ま、悩みを抱えることは良いことだ! これこそ、所謂青春ってヤツなのだろうか? そうだろう、ジョワユーズ!」

「然り。実に良いものだ!」


 ジョワユーズの答えに高笑いをするカルロス。

 秋雨はそんなテンションに圧倒されるばかりであった。


「まったくアンタはいつもうるさいわね。それで何で福岡に来てるのよ。まだ答えてもらってないわよ!」


 エリスティマの言葉に、カルロスは「ふむ」と口元に手を当て頷く。

 そして、口を開く。


「俺は気になる存在がいると試してしまいたくなる質なんだ」


 唐突な発言に秋雨は困惑する。


「こんな街中で――なんざ無粋なことは言わないでくれよ」


 瞬間だった。

 秋雨の首元へ強烈な殺気と共に刃が迫った。


「――――ッ⁉」


 即座に後方へ跳び、秋雨はキッとカルロスを睨んだ。

 周囲も突然の出来事に騒然となっている。


「アンタ、何やってるの⁉」


 エリスティマが目を見開いて怒鳴る。

 しかし、当のカルロスは高笑いしながら、剣――ジョワユーズを構える。


「はっはは! そう怒鳴るな、エリスティマ。美人が台無しだぜ? 俺は俺の目的を果たそうとしているだけに過ぎない」


 そう言ってカルロスは真っ直ぐに秋雨を見る。


「二人の頂点捕食者を退けた実力を見てみたくてな。そのため一足先に日本――福岡へやって来たってことさ」


 カルロスからの殺気が真っ直ぐに秋雨へと突き刺さる。


「さあ構えるといい、神水守秋雨。君の実力を俺へ示してくれ!」

「お前⁉ こんな街中でいかれてるのか⁉」

「愚問だな! そんなもの俺には関係ないのさ!」


 カルロスが地を蹴り、秋雨へと肉薄する。

 秋雨も否が応に氷刃刀を作り出し、ジョワユーズの一撃を受け止める。


「素晴らしい速度だな!」

「ふざけんな!」


 秋雨はそんな一括と共に、カルロスを押し返す。


「はっはは! いいぞいいぞ、全力で楽しもうじゃないか!」


 押し返された勢いを使って距離を取ったカルロスは満面の笑み浮かながら、そんな歓喜の言葉を言った。

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