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第47話

「体調はどうだい、アル?」


 外行き用の白を基調とした装いでマーリンは、自室から出てきた澄み渡った青の双眸と黄金色に輝く頭髪の青年へ問う。

 青年とは言え、まだ少年のあどけなさを残す彼の名はアルトリウス・グラストンベリ―。

 魔女会(ウィッチクラフト)に所属する聖剣使いだ。


「完全に完治したよ、マーリン。うん、次は負けないさ」

「うんうん、その意気があれば大丈夫だね。アルが死にかけている時は心臓が止まってしまいそうだったよ」


 自身の胸を押さえながらマーリンは告げる。

 しかし、アルトリウスは首を横に振りながら口を開く。


「確かに死にかけていたけど、たぶんアイツは僕を殺さないように手加減していたと思うよ」


 確信を持って断言するアルトリウスに、マーリンは眉を顰める。

 仮にそうであったとしても、やはり信条としては最愛の人を徹底的に痛めつけられたとなれば憤りはあるもの。

 少なくともマーリンとしてはアルトリウス半殺しにした九十九(クソヤロウ)を許す気は毛頭なかった。


「エリスが日本で九十九(クソヤロウ)と交戦したみたいだけど、討ち取れなかったんだと。本当に使えない小娘だこと」


 ペッペ――と、不愉快そうに唾を吐きながら言うマーリン。

 その容姿は絶世の美女であるのだが、その所作の節々にガサツさと意地の悪さが見え隠れしている。

 アルトリウスはそんな彼女の姿を眺めて苦笑を浮かべているが、そんな姿を含めて彼女を愛していたりするのでアルトリウスも変人なのかもしれない。

 なお、エリスティマはアルトリウスに対して「女を見るめないわね!」と言い放ってたりする。その後、マーリンにこってり絞られるまでがワンセットだったが……。


「まあまあ、話を聞いた限りだとエリスも頑張ったみたいだよ。ルクシャ・ハーナって頂点捕食者とも一戦交えたって話だし、生きているだけ儲けものじゃないかな?」

「……確かにそうかもしれないね。だけど、やっぱり九十九(クソヤロウ)を仕留められなかったことだけは許されないね」

「僕としては借りを返す機会が残されたから、逆に良かった思ったけどね」


 相手が頂点捕食者であったとしても、やはりアルトリウスとしては一方的にやられたことによって自身のプライドを大きく傷つけられた。

 ましてや最愛の女性を悲しませる結果になってしまったのだから、猶更だ。

 だからこそ、アルトリウスは九十九との再戦を望んでいた。


「多くの頂点捕食者がどうしてか日本に集っている。きっと運命の起点があるのだろうね」


 アルトリウスは言い、その言葉にマーリンは頷く。


「ああ、それには私も同意だよ。恐らくこの物語の主人公も日本にいる誰かなのだろうね。まったく、アルを主人公に添えた方が絶対に面白いだろうに。執筆者は人選をミスっているとしか思えないね」

「まあまあ、脇役としてでも見せ場が貰えれば御の字だよ。少なくとも僕とマーリンが日本で行われる会談に参加することになったのも、何かしらの意図があるんじゃないかな?」

「そうだね。九十九(クソヤロウ)が現れるかはわからないけども、何かしらの事件は起こるだろうね。アメリカから銃士協会の暴君ガーネットと舎弟のルークが参加する以上、平穏には終わらないだろうしね」


 クスクスと笑いながらマーリンは言う。


「ま、それ以上の化物が日本にいるけどね」

「五行神家の一角、神木守家の当主であり地球の頂点捕食者である神木守玲香さんだね」

「ええ、生きる天災とはよく言ったものよ。そんな化物にも弟子がいるって話だから驚きよね」

「弟子と言えば……秋雨のことかな?」

「そうそう、エリスにアルと一緒に生き埋めにされた彼だね」


 アルトリウスは当時のことを思い出して、遠い目をする。

 あの事件のおかげもあり、秋雨との距離がグッと縮まったと思っている節もある。


「そんな彼もいろいろ大変だったみたいだし、日本についたら食事にでも誘ってみたら?」

「そうだね。そうすることにするよ」


 アルトリウスは頷き、手を組んで大きく背伸びをする。


「さて、そろそろ出発しようか」

「そうだね、早めに空港に到着しておきたいしね」


 二人はそんな言葉を交わし、出発する。

 目的地は日本だ。

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