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第45話

「おいおい、最近は無駄な呼び出しが多くねーか、姐さんよ」


 とあるビルの一室にテンガロンハットを被った男が荒々しい足取りで入室してくる。

 その口調は乱暴であるが、敵意はない。

 そんな男の登場に、デスクに座っていた女性は溜め息を吐きながら視線を向ける。


「別に無駄じゃないわよ、ルーク。それよりもまたフロントで問題を起こしたようね」


 デスクのPCモニターに映っている業務用チャットに、テンガロンハットを被った男が暴れている旨の報告が記されている。

 ルークはそれを見るや鼻で笑い飛ばす。


「受付のガールが入館申請だ何だの宣いやがるしよ。俺は呼ばれて来てやったって言ってんのに融通気かねぇ。埒が明かねぇから強引に押し通ったまでだぜ?」

「それを問題と言うのよ。表には表のルールがあるの。多少多めには見られるだろうけど、あんまりにも多いと逮捕されるわよ」

「はん? 秩序だった奴らにできるってんなら、やってみろってんだ。俺自身が言うのもなんだが、こちとら修羅場を潜り抜けた猛者だぜ? まさか俺がそこらの一般ピーポーにやられるとでも思ってんのか?」


 心底不満そうな様子を包み隠すことなくルークは吐き捨てるように言う。

 女性は「まさか――」と言いながら、首を横に振る。


「ルークがそこらの警察官に鎮圧されるような有象無象の雑魚じゃないことは私がよく知ってるわよ。ま、私もどちらかと言えば、アウトローでありたいと思っているけど。表舞台で動くにはそれなりの立場も必要なのよ」


 気怠そうな様子で女性は言う。

 そんな女性に、ルークは半ば呆れ気味に口を開く。


「俺には表舞台に上がる理由が理解できねぇ。今まで通り、敵をぶっ殺して、飲み屋で騒いでりゃいいじゃねぇか」

「日本での出来事がなければ、それでも良かったんだけどね」

「あん? ジャパンつーと、神木守玲香(クレイジーピーポー)がいる国じゃねぇか。そー言や、異世界云々から帰還した奴がいたな」

「そ、その他にもいろいろとあるのよ。他惑星、世界から頂点捕食者が集まってきている。つい最近だと日本に封印されていた頂点捕食者が復活したみたいよ」


 女性のその話を聞いたルークは一瞬目を丸くしたが、直ぐに獰猛な表情に切り替える。


「へえ? そいつは面白れぇことになってんな」

「戦場で暴れたいルークにとっては面白い話でしょ? で、そんな日本で私たち銃士協会(ガンマンズ)のような組織を各国から集めた会談が行われることが決定したわ」

「ほう? つーことは俺に姐さんの護衛をやれってことかよ? 冗談きついぜ。俺の護衛なんかなくても問題ねぇだろ?」


 女性の実力をルークは知っている。

 アメリカ国内の裏社会においてルークの名はそれなりに知れ渡っている。

 敵対者には慈悲すら与えず。逆に護衛対象者は掠り傷すら付けることなく確実に守護する。

 故に、敵対者からは死神、護衛された者からは守護者(シュヴァリエ)と揶揄されていた。

 しかし、ルークが姐さんと慕う女性――ガーネット・ジェーンの実力はそんなルークをも上回っている。


「ま、確かに護衛は必要ないわ。だけど、集まる奴らも錚々たる顔ぶれ。イギリスの魔女会から聖剣使いと魔術師に、フランスの十二勇士からは最優の騎士。開催国の日本は五行神家の当主と頂点捕食者。極めつけは異世界ゾティークの王家と勇者一行。となれば、私が相応の実力者を連れて行くのは理に適っていると思わない?」

「ほーん。そいつは面白そうじゃねぇか?」

「ええ、実に面白そうでしょ? それにここまでの人物が集まるのだから、それなりの(パーティー)が起こるでしょうね」


 ガーネットは口元を上げながら告げる。

 それを見たルークは「はん!」と鼻で笑い、歯を見せながら笑う。


「いいぜ、姐さん。俺もジャパンに行ってやるぜ。最近は大した敵もいねぇで飽き飽きしていたところでもあったしよ。ま、渡りに船って奴だ」

「ええ。ついでに私たちの実力を世に知らしめる時よ。古臭い魔法に目にものを言わせてやりましょう」

「上等! 楽しみになってきたぜ」


 テンガロンハットを深く被りながら、ルークは騒乱の舞台となる日本に意識を向けるのだった。

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