第44話
「ここが奏多さんの住む世界なのですね! リファ、ノヴァクのお二人にはお伺いしておりましたが、ゾティークとは全く違いますね!」
警察官による厳戒態勢の中、煌びやかなドレスを身に纏った美少女が少しだけテンション高めに口を開く。
遠くからテレビカメラを向けられているのだが、テレビを知らない当の本人は気にすらしていない。
そんな言葉を向けられている奏多は周囲に気を張りつつも、美少女――ミルディール・フォン・オルディーネの言葉に頷いていた。
「高層ビルに、車、スマートフォン――上げればキリがないけど、ミルディにとっては真新しいよな」
「はい。アルデネイラ討伐からいろいろと多忙ではありましたが、ようやくひと段落できました。そんな最中で会談の機会を設けられたことには感謝していますよ」
「段取りを組んだのはリファとノヴァクだ。感謝するなら二人に頼むよ」
「わかっています。それにしても奏多の世界にも魔法は存在していたのですね」
その言葉に奏多は渋い表情を浮かべる。
異世界ゾティークに召喚された時、奏多たちは自分たちの世界に魔法があることを知らなかった。
だからこそ、ゾティークに召喚され、目の前で魔法を見た時は皆の心が躍ったのだ。
それから数多くの苦難を乗り越え、アルデネイラの討伐を成し遂げ、元の世界への帰還を果たした矢先――まさか、自分たちの世界が異世界以上のファンタジーだとは、少なくとも奏多は思いもしていなかった。
それも何故か召喚されなかったクラスメイトの玉水秋雨が、相当な実力者だったのだから驚いたものだ。
「厳密には魔法とは異なる力みたいだぞ。五行神家――恐らく五行思想って奴がベースとなっている力なんだろうけど、詳細まではわからないな。あとゾティークとは異なる体系の魔法もあったみたいだし、それ以外の力もあるよ」
今まで知らなかった事実を知り、奏多としても混乱の極みではあった。
幸い、秋雨をはじめ、玲香などの五行神家とも良好な関係を築けつつあることで、今回の会談にミルディールが参加することができたのだ。
なお、この会談は世界的なイベントとして注目されている。
五行神家が表舞台に現れたことで、各国で秘密裏に活動していた組織が名を上げ始めたのだ。
エリスティマが所属しているイギリスの魔女会。
現在進行形でアメリカにて一世を風靡している銃士協会。
フランスにて人気が高まりつつある十二勇士。
その他、これら巨大勢力の他にも表舞台に現れる組織も多々ある。
そんな各異能力者集団の代表と各国の首脳陣が一堂に集う会談が、日本にて行われることが決定したのだ。
「まあ、交渉の方法は兎も角、神木守さんには感謝だよ」
「確か、奏多の世界にいる頂点捕食者さんでしたか」
「ああ……一度、その力をこの目で見たけど――アルデネイラを軽く凌駕していたよ」
それはアンネリーゼ戦の時に見た姿。
その圧倒的な実力に、奏多は度肝を抜かれた。
同時に自身の実力が遠く及んでいないことを自覚した。
「それほどなのですか」
「そうなんだ。俺の元クラスメイト……ほら、一人だけ召喚されていない奴がいるって話を覚えているか?」
「はい。その彼が五行神家当主の一人なのですよね」
奏多は頷く。
「五行神家の一角である神水守の当主。アイツは俺よりも強い。何よりもずっと重いものを抱えているんだ。知らないところで何かが起こっている。俺は自分の生まれた世界に訪れる脅威を知らなかったままではいたくないんだ」
「そうですね。私も知らないことがありました。ルクシャ・ハーナと呼ばれる頂点捕食者がゾティーク由来の存在とは知りませんでしたから」
ミルディールがルクシャ・ハーナの話を受けてから、各方面へ調査を進めていた。
そこでわかったことは多々あり、その情報を手に今回の会談へ臨もうとしているのだった。
「神木守さんの話だと、どうやら一癖も二癖もある人たちが集うらしい。曰く、国の首脳陣はオマケみたいなものと思って良いらしい」
玲香の言っていた言葉を思い出しながら、奏多は溜め息交じりに言う。
そうこうしている間に日本政府により準備されていた送迎者に乗り込むことができた。
「会談はもう少し先ですから、その間は観光でも行いましょう」
「……一応、ゾティークの代表なんだから、ある程度は節度を持ってくれ」
「大丈夫です。何かあっても奏多が守ってくれますよね?」
ミルディールの言葉に、奏多は困ったように頷くのだった。




