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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第二章
42/66

第42話

 相変わらず閑古鳥が鳴いている骨董品屋のレジカウンターで玲香が頬杖を突きながら、店舗の掃除をしている秋雨へ淡々と辛辣な言葉を投げかける。

 それは阿蘇山のことに対する評価であった。


「……九十九に、アンネリーゼ。更にルクシャ・ハーナ。寧ろ、よく頑張った方だと思うんですが?」

「別にアンネリーゼと戦ったワケじゃないんでしょ? だったら、強ち間違いない評価じゃないかしら?」


 辛口の評価に秋雨は「うーん」と唸るようにモップを動かす。

 良し悪しは兎も角、自身を基準に評価を下す玲香。

 歯に衣着せぬ物言いと言えば聞こえは良いが、求められている水準が高過ぎるのは少々苦ではある。


「目下の目標は限定解除なしで相伝術式を使えるようになることね」

「それは、そうですね……」


 痛いところを突かれ、秋雨は顔を顰める。


「さて、世間では阿蘇山に火柱が上がっただの、山頂が凍りついただの、一部が真っ赤に染まっただの結構な話題になっているわ。ま、国のお偉いさんからも私宛に苦情が入ったけど全力無視を決め込んでやったわ」


 清々しいまでの笑顔でそういう玲香に、秋雨は何とも言い難い表情を浮かべざるを得ない。

 事の中心にいたこともあり、関係ないとは言えない。

 国のお偉いさんもいろいろ思うことがあるだろうが、玲香が相手では権力も意味をなさないのだからやり辛いだろう。

 胃に穴が開かないことを願うばかりだ――と、秋雨は心の中で思う。


「個人的に気になるのは九十九ってヤツね」


 玲香はそう言いながら続ける。


「随分と意味深なことをペラペラ喋っていたそうじゃないの。それに桜目律だっけ? 彼にご執心みたいま、今回は及第点ってところかしらね」


 相変わらず閑古鳥が鳴いている骨董品屋のレジカウンターで玲香が頬杖を突きながら、店舗の掃除をしている秋雨へそう告げた。

 それは阿蘇山のことに対する評価であった。


「……九十九に、アンネリーゼ。更にルクシャ・ハーナと来たんですよ。寧ろ、よく頑張った方だと思うんですが?」

「別にアンネリーゼと戦ったワケじゃないんでしょ? だったら、強ち間違いない評価じゃないかしら?」


 辛口の評価に秋雨は「うーん」と唸るようにモップを動かす。

 良し悪しは兎も角、自身を基準に評価を下す玲香。

 歯に衣着せぬ物言いと言えば聞こえは良いが、求められている水準が高過ぎるのは少々苦ではある。


「目下の目標は限定解除なしで相伝術式を使えるようになることね」

「それは、そうですね……」


 痛いところを突かれ、秋雨は顔を顰める。


「さて、世間では阿蘇山に火柱が上がっただの、山頂が凍りついただの、一部が真っ赤に染まっただの結構な話題になっているわ。ま、国のお偉いさんからも私宛に苦情が入ったけど全力無視を決め込んでやったわ」


 清々しいまでの笑顔でそういう玲香に、秋雨は何とも言い難い表情を浮かべざるを得ない。

 事の中心にいたこともあり、関係ないとは言えない。

 国のお偉いさんもいろいろ思うことがあるだろうが、玲香が相手では権力も意味をなさないのだからやり辛いだろう。

 胃に穴が開かないことを願うばかりだ――と、秋雨は心の中で思う。


「個人的に気になるのは九十九ってヤツね」


 玲香はそう言いながら続ける。


「意味深なことをペラペラ喋っていたそうじゃないの。それと桜目律にご執心だったようね。あとは桜目雪のことをはじまりの魔女(シネンシス)って呼んでたんでしょ? まー、随分と桜目姉弟について詳しいわね」


 怖い怖い――とお道化ながら玲香は言う。


「……もしかして玲香さんは頂点捕食者の権能で何かを知っているんじゃないんですか?」


 秋雨が問うと、玲香はニヒルな笑みを浮かべる。


「さて、どうかしらね。ただ、私が知っていたところで話をすることはないわよ」


 そんな玲香の態度に、秋雨はジーっと冷めた目線を向ける。


「はいはい、そんな視線を向けても無駄よ。ま、言ってしまうと――今は知る必要がないってことね」

「…………で、実際のところはどうなんです?」

「そうね――そっちの方が面白くなりそうだからね」

「今始まったことじゃないですけど、本当に勘弁してください」


 秘密主義者にして必要以上に語らない玲香に対して、秋雨はガックリと項垂れる。


「ま、時が来たら嫌でも知ることになるわ。だけど、九十九に関しては秋雨じゃなくて、桜目律が解決するべき問題よ」

「まあ、あの執着を見ればそうだとは思いますけど……」

「それに九十九を殺せるのは桜目律だけよ。あれは私でも殺せないわ」


 玲香の言葉に秋雨は目を丸くする。

 天上天下唯我独尊を突き進む地球の頂点捕食者である玲香がそう断言したのだ。


「なーに意外そうな顔をしているのかしら? 九十九(アレ)は本来この世界にはいない存在なの。何の因果化は知らないけど、桜目律は九十九と対峙する運命なのよ」


 そうは言われても納得できない秋雨。

 しかし、それ以上のことを玲香の口から語ることはなかった。

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