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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第二章
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第37話

 秋雨と鈴音が即座に動き始める。

 同時にルクシャ・ハーナも翼を羽ばたかせ、秋雨へと迫る。

 秋雨は氷刃刀で、ルクシャ・ハーナの爪をギャリギャリという削れる不共和を音を響かせながら、受け流す。


「水? ……貴様、神水守家の人間か!?」

「正確には水じゃなくて、氷だけどな!」


 秋雨の顔を見るやいなや、ルクシャ・ハーナの表情がより一層の憤怒に染まる。

 氷刃刀で隙を見せぬように数度振り牽制し、秋雨は後方へ跳ぶ。

 その間に鈴音が踏み込んで行く。


 金之業・陰型――黒鉄之腕。


 両腕を黒鉄に変質させ、ルクシャ・ハーナへラッシュを仕掛けていく。

 一、二、三――と、左右の拳を鈴音は打ち込む。

 しかし、その全てをルクシャ・ハーナも拳で防ぐ。


「小賢しい!」


 ルクシャ・ハーナが翼を使い、風を巻き起こす。

 堪らず鈴音は吹き飛ばさるが、宙で体勢を整え着地した。


「ブッ飛べ!」


 エリスティマが魔力砲を放つ。

 だが、それを片手で受け止めるルクシャ・ハーナ。


「魔法使いか。それにしては我の知る魔法体系とは随分と異なるな」


 魔力砲を受け止めた掌をマジマジと見つめながら、ルクシャ・ハーナは言う。


「五行神家の塵芥。何よりも神水守の小僧よ。貴様だけは我が手で葬り去ってやろう!」

「……俺の先祖が何をしたかは知らないが、その鬱憤を俺にぶつけてくるのは筋違いじゃないか。封印云々についても、そもそもお前が侵略しなければ良かった話だろ?」


 過剰なヘイトを向けられた秋雨は氷刃刀を構えた状態で言う。

 と、ルクシャ・ハーナは目つき鋭くする。


「侵略? 戯け! 我によって治められることは救済に他ならない。ゾティーク、そして、この世界訪れるであろう宇宙より来たる脅威に対抗できる存在は頂点捕食者である我だけであろう!」

「――――待って。貴方は何を言っているの?」


 鈴音が怪訝そうな表情を浮かべながら口を開いた。

 それは秋雨もエリスティマも同様だ。

 ルクシャ・ハーナは侵略を否定しなかった。

 だが、問題はそこではない。


「宇宙より来たる脅威とは何?」


 鈴音の言葉を聞いたルクシャ・ハーナは一瞬目を丸くした。

 そして、何かを察したのか声を張り上げて笑った。


「クハハハ! 何だ、五行神家よ。貴様たちは何も知らないのか! 実に滑稽だ。そうなればこの世界の頂点捕食者は何をしているのか!」


 片手で顔を覆いながら、笑い続けるルクシャ・ハーナ。


「ああ、復活早々に五行神家を目にして不愉快ではあったが、今は実に愉快だ。なるほど、貴様たちは知らぬが故に我を封印したと言うわけか。あの時の頂点捕食者もそれを知らなかった――いや、役割を放棄した故に情報を与えられなかったか!」

「おい、本当に何を言っているんだ?」

「神水守の小僧。この世界――いや、地球の頂点捕食者が誰かを知っているか?」


 ルクシャ・ハーナの問い。

 知っているも何も、地球の頂点捕食者は玲香だ。

 秋雨は頷く。


「なるほど。元来、頂点捕食者とは人類の生命体の強度を上げることが役割として存在している。我は手の届く範囲を統治し、そのすべての人類と共に来たる脅威を退けようとしただけに過ぎない」


 ルクシャ・ハーナが権能を行使した。

 周囲に翼は無いがトカゲのような双眸を有する人間――レプティリアンが現れる。

 それはこれまで異形として現れていた下僕たちの真の姿だ。


「我がいなくなったゾティークも堕落しているであろうな。我がレプティリアンの血は薄れ、いや……或いは根絶やしにされた可能性もあるか」


 何かを考えながら、ルクシャ・ハーナは言う。


「哀れだな、五行神家よ。役割を果たさぬ頂点捕食者によって、この地球(ほし)は存続の危機を自ら招いたのだ」


 嘲笑するようにルクシャ・ハーナは告げる。

 そして、合点がいったように続けた。


「ああ、それ故か。あの女を含め、なぜ我以外の頂点捕食者がいるのかと思ったが――」


 ルクシャ・ハーナの言うあの女とは、アンネリーゼのこと。

 何も知らない子どもを見るように、ルクシャ・ハーナは秋雨たちを見る。


「――外部の頂点捕食者が出向いて、来たる脅威に対抗するため、この地球の人類の生命体の強度を上げようとしているのか」


 

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