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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第二章
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第31話

「ようやく来たね、秋雨と魔女会の娘」


 秋雨とエリスティマが阿蘇駅の改札を抜けると、そんな言葉を投げ掛けられた。

 二人が声の方へ視線を向けると、そこには二人の女性と一人の少年の三人が立っていた。


「ご無沙汰しています、鈴音さん」

「いいよ。秋雨も大変だっただろうからね? それと魔女会の娘もご苦労だったね。私は五行神家の神金守当主、神金守鈴音(みかねもりすずね)だよ。よろしくね」

「はじめまして。魔女会所属の魔法使い、エリスティマ・クルセイダーよ」


 エリスティマと鈴音が互いに握手を交わす中、秋雨が残りの二人が気になり口を開く。


「鈴音さん、お二人は?」

「ああ、紹介がまだだったね。彼女は桜目雪(さくらめゆき)。色格は青。そして、彼が彼女の弟の桜目律(さくらめおと)。色格は赤だよ」


 青と赤の術者と言うことは、それなりの実力を有していることの証明。

 秋雨は手を差し出し、自己評価をする。


「五行神家の神水守家当主、神水守秋雨だ。まあ、当主と言っても俺一人しかいないなんちゃってだけどな。よろしく頼む」

「桜目雪です。よろしくね」

「桜目律だ。よろしく」


 それぞれ自己紹介を済ませ、近場のレンタカー店まで歩きながら現在の状況について情報共有を行う。


「とは言え、封印されている頂点捕食者……ルクシャ・ハーナだっけ? そいつの下僕の権限件数が多い以外は特に情報はないんだよね。アンネリーゼとか、他の頂点捕食者については全くかな。ちなみにこのあたりの下僕については雪と律が対応しているよ」


 鈴音はそう言いながら、雪と律へと視線を向ける。


「私たちも特に話す情報はありませんね」

「ああ、俺が持っているものも姉さんと変わらないな。だが――」


 律が何やら考えるような素振りを見せる。

 そして、エリスティマへと一つ問う。


「その九十九って、どんな奴なんだ?」

「私をゴリラって宣うクソ仮面だけど?」


 エリスティマの情報だけだと、強いフルフェイスの仮面をした変な男以外の印象がない。

 恐らく律が聞きたい内容はそれではないのだろうが、聞く相手が悪かった。


「それはどうでもいいんだ」

「いや、良くないわよ!?」


 律の容赦無い言葉に、エリスティマが突っ込んでいく。

 と、雪が口を開く。


「律、何が気になるの?」

「いや、変なことを言っている自覚はあるんだけど……その九十九って奴に対して、妙な親近感を覚えたんだ」


 律は何とも言い難い妙な表情を浮かべながら言う。

 ――親近感を覚える。

 それも話を聞いただけの、会ったこともない存在に対してだ。

 確かにそれは変なことを言っていると思われても仕方ない。


「親近感ね。律、その感覚は強ち間違いでもないはずだよ。きっと何かしら意味があるはずだから、覚えておくといいね」


 鈴音はそう言って微笑む。

 その言葉には、秋雨も同じ意見だった。

 第六感的感覚。それは戦闘経験以上に重要だと言っても過言ではない。

 少なくとも秋雨はそう思っているし、実際にその感覚に助けられたこともあった。


「突出した感覚は未来視にも近い力になるわ。それこそ突き詰めればマーリンにも手が届くかもしれないわね」

「あー、マーリンさんって未来視持ちだったか?」

「本人は目が乾くし、疲れるしで使いたくはないって言ってるけど」


 まったく、未来視を使ってれば九十九についても――と、ブツブツ文句を唱え始めたエリスティマ。

 秋雨は乾いた笑い声を溢しながら、律へと視線を向け、口を開く。


「その感覚はいざという時に役に立つはずだ。ま、頭の片隅に置いておく程度で良いんじゃないか?」

「ああ、そうしておく」


 秋雨と律のやり取りを見ていた雪が何やら嬉しそうな表情を浮かべている。


「涼音ちゃんからは二人が同い年って聞いてるから、姉としては仲良くできているようで何よりです」

「……姉さん、確かに俺は友達が少ないけど、コミュ障じゃないんだぞ」

「うんうん、わかってます」

「本当かよ?」


 この姉弟は随分と仲が良い様子だ。


「ここね。ちゃっちゃと車借りてくるから待っててね」


 いつの間にか目的のレンタカー店に到着したようだった。

 浮足立った足取りでレンタカー店へと向かっていく鈴音を不思議に思ったのか、エリスティマが秋雨に声をかける。


「何であんなに機嫌よさそうなのよ?」

「……鈴音さんは車の運転が好きなんだよ」

「へぇ、意外ね。趣味がドライブってヤツなんだ」

「あー、まあ……そんな感じだな」

「? 何か歯切れが悪いわね」


 言うかどうか迷ったが秋雨は口を噤むことにした。

 鈴音の趣味は確かにドライブではある。

 しかし、ドライブはドライブでも峠攻め――所謂、走り屋というヤツである。

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