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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第二章
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第30話

 骨董品屋に並べられている椅子を適当に引っ張り出して、レジカウンターの前に皆が腰を下ろす。


「さて、わざわざ勇者君たちが足を運んできたのだから聞きたいこともあるのでしょうけど、まずは魔女会からの話を聞かせてもらいましょうか?」


 玲香はそう言いながら、エリスティマへと視線を向ける。

 ゴリラと言われ不機嫌さを隠す気もないエリスティマであったが、公私を分けるくらいの理性はあった。


「マーリンから話はあったと思うけど、九十九という頂点捕食所を追って来たわ。主となる理由はマーリンがアルトリウスを半殺しにされてキレたからだけどね」


 ゲンナリとしながらエリスティマは言う。

 その話を聞いていた玲香は顎に手を当てながら、何やら考えを巡らせている。


「妙に頂点捕食者が集まるわね。アンネリーゼ、アレクシス、九十九、それと封印されているルクシャ・ハーナ――どういうことかしら?」

「ルクシャ・ハーナはともかく、何らかの意図があるのは間違いないと思いますよ」

「秋雨の言う通り、そう考える方が妥当かしらね。まあ、今は五行神家としても動いているところよ。青と赤の術者には積極的に動かしているしね」


 玲香は言う。


「で、魔女会からは他に何かあるかしら?」

「それ以外だと……ああ、一度会議でもやってみないかと言っていたわね」


 思い出した――と言わんばかりにエリスティマは告げる。


「会議?」

「ええ、私たち魔女会と五行神家の他にアメリカの『銃士協会(ガンマンズ)』、フランスの『十二勇士(パラディン)』にも声をかけているって話」

「ふーん? 差し詰め、国際会議ってところかしら?」


 玲香は興味あり気なようすに呟く。

 一方、奏多たちは聞き覚えの無い組織名に首を傾げている。


「なあ、玉水? 銃士協会に、十二勇士って何だ?」


 奏多が問う。


「簡単に言ってしまうと五行神家や魔女会と同じ、類の組織だよ。銃士協会は銃に魔力を装填し、発射する魔法を得意とする組織。で、十二勇士は――」


 秋雨の言葉を続けるようにエリスティマが続ける。


「フランスの聖騎士団と言ったところね。シャルルマーニュ伝説って知っているかしら? まあ、知らなくても良いんだけど、その意思を継ぐ組織ってヤツよ。気になるなら調べてみたらどう?」


 エリスティマは奏多たちへとそう言い放つ。

 どうやら全てを説明する気はないようだ。


「……地球以外の頂点捕食者が集まっている以上、一度情報などのすり合わせはしても良い気がするわね。それぞれの当主には私から話をしておきましょう」

「そ、頼んだわ」


 と、奏多が手を上げる。


「その会議に俺たちと……異世界の王族を参加させることはできないだろうか?」


 その言葉に秋雨は眉を顰める

 百歩譲って奏多たちが参加すると言い出すのはわかる。しかし、リファたちの異世界の王族を参加させるとはどういうことか?


「こちらの世界に封印されているルクシャ・ハーナが元は私たちの世界の存在であるみたいでしたので、帰省の際にその話をミルディール様にお話をしたところ一度こちらへ調査をしたいと申し出がありました」


 リファはそう言って、秋雨の方へ視線を向ける。


「……折角なら詳しそうな奴らが集まる舞台でってところか?」


 秋雨が奏多へ顔を向ける。すると、ゆっくりと頷く。


「どうしますか、玲香さん?」

「別に良いんじゃない? 情報はあるだけで武器になるから。ま、そのあたりのすり合わせも任せなさい。橋渡しはアナタで良いのかしら?」


 そう言ってリファの方へ視線を向ける玲香。


「彼女か自分にお願いします。一応、自分は騎士団所属ですので」

「わかったわ。あとで連絡先を交換しましょう。ああ――それと秋雨には任務の通達よ」

「……え?」


 唐突に告げられ、秋雨は変な声を上げた。


「今、この世界に訪れている頂点捕食者たちが関与しているかは知らないけど、ルクシャ・ハーナの下僕の顕現が増えている地域があるのよ」


 そう言って玲香は一枚のA4用紙を差し出す。

 秋雨はそれを受け取り、目を通す。


「…………阿蘇?」

「ええ、どうにもきな臭い感じがするよね。ちょうど魔女会のゴリラもいることだし、一緒に解決してきなさい」


 玲香の言葉にエリスティマが再び噛みつきに行っている姿を横目に、秋雨は「わかりました」と答える。


「その依頼に俺たちも――」


 何かを言おうとする奏多の言葉を秋雨が遮る。


「いや、それは必要ない。今回はエリスティマも同行するし、どうせ他の当主も派遣されるんでしょう?」


 エリスティマを弄っている玲香へ秋雨は問う。


「ええ、今回は神金守家の当主、涼音ちゃんが現地入りするわ」

「涼音さんですか。それなら大丈夫ですね。そんなわけで庄司たちはいつも通りの日常を過ごしてくれ」


 秋雨の言葉に、奏多が何か言いたそうにしていたが言葉を飲み込んで口を開く。


「大丈夫なのか?」

「心配無用だよ。そこまで弱くなったつもりはない」

「そうか。じゃ、頑張れよ」


 奏多はそう言ってニッと笑う。

 それに秋雨は少しの沈黙の後に「ああ」と短く答えた。


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