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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第二章
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第29話

「…………何で庄司たちも着いてくるんだよ?」


 とある日の学校からの帰り道。

 いつもの流れで玲香が営んでいる骨董品屋へ向かっている秋雨の後ろを、いつもの異世界メンバーズの奏多たちが堂々と後を追うように歩いていた。

 隠れる気は微塵も感じられない。

 ちなみにエリスティマに関しては玲香に用事があるということもあり、秋雨の隣を歩いている。


「何でって、俺たちも神木守さんに話を聞きたいんだ」


 奏多はハッキリとそう言い切った。

 アンネリーゼとの戦いの後から距離感が近くなり、少しばかりゲンナリとしている秋雨ではあったが、変に突き放すとそれはそれで面倒なことになりそうで放置していた。

 その結果がコレである。


「話を聞きたいって、別に話すことはないと思うんだが?」

「玉水……この際だから諦めて全部開示しなさい」


 志乃が秋雨の肩を掴んで言う。


「ま、僕たちも手助けできるところもあるだろうし、協力するべきじゃないかな?」

「孝也さんの言う通りです。私たちも力をお貸しします!」

「自分も騎士として力を貸そう」


 孝也、リファ、ノヴァクがそれぞれ告げる。

 秋雨としては困るところであり、変に首を突っ込まれて死なれでもしたら気分も悪くなる。

 とは言え、彼らが無暗に突っ込むような無謀さを発揮するわけでもないことは、秋雨も十分理解している。


「ふーん、随分と仲が良いのね」

「……別に良くないと思うんだが」


 エリスティマは生暖かい眼差しで秋雨を見ている。


「はぁ、この際だから別に着いて来ても良いけど、玲香さんが話をするかは知らないからな」


 そんなことを吐きながら全員で骨董品屋へと向かって歩く。

 店の前まで来た時、店内から何やら揉めている声が聞こえてくる。

 それに秋雨は心底ゲンナリした様子で深い溜め息を吐いた。


「どうしたんだ?」


 奏多が問う。


「いや、最近の日常なだけだよ。まあ、すぐ終わるから中は入ってしまおう」


 秋雨に促され、骨董品屋へと足を踏み入れる一同。

 そこでは玲香と男がレジカウンター越しに何やら揉めている。


「――本当に話の通じない馬鹿ね。アンタたちに話すことは何もないって言っているでしょう」

「いやいや、我々は国民の知る権利のために取材をしているんですよ。その力の源を公開することは世の為ためでしょう」


 レジカウンターで頬杖をついて心底面倒臭そうに話をしている玲香。

 男の方は何処かの記者なのだろう。

 知る権利なんてしたことじゃないんが――と秋雨は思う。


「はあ、さっさと出て行きなさい。あんまりしつこいと実力行使で叩き出しましょうか?」

「暴力ですか? その時はありのままの事実を世に記事として出しますよ?」


 心底気持ちの悪いニヤニヤと笑みを浮かべながら、男は言う。

 きっと脅しのつもりだったのだろう。

 しかし、相手が悪かった。

 男の目の前にいるのは人類最強の存在である。


「どうぞ」

「はい?」


 やめてください――とでも言われると予想していたのだろうか。

 玲香の言葉に、男は呆気にとられた間抜け面を浮かべる。


「ど、どうぞって……悪評が広がっても良いんですか⁉」

「ええ、どうぞご勝手に。その程度の脅しで何とかなるとでも思っていたのかしら?」


 馬鹿がいるなぁ――と言わんばかりの表情で玲香は男を見る。


「ふん、後悔しても知りませんよ!」

「ええ、やりたければどうぞ。まあ、仮にその時は全力で潰しちゃうかもだけど」

「これは問題ですよ!」

「あのね、アンタみたいなクズがいることは重々承知しているのよ。強請って金でも巻き上げようとでも思ったのかしら?」


 玲香はゆっくりと立ち上がる。


「――舐めるなよ、人間。立場を利用して好き勝手出来るとでも思ったのかは知らないけど、五行神家にそれは通用しない。特に私には猶更通用しないわ」


 男を射殺すように睨む玲香。

 男の足がガクガクと震え出す。

 それを眺めながら秋雨は「ガチ切れだ」としみじみと思いながら遠い目をしていた。


「やれるもんなら、やってみさない。私としては法律なんて知ったことじゃないから。サクッと殺すから」

「きょ、脅迫です、か?」

「いや、先に脅迫染みたことをしたのはアンタでしょう? 俺は良いけどお前はダメだとでも言う気かしら? はあ、面倒ね」


 そう言って玲香がレジカウンターをヒョイと飛び越える。

 そして――、


「お客様の御帰りです。ありがとうございました!」


 男を思いっきり蹴り飛ばす玲香。

 飛んでくる男がドアにぶつからないように、秋雨は扉を開け放つ。

 男が飛んで行ったことを確認すると、そのまま扉を閉めた。


「…………えぇ?」


 誰の声だったのか。

 そんな何とも言えない空気が店内に広がった。


「今日は何人目ですか?」

「五人目ね。全員蹴り飛ばしてやったわ」


 秋雨の言葉に、玲香は清々しい笑顔で答える。


「さて、そこのゴリラは兎も角、いらっしゃい勇者の皆さん」


 先ほどとは打って変わった玲香の雰囲気に、奏多たちは呆気にとられる。

 と、エリスティマが顔を真っ赤にして叫んだ。


「誰が、ゴリラだぁ⁉」

「アンタよ。他に誰がいるのよ」


 心底楽しそうに玲香は言うのだった。

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