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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第二章
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第26話

「やっと来たわね。さあ、今日こそはきりきりと吐いてもらうわよ」


 放課後。

 その教室を秋雨が足を踏み入れるや否や、志乃が腕を組んで言い放った。

 ここは異世界帰還組全員が所属している二年生の特別クラス。悪く言えば留年した秋雨の元クラスメイトが所属しているクラスである。

 大した交流を持った覚えがないので、久々に見た顔もあったが秋雨としては懐かしさも何もない。


「ところで玉水? その後ろの娘は噂の転校生よね?」


 秋雨の後ろには何故かついて来たエリスティマの姿がある。


「ええ、私が噂の転校生! エリスティマ・クルセイダーよ」

「こいつのことは気にしないでくれ。面倒臭いから」

「シューウ⁉」


 ゲンナリとしながら秋雨は言う。


「気にするでしょ。これから話すことは――」

「ああ、そっちの心配だったか。なら、なおのこと気にする必要ないぞ。こいつ、関係者だ」


 秋雨の言葉に志乃が「はぁ⁉」と声を上げる。

 と、静観していた女教師が口を開いた。


「一先ず、話を進めませんか?」

「東雲先生、お久しぶりですね」

「そうですね。まあ、先生としては玉水君の正体に驚きましたけど」


 その言葉に、異世界帰還者全員が頷く。

 今回、秋雨がこのクラスに足を運んだのは、異世界組に五行神家の持っている情報を共有する為だ。

 玲香を筆頭に他の家から了承を得ている。


「玉水、早速始めよう」


 奏多が開始を促すように口を開く。

 それに秋雨は頷き、教団に立った。ちなみに隣にはエリスティマが立っている。


「……はあ、まあ良いか。それじゃ、何について聞きたいんだ?」


 秋雨は問う。

 奏多には事前に質問を考えるように伝えていた。

 当然、そのことについては異世界帰還者全員に共有されており、取りまとめているはずだ。


「ああ――まず、頂点捕食者(エルダーワン)って何なんだ?」


 最初の問い。

 それは奏多たちが何度も耳にした頂点捕食者について。

 今、奏多が認識しているものは、『人間離れした存在』という一言に尽きる。

 アンネリーゼと対峙し、玲香の実力を見た上で、その存在が何であるかを知りたいということなのだろう。


「頂点捕食者。その世界、或いは惑星で繁栄した人類において最も優れた存在。そして、敵性存在に対しての免疫であり、最終兵器ってヤツね」


 何故かエリスティマが回答した。

 その行動に秋雨はジーっと冷めた視線を向ける。


「えーっと……クルセイダーさんは知っているんだな?」

「勇者君だっけ? アタシのことは気軽にエリスって呼びなさい。ま、知っているって言うよりも、アタシたちのような関係者は知っていて当たり前のことよ」


 奏多の疑問に、エリスティマは胸を張って答える。


「今、この地球の頂点捕食者は神木守玲香。そして、この地球上で最強の存在ね。まあ、勇者君は実際にその実力を見ているだろうから、わかるでしょう?」


 奏多は頷く。

 と、東雲先生こと美弥が口を開く。


「あの、クルセイダーさんが関係者ということはわかるのですけど、玉水君……五行神家の関係者なのでしょうか?」

「いや、このポンコツはイギリスの魔法使い集団の魔女会(ウィッチクラフト)に所属している魔女だ」

「ちょ、ポンコツじゃないから!」

「はいはい。ちなみに他にも世界中にそういった団体が存在している。友好的なところもあれば、敵対的なところもある――っと、話題がズレてるな」


 秋雨は「んん!」と喉を鳴らし、軌道修正を行う。


「頂点捕食者についての概要はクルセイダーが言った通りだ。ま、庄司たちが知りたいのはそこではなくルクシャ・ハーナと呼ばれた封印されている頂点捕食者のことだろう?」

「はい。小倉駅での事件の首謀者である男の言葉から察するに、それは私たちの世界ゾティークに関係がある存在ですよね?」


 小倉駅の事件のことを思い返しながらリファが問う。


「夏休み期間中ですが、ノヴァクと共に向こうに戻ったのですが……」

「自分がルクシャ・ハーナに関係しているだろう集団に心当たりがあってな。その集団について再調査したのだが――ものの見事に皆殺しにされていた」


 この件については、今初めて口にしたのだろう。

 場に「マジか」という空気が立ち込める。


「なるほど……あくまで奴らはルクシャ・ハーナの権能が利用できるかを調べていたって感じなのか」


 顎に手を置き、秋雨は呟く。


「まあ、良い。とりあえずルクシャ・ハーナについてだが、そいつはこの地球に封印された異世界の頂点捕食者だ。異世界から侵攻してきたところを、俺の先祖と他の五行神家が協力し、封印を施した存在だよ」

「その封印が解かれそうなのですか?」

「現状は問題ないな、メルクストーリアさん。封印どうこうよりは、時折顕現する下僕の方が問題ではある」


 秋雨は心底面倒臭そうに言う。

 隣に立っていたエリスティマも露骨に顔を顰めた。


「あー、あの気持ち悪いクリーチャーね。ほんと、趣味悪いわよね。その癖、厄介だし」

「小倉駅の際に男が召喚したアレですか?」


 リファが問う。

 が、秋雨は首を横に振り、答える。


「アレは下僕の劣化品だな。権能を魔法レベルにダウングレードして再現しただけの模造だ。直接、顕現した下僕はアレよりも遥かに強い」

「だけど、アレを一瞬で切り刻んだ玉水なら余裕なんじゃないの?」

「そう上手くいけば苦労しないんだよ、神楽坂。アンネリーゼと比べたら弱いが、普通に相手にするなら戦車を持ち出してワンチャンあるかないかくらいだぞ」


 秋雨の言葉にクラスの殆どが戦慄する。

 が、アンネリーゼと対峙した三人については「彼女より弱いなら……」と何処か達観した様子である。


「五行神家の役割としては、ルクシャ・ハーナの封印の監視と顕現した下僕を討伐することが主目的となっているな。さて、頂点捕食者についてはこのくらいにしよう。次は何が聞きたい?」

 

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