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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第二章
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第25話

 嬉しくねぇよ――秋雨は内心でそう叫びながら、額に手を当て深い溜め息を吐いた。

 そして、率直に疑問をぶつけることにする。


「この際、クルセイダーが日本に来ているのは置いておく。だけど、なんでその制服を着ているんだよ?」


 待ってました、と言わんばかりの表情をエリスティマは浮かべる。

 口元は『ω』のように、目はキラキラと輝き、興奮気味にフンスと鼻を鳴らしている。


「愚問ね、シューウ! この私がこのハイスクールに転校して来たからに決まっているじゃない! ちなみに同じクラスだから覚悟しておきなさい!」


 一体何を覚悟しろと言うのか?

 秋雨は再び深い溜め息を吐く。

 と、ここまで沈黙を保っていた宗助が口を開く。


「おい、秋雨! 魔女会とか聞きたいことはあるんだが、あの英国超絶美少女と知り合いってどういことだよ!」

「……宗助、確かにクルセイダーは見た目だけは超絶美少女ではある。だが、残念ながら奴はポンコツだ」

「ちょっとポンコツってどういうことよ!」


 秋雨の言葉に、キャンキャン子犬のごとく吠えるエリスティマ。


「…………後先考えずに魔法をぶっ放して魔素(ガス)切れ起こす奴がポンコツじゃなくて何なんだ?」

「べ、別に良いじゃない結果として上手くいったんだから」

「あの時、俺と聖剣使い(アルトリウス)がどれだけ苦労したと思っているんだ?」


 とある事件の解決のために、秋雨がイギリスへ訪れた時があった。

 その際に魔女会と協力し、事に当たったのだが、このエリスティマはガンガン魔法をブチかました。

 結果として、事の原因を討つことに成功した。しかし、秋雨と共に事件解決を図っていた男なのに魔女会に所属している聖剣使いである少年アルトリウス・グラストンベリーは、エリスティマが放った魔法の余波で山の崩壊に巻き込まれて生き埋めになったことがあった。

 まさか、仲間に殺されかけるとは秋雨も思いもしなかった。

 なお、玲香はこの話を聞いて、腹を抱えて笑っていた。


「アルトリウスに聞いたが、お前あの後もいろいろやらかしているらしいな?」

「や、やらららかしてなんていないわよ」

「…………隠しきれてねぇぞ? まあ、いいさ。で、置いておいた疑問なんだが、何で日本に来たんだよ?」


 隠しきれないほどに動揺するエリスティマに呆れつつも、秋雨は問う。


「マーリンの糞女に『君は日本に行ってきなさい』って放り出されたのよ。アレはきっとアルトリウスとイチャイチャしたいだけね!」

「あ、そう。まあ、それが事実かはどうでも良いけど、少なくともマーリンが無駄なことをするとは思えないんだが?」

「それは……そうね。あの糞女でも数少ない魔女の貴重な戦力を外国に放出するなんて無策でするはずがないわね」

「……もしかして、何で日本に放り出されたのか聞いてないのか?」

「聞いてないわ!」


 小倉駅の事件の時に遥が「来日して会いに行く」と言っていたのはエリスティマのことだったらしい。

 会いに行くどころか、生活することになっているようだが……。

 そして、何も知らないことに胸を張って答えるな――と秋雨は思う。


「まあ、理由は遥さんが聞いてそうな気がするから、あとで聞いてみるか」


 秋雨はそう呟き、机の上に突っ伏した。

 理由は単純だ。ドッと疲れたからである。


「ちょっとアタシを無視して寝るんじゃないわよ!」

「うるせー、お前と話していると疲れるんだよ」


 エリスティマの抗議を、突っ伏したまま受け流す秋雨。


「皆の衆、クルセイダーは寂しがり屋だから仲良くしてやってくれ。聞きたいことがあるなら、本人にジャンジャン来てくれ」


 秋雨がそう言ったことを皮切りに、クラスメイトがエリスティマの周りにわさわさと集まっていく。

 ちなみに宗助も早速突っ込んでいった。


「エリスティマちゃん! 今からエリスちゃんって呼んでも良い?」

「ねぇねぇ、イギリスの生活ってどんな感じなの?」

「彼氏いますか!」


 マシンガンのごとき勢いで様々な言葉を投げかけられ、エリスティマはあたふたし始める。


「しゅ、シューウ! 助けてぇ!」


 そんな声が聞こえたが、秋雨は机に突っ伏したまま、聞こえないふりをするのだった。

 

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