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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第二章
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第24話

 秋雨の夏休みは瞬く間に終わった。

 アンネリーゼとの戦闘の後始末から始まり、両親の葬儀、国内外へ向けての五行神家である神水守家当主としての告知――等々、休む間もなく一気に駆け抜けた。

 しかし、アンネリーゼやアレクシスについては情報は伏せられることになった。

 異世界の存在が公になったとは言え、あの存在を世間へ伝えた時にどのような事態が起こるのか予測がつかなかったからだ。

 さて、秋雨も日本を飛び越え、世界でも有名になってしまった。

 今や『日本にも実在していた太古の魔法使い⁉』という名目で異世界組を塗りつぶす勢いの話題性を有していた。

 当然、夏休み明けの初登校では校内中の注目を一身に集めることとなった。

 ゲンナリとしながら、自身の教室へと足を踏み入れる秋雨。

 ガラッと教室の引き戸を開けると、既に登校していたクラスメイトたちの視線が一気に集まった。


「はぁ……」


 ひとつ溜め息を吐き、秋雨は自身の席へと真っ直ぐ向かう。

 周囲からは好奇心の視線と声をかけたい意思が犇々と漂っていた。

 しかし、秋雨の両親が亡くなったという情報がクラス中に伝わっていることもあり、どう声をかけたものか困っている様子でもあった。


「よ、おはようさん。一か月ぶりか? 元気だったか……と言うのは、ちょっと違うな。ま、何はともあれ、お疲れ」

 

 そんな空気の中、早速声をかけてきたのは宗助だった。


「おはよう。気持ちの整理はついているから気にしないでくれ」

「そうか。ま、秋雨が何者であろうと俺たちは友達だぜ!」


 親指を突き上げサムズアップする宗助に、秋雨は笑みを溢す。


「そうか。ま、よろしく頼むよ」

「おう。とりあえず聞きたいんだが――神土守遥さんについて教えてくれ!」


 肩を掴んで目を見開きながら迫って来た宗助に、秋雨の面倒臭そうな表情を浮かべる。

 五行神家についての公開に立ち会ったのは、秋雨と玲香、そして遥の三人だった。

 そんなこともあり、三人の顔はしっかり知れ渡っている。


「あの整った顔立ちでに、和服を着こなす大和撫子のお姉さま! あわよくば紹介してほしいくらいなんだが!」

「…………紹介はできないが、多少は話してもいいぞ」

「マジで⁉」

「ああ――とりあえず、非常に残念な話になるんだが……」


 秋雨の言葉に、宗助が首を傾げる。

 二人の会話に耳を澄ましていた周囲のクラスメイトたちも、宗助と同じような反応を見せる。

 知らない方が幸せなこともある――そう考えると伝えない方が良い気もする秋雨だったが、勘違いされたままも悪い気がしたので意を決して話をすることにした。


「遥さんは……男だ」

「………………はい? よく聞こえなかったんだが、もう一度行ってくれないか?」

「遥さんは確かに大和撫子みたいだけど、男だ」

「O・TO・KO?」


 秋雨はゆっくりと頷く。

 そんな宗助の表情は、今までに見たこともない間抜け面であった。


「どう見ても女性にしか見えないんだが?」

「だが、男だ」

「うっそだろ、お前⁉」


 周囲から「俺……性癖が壊れちまうよ」という声が聞こえたが、秋雨は聞かなかったことにした。


「あんなに美人なのに……男? いや、それは――――意外とアリなのか?」

「戻ってこい、宗助」


 秋雨は新しい扉を開きそうになっている宗助の頭にチョップする。


「痛っ⁉ 悪い冷静になった」

「それは良かったよ。とりあえず男だから勘違いするなよ」

「マジか~」


 悔しがっている宗助に、秋雨は呆れながら溜め息を吐いた。


「それはそうと、秋雨の苗字はどっちになるんだ?」

「苗字? ああ、玉水か神水守かってことか。一般的には玉水のままだよ。あくまで五行神家として仕事をするときは、神水守として名乗ることになるな」

「そっか。じゃ、今後とも変わりなくよろしく頼むぜ!」


 ニッと笑う宗助。


「ああ、いつも通り頼むよ」


 秋雨はそう答えた。

 和やかな空気が教室内に流れていた――そんな時だった。


「シューウ! このアタシがイギリスから会いに来たわよ!」


 教室の扉が勢いよく開け放たれる。

 そこに立っていたのは真新しい制服を身に纏った金髪碧眼の少女。


「…………」


 その少女を見た秋雨は眉間に皺を寄せ、鯉のように口をパクパクさせる。


「ふふん、嬉しくて声も出ないようね! はじめまして皆さま。公式に発表されるのはもう少し先だけど、名乗らせてもらうわ! 魔女会(ウィッチクラフト)所属の魔法使い、エリスティマ・クルセイダーよ! よろしくね!」

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