第156話
新たな仲間も加わり、秋雨たち一行は一旦の目的地であるセイレムに到着した。
道中は特に大きな問題も発生せず、時折あった魔物の襲撃は妙に張り切ったアルトによって一瞬で片付いた。
「ここまでの護衛ありがとうございました。旅の安全をお祈りしています」
ここまで道中を共にしていたチオビタとの別れを済ませ、秋雨たちはセイレムの正門付近で行先について話を始める。
「一先ず、バスクさんから貰った紹介状を持って冒険者ギルドへ向かおう。中身は……何が書かれているんだ?」
懐から封書を取り出しながら秋雨は言いつつ、内容について疑問を呈する。
変なことは書いていないとは思うのだが、妙に持ち上げるようなことが書かれていると、それはそれで面倒なことになりかねない。そこはバスクの常識と良心を信じるしかない。
「セイレムのギルドマスターはルビスさんかな」
「へぇ? 流石は剣帝ちゃんだねぇ。知り合いだったりするのかなぁ?」
「知り合いって程じゃないね。まあ、何度か顔を合わせたことがあるくらいだね」
アンネリーゼの問いにアルトは控えめに答える。
あの時の戦闘時とは打って変わって謙虚である。
「まったくの知り合いじゃないだけで助かるところだな。剣帝の肩書があるだけで取り次ぎもスムーズだろうし……」
「そこは僕に任せてほしい」
胸を張って張り切り気味で言うアルトに、秋雨は苦笑する。
「夜まではまだ時間があるから早速ギルドに向かおうぜ!」
「明日以降についても何処かですり合わせをする必要もありますよね?」
クロとルシアがそれぞれ言い、それに秋雨は大きく頷く。
——と、アンネリーゼが手を上げる。
「はいはーい。私はちょっと単独行動を取らせてもらうねぇ?」
「…………理由を聞こうか?」
「そうだねぇ……帝国の動向と狂気山脈の状況の収集かなぁ?」
秋雨は顎に手を当て考える。
ゾティークに来てからのアンネリーゼの行動から信用に値することは間違いない。これまでも恐らく様々な暗躍をしてきていることを予想すれば、情報収集もお手の物だろう。事実、アンネリーゼの有している情報が役に立っている節もある。
「……わかった。だが、夜には合流が絶対条件だ」
「わかったるよぉ。ま、タイタニックに乗ったつもりで待っててねぇ?」
「…………一気に不安になったんだが?」
意味がわかる秋雨は微妙な表情を浮かべるが、意味がわからないルシア、クロ、アルトは首を傾げている。
が、そんなことに気を留めることもなくアンネリーゼは早速動き始める。
「それじゃあ、また夜にねぇ?」
そう言い残すとスーッとアンネリーゼの姿が掻き消える。
これには秋雨以外の三人が目を丸くする。
「「「消えた⁉」」」
三人同時にそんな声を上げる。
「あー、まあ、そういうヤツだって思っておいてくれ。説明しろと言っても俺にはできないから聞かないでくれ」
「アンネリーゼって少女と秋雨の関係ってなんなんだい?」
アルトが問う。
「あー……簡単に言ってしまうと、殺し合いに近いことをやり合った仲だよ。まあ、それ以上の因縁はあるんだが……」
秋雨は苦虫を噛み潰したような顔でそう言った。




