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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第七章

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153/189

第153話

 斬れば斬るほどに斬れ味が増す——シンプルではあるが、それは馬鹿にはできない異能だ。何よりも比較と超越の理を有する収獲者に対しては圧倒的に有利なものだろう。

 魔剣シャープネス。それがアルトの持つ魔剣の力であり、それが彼を剣帝に押し上げた。

 氷刃刀で斬り合う中、そのことを秋雨は犇々と感じる。しかし、魔剣の斬れ味が増す以上に、氷刃刀に込める力を増やして対抗していた。

 だが、同時にわかることもあった。


「アンタ、魔剣のゴリ押ししかないのか?」


 アルトを弾き飛ばして、秋雨は半ば拍子抜けした様子で言い放つ。

 それはアルトの感情を逆撫でするのは火を見るよりも明らかだった。


「僕が魔剣だよりとでも言うのか⁉」


 怒りを顕わにし怒鳴るアルト。それが図星であることを如実に示してた。

 周囲の反応も感情を剝き出しにしているアルトに若干引き気味だ。対照的にアルトと相対している秋雨への興味が増していた。


「剣帝が相手にしているあの坊主は何者なんだ?」

「勇者様の知り合いだとは聞いたけど、ここまでとは思いもしませんでしたね」


 聞こえてくる言葉の数々は秋雨に対するもの。どれも驚きの声が大半だ。


「アンタの剣技は魔剣と合わさることで確かに強力だろうな」


 秋雨は氷刃刀を構えつつ、アルトを見据える。

 アルトも魔剣を構え、秋雨に殺意の籠った視線を向ける。


「だが——それだけだ」


 秋雨は断言する。


「どこぞの勇者と違って、魔剣だよりで倒せるほど俺は甘くないぞ」

「ほざくなよ! 僕は勇者を倒した唯一の人間だ! そんな僕がお前に負けるなんてことはあり得ない」

「……一体、その自信は何処から出てくるんだ?」


 自信を持つことは良い。だが、過ぎた自信は慢心となる。

 恐らく今のアルトは自信ではなく慢心。少なくとも秋雨はそう確信していた。


「勇者でもないお前が、僕に説教を垂れるな!」

「……面倒臭いな、アンタ」


 地を蹴り、魔剣を振りかざし突っ込んで来るアルト。

 秋雨はその刃を躱し、アルトの腹部に蹴りを入れ込む。


「ぐぅ……」

「馬鹿正直に打ち込んでも俺には当たらないぞ」


 あまりにも猪突猛進が過ぎる——と、秋雨は呆れる。

 どれだけ魔剣に絶対の自信を有しているというのか……。

 ただ、一定水準以上の実力があることはわかる。だからこそ、過去に勇者である奏多を下すこともできたのだろう。

 だが、それだけでは秋雨には届かない。


「少し落ち着いてくれ」

「黙れ!」


 秋雨は困り顔を浮かべる。

 アルトが興奮し過ぎており、会話にならない。そうなると彼には少し頭を冷やしてもらうしかない。


「はあ、頭冷やしてくれ」


 氷之業・陽型――六花絢爛(りっかけんらん)


 秋雨の放った術により、当たり一帯が一瞬にして白銀の世界へと様変わりした。

 吐く息は白くなり、同時にアルトの足が動かないように凍りつかせる。


「————は?」


 あまりにも一瞬の変化にアルトは唖然とし、そんな声を溢した。

 ——と。


「ちょいと眠って冷静になるんだな」


 不意打ち気味に、秋雨はアルトの鳩尾へ拳を叩き込んだ。

 口から空気を全て吐き出しながら、その一撃でアルトの意識が完全に落ちた。


「はぁ……ダル過ぎる」


 一息吐きながら秋雨はそう呟いた。

 同時に周囲から歓声が上がるのだった。

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