第148話
「いたねぇ?」
ズドンという音と共に、アンネリーゼは発見した蜥蜴人間の集団のど真ん中へと突っ込んで着地する。
踏みつぶされた蜥蜴人間は圧死。その死体の上に突っ立たまま、アンネリーゼは周囲で視線を向けている蜥蜴人間へ向かって口を開く。
「やっほー、何処かの頂点捕食者の下僕の皆さ~ん? 非常に残念なんだけどぉ、サクッと逝ってくれると嬉しいかなぁ?」
冗談めかしてとんでもないことを宣うアンネリーゼ。
「——お前ハ……頂点捕食者カ!」
蜥蜴人間のひとりが声を上げる。
その声と共に他の蜥蜴人間がそれぞれ武器を構える。
「へぇ? 私が頂点捕食者わかるんだぁ? 弱っちい下僕——眷属でも判別はできるんだねぇ?」
「馬鹿にしないでもらオウ。我々はルクシャ・ハーナ様の下僕であることに誇りを持ってイル。我が王ハ必ず世界を救うのダ!」
「……世界を救うかぁ? 随分と大きく出たねぇ」
アンネリーゼは死体の上から飛び降り、パチンと指を鳴らす。
——と、直ぐ近くにいた蜥蜴人間が黒い雲に包まれると同時に、バキャバキャという骨の砕ける音が響く。
蜥蜴人間たちは鋭い視線をアンネリーゼに向けながら息を吞む。
「群れないと何もできないのかなぁ?」
「ほざくなヨ。我々でもお前を倒すことくらい————」
その蜥蜴人間が威勢よく声を上げ、仲間を鼓舞するために剣を振り上げようとした時だった。
ズプリと鈍い音が響いた。
その蜥蜴人間が気づいた時には、目の前にアンネリーゼの姿があり、その腕が自身の胸に突き刺さっていた。
「反応が鈍いなぁ。正直なことを言うと、君たちには微塵も興味はないんだよねぇ? だけど、ここは私たちの通り道で邪魔だったからねぇ。あまり戦闘慣れしていない人を君たちと戦わせるわけにもいかないからさぁ」
「……ルクシャ・ハーナ様はお前たちに気づいてイル。お前たちが生きているのハ、我らが主であるルクシャ・ハーナ様の慈悲に過ぎナイ」
「ふーん? だったら愚行だねぇ? 現にこうやって私に下僕が蹂躙されているわけだからねぇ」
そう言って突き刺していた腕をアンネリーゼは引き抜き、思い切り蹴飛ばした。
骨の砕ける音と共に吹き飛んだその蜥蜴人間は地面を数度転がって後、ピクリとも動かなくなった。
「さて、主への忠誠、頑張りは君たちの誇りであることは理解できるよぉ? だけど、やっぱり邪魔なんだよねぇ」
スッと目を細めて、アンネリーゼは口元を歪めて口を開く。
「——だからさぁ、サクッと私に殺されてみない? 大丈夫、できるだけ痛くはしないからさぁ?」
瞬間アンネリーゼの全身から噴き出す狂気。それは黒い衝撃として視認できるほどだ。
「すこーし身体が訛っているところもなってねぇ、準備運動のために私と付き合ってよねぇ?」
アンネリーゼを起点に黒い雲が広がっていく。
同時に場に狂気が満ちていく。
周囲の蜥蜴人間たちは武器を手に、足を踏み出し始める。
その切っ先はアンネリーゼへ向けて、主へ報いるための行軍。
「——さぁて、悪いけど夕方までには片付けちゃうからねぇ?」




