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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
間章

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138/150

第138話

 国境に設けられた関所へ必要な書類を提出することによって、共和国へ踏み入れることができた。

 最後まで関所の兵に危険性を説かれ、立ち止まるように説得をされたのだが、そのすべてを振り切っての入国となった。

 さて、共和国へ足を踏み入れた秋雨たちではあるが、セイレムまでは結構な距離がある。

 道中では野宿も当然ある他に、数か所の村と町を補給も兼ねて経由していく予定となっていた。

 関所を抜けてからの道中は実に穏やかであった。今のところは正体不明の魔物の姿形は見受けられない。


「平和ですね」


 ガタガタと荷台で揺られる中、ルシアが呟く。


「姉ちゃんの言う通りだけど……正直拍子抜けだよな」

「クロ、ルシア。何事もないことが一番楽で良いんだ。極力面倒事はない方が良い」


 二人の言葉に秋雨はしみじみと言う。

 元来の秋雨は面倒臭がりである。ここ数ヶ月は面倒がどうだとか言っている場合でもなく、それどころから途轍もないスピード感で世界が変化していってしまった。忙しいとかそういう問題でもなく、唯々気が付いたら今の状況だったと言うべきかもしれない。


「まぁ、最近はずっと大変だったからねぇ?」

「…………少なくともアンネリーゼにだけは言われたくないな」


 アンネリーゼの言葉に、秋雨は吐き捨てるように答える。

 秋雨が本格的に厄介事へ巻き込まれるようになったのは、アンネリーゼたち頂点捕食者が原因だ。

 そんな二人のやり取りにルシアが問う。


「お二人は……見た感じ仲良くなさそうですけど、どういう関係なんですか?」


 それに秋雨は難しい表情を浮かべる。

 両親を殺した張本人——と話す必要はない。

 するとアンネリーゼがニコニコしながら答えた。


「お互いに殺し合った(愛し合った)仲だねぇ」

「愛し合った⁉」

「……ルシア、アンネリーゼの言葉を馬鹿正直に受け取らなくて良い。ま、元は敵同士だっただけの話だよ」


 何やら顔を真っ赤にするルシアへ、秋雨は溜息交じりに告げる。


「えぇ、あんなに激しかったのにぃ?」

「激しかった⁉」


 ニヤニヤしながら言うアンネリーゼとそれに過剰な反応を見せるルシア。


「誤解を招くような言い方をするんじゃない」

「それもそうだねぇ。まぁ、どうやらルシアちゃんはムッツリみたいだねぇ?」


 ケラケラと笑うアンネリーゼと顔を真っ赤に染めるルシア。そんな姉を見て、声を殺して笑うクロ。そして、眉間を摘まみながら上を見上げる秋雨。

 ——と、荷車を引っ張る馬の手綱を握るチオビタが声を掛けてくる。


「仲睦まじいことは良いことだね。それよりもそろそろ何処かで野営の準備をしたんだけど、どうだい?」

「次の村? 町にはどの程度で到着ですか?」

「次の村は予定通りに進めば明日の夕方に到着予定さ、シューウ君」

「わかりました。程よいところで野営の準備をしましょう」

「了解。良さげなところに着いたら声を掛けるよ」

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