第135話
「——まあ、国民の内閣支持率や国外の見え方を気にしているだけでしょうね。国会議員としては普通の行動なのでしょうけど、相手が悪かったわね」
一通りの流れを紅蓮から聞いた玲香はつまらなさそうに言う。
「脅しが普通の行動かは置いておくとして、何か起こしてくると思うか?」
「そうね……ま、無理でしょうね」
紅蓮の問いに、玲香は断言した。
「今、収獲者を日本国内で相手にできるのは私たち五行神家のみ。勇者御一行はゾティークだから猶更ね。その影響もあって、特定の思想を持つ者を除く人々からはある程度の支持は受けていると考えているわ」
実際、テレビの取材に答えている一般人の言葉は、五行神家に対して好意的なものが多い。
批判的なものも少なからずあるのだが、その大半が玲香の傍若無人ぷりに対する苦言である。ただ、一部の男性、女性にはその歯に衣着せぬ物言いと立ち振る舞いが絶大な人気を誇っているらしく、SNSでは『玲香様応援団』なるよくわからない団体まで現れている。
玲香もそれは認知しているが、隙にやらせている。
勿論、他の当主のファンクラブも存在しており、最も人数が多いのは遥だったりする。
曰く、『性癖を破壊された』と話をしている人がいるとかいないとか……。
「いつ誰が撮影したのかは知らないけど、釧路での戦闘も報道されているし、ネット上でも出回っているわ。そのおかげもあって収獲者から守ってくれるという認知は共通となっている。そんな相手を気に食わない、指示に従わないという理由で、国会議員の権力で排除したらどうなるか————頭の固い権力と金の亡者でもわかるでしょう?」
「まぁ、そりゃそうだわな。とりあえず日本政府は無視して大丈夫か」
紅蓮の言葉に玲香は頷く。
「一先ず気にすることはユーラシア大陸からの侵攻と太平洋からの侵攻でしょうね」
「ユーラシアからの侵攻はまだ対処できるが、海からは後手に回るだろうな」
「でしょうね。こんな時に秋雨がいないのは困りものね」
玲香は溜息交じりに言う。
秋雨の有する水に刻まれた記憶を読み取る術である『水之業・陰型――水泡記視』があれば、海の中であろうとも収獲者の情報は取り放題だったはずだ。
「しかし、あの坊主は異世界で上手くやってんのか?」
「さあ? アンネリーゼと揉めてないと良いけど」
「……つーか、幾ら契約で縛っているとは言え、親の仇である嬢ちゃんを旅のお供にするか?」
今更苦言を呈しても意味はないが、紅蓮としては思うことがある。
しかし、玲香はケロッとした様子で口を開く。
「異世界への道を開く以上、仕方なかっただけ。まあ、そっちの方が面白いと思ったこともあるわ」
「……人の心はないのか?」
「さあ? どうでしょうね」
引き攣った表情を浮かべる紅蓮。
そんな様子に笑みを浮かべながら、玲香は呟く。
「さて、秋雨はどうしているかしらね?」




