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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第五章

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125/132

第125話

 釧路への隕石落下。

 ただの隕石の落下であれば、少しだけ世間を賑わせる程度で収まっただろう。

 しかし、ゴビ砂漠への隕石落下と収獲者の出現があった以上、警戒されるのは明白だった。

 何事もないでほしい——それが多くの人々の願いであったのだろうが、その願いは叶うことなく無慈悲に打ち砕かれる。

 ギチギチギチギチギチギチ——と、音が響き渡る中、隕石の中から蜘蛛が這い出て来る。

 更にその奥から別の姿をしたモノが這い出て来る。

 それは蟷螂のような姿をした収獲者——尖兵だった。


     ◆


 会議は紛糾する。

 釧路湿原への隕石落下から一夜明け、ドローンから齎された収獲者の存在に今後の対応を政府は迫られていた。

 五行神家サイドはその行く末を唯々見守るのみではあったが、政府が押し問答を繰り返している最中で五行神家に所属する術者を動かし、最悪の事態に備える準備は整えていた。


「アメリカ政府から核による一掃を打診されています!」

「それを受け入れると思っているのか⁉ 寝言は寝て言え!」

「自衛隊を動かすべきだ!」

「それは法整備が……」

「今はそれどころではないだろう!」


 目の前で繰り広げられる戯言の数々に、玲香は腹の中で爆笑しながら口元を歪めていた。


「……この茶番はいつまで続くんだ?」


 紅蓮が呆れたように口にする。

 これが危機の迫る中で行われるものかと思うと、唖然としてしまう。


「待機している術者を動かす必要がありそうやね?」

「そうだね。北海道については神金守の術者を動かしてる。最前線は律に頼んでるよ」

「へえ? 確かに今の彼なら単身で抑えることはできそうね」


 鈴音の言葉に、玲香が納得したように言う。


「あの日、九十九との戦いでいろいろなことを引き継いだみたいでね。正直、有している力だけなら私と同等か、それ以上かも」

「生命体としての強度が上がったというよりは、九十九の思惑通りに()が成長したってところでしょうね」


 玲香は律のことを高く評価している。

 頂点捕食者である玲香には遠く及ばないが、少なくともその有している力は秋雨を越えていると考えている。

 さて——と、玲香は目を細め、繰り広げられる面白くない舞台に釘をさす。


「いつまで馬鹿げた劇を演じるのかしら? 危機はそこまで迫っているのだけど?」


 玲香としては政府のいがみ合いなぞ微塵も興味がない。

 しかし、ゾティークに向かった秋雨のために、帰るべき場所は守る必要もある。


「このまま馬鹿みたいな議論をまだ続けるのかしら?」


 玲香の放つ圧力に場が沈黙する。


「……はぁ、これじゃ話にならないわ。紅蓮、遥、鈴音、動くわよ」


 玲香は立ち上がると出口へと向かって歩いて行く。

 それに倣い、紅蓮、遥、鈴音も立ち上がる。

 政治家たちから制止の声が投げかける中、五行神家の当主たちは立ち止まらなかった。

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