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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第五章

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124/129

第124話

 世界の情勢は濁流のような勢いで変化していく。

 ゴビ砂漠を起点に中国、モンゴルへ収獲者が侵攻を開始。

 中国は軍の全兵力を投入し、収獲者と正面から対峙することになった。

 初めこそ優勢であり、他国の介入のすべてを拒否し、中国軍は一国で収獲者を討とうとしていた。それは討伐後、手に入れることができるであろう地球外の資源を独占しようとしていたからに他ならない。

 だが、その目論見は泡沫のように消えた。


「——中国軍はほぼ壊滅。収獲者による侵攻で、中国国内は完全にボロボロね。モンゴルは瞬く間に陥落。ユーラシア大陸の国々は緊急事態宣言を発令し、事にあたっているみたいだけど、どこまで上手くいくかしらね?」


 五行神家の各当主、日本政府の要人、その他関係各所の重鎮たちが東京へ一堂に集まり、日本としての対応を協議していた。

 島国であったことが功を奏し、日本海が収獲者の侵攻を鈍らせている。だが、それも時間の問題だ。

 深刻な空気が漂う中でも、玲香の立ち振る舞いはいつもと変わらない。

 遥、鈴音、紅蓮も特に慌てた様子を見せず、要人、重鎮たちが繰り広げる馬鹿げた議論に耳を傾けていた。

 この期に及んで自衛隊による兵器の利用に難色を示す政治家もいれば、何故か政権批判につながれる政治家も現れる。

 勿論、このような事態は日本だけでなく、諸外国でも起こっている。


「はぁ、いつまでこの馬鹿みたいな与太話が続くのかしら? こっちはわざわざ時間を作ってあげたのだけど? そろそろ中身のある議論でもしないのかしらね」


 玲香が欠伸をしながら、足を引っ張りあう者たちへ一石を投じる。

 すると、政権批判に向いていた矛先が玲香へと向けられる。


「そもそも五行神家が不甲斐ないせいではありませんか!」

「……不甲斐ないね? どのあたりが不甲斐ないと言うのかしら?」


 余裕綽々に玲香は、口撃を行った議員へと問う。


「あなた方が先手を打って対策を講じていれば、こんなことにはならなかった!」

「なるほど。実に中身のないタラレバな話をするのね。いやはや、こんな低能が議員とは日本国民も不幸が過ぎるものね」


 サラッと口撃を受け流しながら、玲香はあからさまな嫌味を告げる。

 そんな様子に遥、鈴音、紅蓮は涼しい顔をしながら、その状況を見る。

 当然、そんな嫌味を言われると、言われた側は顔を真っ赤にしてヒートアップするもの。


「それはこちらの台詞です! 力ある者が、力のない者を守らないとはどういう了見————」


 その言葉は玲香にとって地雷だった。

 ズン、という目に見えない圧力が場を支配する。


「どういう了見? こちらも聞きたいのだけど——あなたこそ、どういう了見で都合の良いことを宣っているのかしら?」


 スッと目を細めた玲香は見下すように口撃を仕掛けてきた議員へ問う。

 議員は顔を真っ青にし、ガクガクと震えるだけ。

 そんな情けない姿を見て、玲香は馬鹿にするように鼻で笑う。


「私からすれば、力のない者は等しく価値がないわ。弱者は淘汰され、強者は生き永らえる。他者に頼り切る愚か者は生きる価値なんてないと思うし、自らの手で切り開こうとしない雑魚は速やかに死んでくれた方が世のためだと思うのだけど?」


 玲香は思う。

 このような人間が蔓延る世界のために、試練を与え、生命体の強度を上げる必要があるのか、と——。

 人間は目の前に脅威が迫っていても互いに手を取り合えない。

 地球外の資源を独占するために他国を寄せ付けずに全滅した中国軍。

 脅威が近づいているにも関わらず、政権を批判する国会議員。

 自国を優先するため、各国から大半の軍を引き上げたアメリカ。

 ただ、これが人間を人間たる所以だとも玲香は思う。


「ま、大体の予想はつくわ。五行神家(私たち)がいるから日本は安全だとでも思っていたのでしょうね。だけど、五行神家は政府の指示には従わないわよ?」

「なっ⁉ 国民を見捨てるのか?」

「はぁ……見捨てるも何も、五行神家だけで全国民を守るなんて無理よ。そもそも足手まといがいては、私たちも本気を出せないのよね」


 溜息交じりにそう告げる玲香。

 その言葉の意味を政治家たちは東京会談で身に染みて知っている。

 玲香の放った相伝術式・転換は、周囲の被害を考慮していない。勿論、玲香の持つ権能も周囲の被害は度外視だ。その筆頭は『天照』である。

 その時だ。


「緊急事態です!」


 会議室に飛び込んできた男。その口から語られた言葉に一部を除く者たちが絶句する。


「北海道釧路湿原に隕石が落下! そこから収獲者が出現しました!」

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