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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第五章

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123/129

第123話

 秋雨たちがゾティークへ旅立った翌日。

 ゴビ砂漠のど真ん中にひとつの流星が、空を引き裂きながら一直線に落下した。

 強烈な地震と砂埃を立ち上げ、周辺に衝撃波が伝播した。

 幸いなことに被害は最小に抑えられたとのことであったが、中国軍が落下地を即座に閉鎖され、更に情報統制までされ、詳細が一切不明な状況となっていた。

 テレビで流れる話題はゴビ砂漠の隕石一色。

 少し前まで賑わせていた東京会談を瞬く間に塗り替えてしまった。

 玲香は骨董品屋のレジカウンターで、そのニュースをぼんやりと眺めながら、口元を大きく歪めた。


「思ったよりも早かったわね」


 人気のない店内に玲香の期待に満ちた声が響く。


「秋雨がいない状況にやって来るなんて、ただの偶然かしら?」


 いないものは仕方がない。

 異世界に行くことを決めたのは秋雨自身だ。その意志に玲香自身がとやかく言う筋合いは微塵もない。

 しかし、この隕石の落下は間違いなく日常の終わりを告げる序曲である————少なくとも玲香は確信していた。


「ゴビ砂漠。中国とモンゴルに跨がって広がる大砂漠。落ちたところが明らかに悪かったわね。概ね、中国としては地球外のものを独占でもしようと思ったのだろうけど……」


 テレビにはモンゴルの首都であるウランバートルからの中継が流れている。

 どうやら中国軍による封鎖により、モンゴルにも何ひとつ情報が入って来ていないらしい。

 ふと、テレビの映像に蜘蛛のような何かが横切る姿が映った。


「————へえ、アレが……」


 玲香が興味深そうにそう呟いた時だった。

 中継を行っていたリポーターの首が飛び、テレビの映像が真っ赤に染まった。

 瞬間、悲鳴が木霊し、映像が即座にスタジオへ切り替わり、映された出演者の顔は真っ青だった。


「……収獲者。いよいよってところね」


 ——と、レジカウンターに置いていたスマートフォンが鳴る。

 画面には「遥」と表示されている。


「呼び出しみたいだし、店仕舞いね。きっと政府からの呼び出しも踏まえているのでしょうけど」


 テレビに映るのは何とか取り繕おうとする出演者だったが、一部は口元を抑え、何処かへ走ってスタジオから姿を消していた。

 頂点捕食者たちが恐れ、対抗するために暗躍していた対象の到来。

 地球の意志が恐れた来たる脅威。

 

「さて、面白くなってきたわね。私の実力と収獲者の理——どちらが上か確かめてみるとしましょうか?」


 玲香の中に人類を救済するような崇高な考えは微塵も存在しない。

 ただ、自身を越える強者との戦いを望んでいるに過ぎない。


「比較と超越の理だったかしら? 実に私好みの理じゃない」


 アンネリーゼから聞いていた情報に、玲香は胸を躍らせる。


「負ける気は毛頭ないけど、秋雨が帰る場所は守ってあげないとね」


 手早く片づけをすませると、玲香は鳴り続けるスマートフォンを手に取る。


「ごめんなさいね。ええ、見てたわ。いよいよって感じね。ええ——頂点捕食者たちが恐れていた地獄がはじまるわよ」

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