第121話
「それで? シューウのやるべきことって何なんだ?」
「ああ、勇者と会うためにアルズベリィへ行きたいんだ」
秋雨の言葉に、レギオーは訝し気な表情を浮かべる。
この時勢にアルズベリィへ向かうことは勿論のこと、勇者に会うためだけに危険地へ飛び込むことは自殺行為と思ったのだろう。
「もしかしてだがシューウは勇者カナタの仲間なのか?」
「仲間……と言えば、そうなのかもな」
「秋雨君は素直じゃないねぇ? 一緒に私と戦った間柄でしょうぉ?」
レギオーの問いに秋雨が歯切れ悪く答えると、アンネリーゼがおちょくるようにそんなことを言う。
「…………ま、いろいろ事情はあるんだろうが、深くは聞かんよ。しかし、この時勢にアルズベリィへ向かうとなれば、共和国を抜けて狂気山脈を越えるか、帝国を突っ切るかだ。海路もあるが、そっちは帝国海軍が網を張っている。海上は逃げ道がないからオススメはできない。あとは貿易もままならない状況だな」
「レギオー殿の言うこともあるが、ギルドとしては冒険者の行き来も難航しておる。アルズベリィに滞在しているの冒険者は足止めをくらっておるようでな、当然こちらから向かいたい冒険者も困り果てておる。狂気山脈を抜けるにも、オルドの存在が厄介極まりないこともあるのだ」
難しい表情を浮かべるバスク。
どうやら冒険者ギルドとしては、支部間の連携がうまく出来ていない状況が続いている様子だ。
「実は勇者パーティがアルズベリィに訪れたってことで、魔王討伐に協力していた有力な冒険者たちがパーティーに呼ばれていたんだよ。そんな最中にルクシャ・ハーナと結託した帝国がアルズベリィへ攻撃を仕掛けたもんだから、各地の冒険者不足も顕著なんだ」
レギオーは眉間に皺を寄せ、吐き捨てるように言う。
ちなみにレギオーのパーティも奏多たちの魔王討伐に協力している。アルズベリィへ行かなかったのは、別の依頼を請け負っており、日程が合わなかったからだ。
「可能であれば此処に残って防衛に力を貸してほしいところだが、そういうワケにもいかないんだろ?」
「ああ。今のところはルクシャ・ハーナ自身が動いていなさそうではあるけど、そうなる前に一刻も早く勇者と合流する必要がある」
「なるほどな。バスク、共和国のセイレム支部へ紹介状を出せないか?」
レギオーがバスクへ問う。
するとバスクは「うむ」と頷き、口を開く。
「後ほど紹介状を手渡そう。それがあれば共和国内でも、ある程度の自由は利くであろう。だが、帝国の動きが読めない以上、共和国内も安全とは言えないで会おうな。勿論、属国化しているアリステッドも例外ではないが……」
バスクはそう言うと、「紹介状を認める」と言い残し、会議室を出て行く。
「さて、狂気山脈の最新の情報についてはセイレム支部で聞いてくれ。それを踏まえて、帝国を突っ切るか、狂気山脈を越えるかは選んでくれ。俺たちのような冒険者なら帝国経由一択だが、シューウたちの実力があれば狂気山脈も選択肢としてありだろう」
クロとルシアが同行していることもあり、秋雨としては可能な限り安全な道程を進みたい。しかし、どちらにしても危険であることは否めない。一番は此処にクロとルシアを置いて行くことだが……。
ちらりと秋雨はクロとルシアへ視線を向ける。
「お兄さん、俺は一緒に行くぞ!」
「クロが行くなら、私も同行します!」
その眼差しから意志が固いことは明らかだった。
「ま、経路は後でも良いんじゃないのぉ? 私としては……楽な方が良いけどねぇ」
アンネリーゼは軽い口調で言う。
考えている楽な方がどちらなのか——秋雨は知る由もない。
「経路についてはセイレム支部の情報を聞いてから決めようと思う」
「そうか。ま、協力できることは俺たちも協力するぜ? じゃ、町の防衛について詰めようか」
それからは防衛体制と収獲者対策について話し合われるのだった。




