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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第四章

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120/122

第120話

 収獲者とは何か?

 秋雨もアンネリーゼから聞いた程度の話しか知らない。

 東京会談時にアレクシスや九十九の口から話されたこともあり、それぞれの報告を秋雨は耳にしていたが、それを踏まえても知らないことが多い。

 恐らく玲香は何かしらを知っていたのだろうが、本人の口から語られることはないだろう。


「アンネリーゼ、まだ俺に話していないことはあったりするのか?」

「そうだねぇ。話をしていないことはあるかなぁ。それは話す気がなかったわけじゃなくて、聞かれなかったから話さなかっただけなんだけどねぇ?」


 その言葉に秋雨は顔を顰める。

 レギオーたちも秋雨の様子を見て、苦笑を浮かべざるを得ない。


「なら、話してもらおうか? こちらとしても対策を立てる必要があるからな」


 レギオーは鋭い視線をアンネリーゼに向けながら告げる。


「対策ねぇ? 残念だけど、対策は立てるだけ無理かなぁ。大前提として君たちは弱過ぎるからねぇ?」


 クスクスと笑い声を溢しつつ、この場にいる者たちを煽るようにアンネリーゼは言った。

 その言葉に誰もが眉を顰め、不満そうな表情を浮かべている。中には直ぐにでもアンネリーゼへ噛みついて行きそうな雰囲気を放つ者までいた。

 当然、レギオーも一瞬だけムッとした表情を浮かべたが、先の蜘蛛と対峙した経験からグッと怒りを抑え込む。


「今回現れたのはユゴスでは斥候と呼んでいた収獲者だねぇ。アレクシスの世界ではトラクター・ロータリーって呼ばれていたみたいだねぇ」

「斥候と言うことは、あの蜘蛛は下っ端も下っ端ってことか?」

「そうだよぉ、レギオー君。ユゴスでは斥候の他に、尖兵、狙撃手、戦車、重戦車、指揮官がいたねぇ。収獲者が本格的に動き出せば、尖兵と狙撃手による殺戮と戦車、重戦車による整地が行われるねぇ。指揮官は他を統括する役割を主に担っているけど、その戦闘能力は他を寄せ付けないほどだねぇ」


 アンネリーゼから語られる収獲者の話を聞けば聞くほど、その異常性が如実となっていく。

 個々の戦闘能力は勿論だが、有している比較と超越の理が更に攻略を難しくしていく。唯でさえ厄介な敵が、際限なく強くなるのは反則どころの話ではないだろう。


「収獲者の狙いは何なのだ?」


 ずっと口を閉ざしていたバスクがアンネリーゼへ問う。


「果実を収穫することだねぇ」

「果実?」

「そう、果実。収獲者を生み出した創造主にとって、私たちは畑に実った果実でしかないんだよねぇ。だから、農作機械を使って収獲にやって来てるってことだねぇ」

「待て、アンネリーゼ。サラッと流そうとしていたが、お前は収獲者の創造主を知っているのか?」


 するとアンネリーゼはクスクスと笑う。


「流石だねぇ、秋雨君。私としてはこの異世界(ゾティーク)の命運はどうだって良いから、質問が無ければ話す気はなかったよぉ」


 ゾティークの命運はどうだって良い——その言葉による場の空気が一気に悪くなる。

 それもその筈、この異世界で生きる人々にとって、アンネリーゼの言葉は看過できないものだろう。しかし、それでも詰め寄らないのは、収獲者の情報を握っているのがアンネリーゼしかいないからに他ならない。


「私はあくまで秋雨君が住む地球に呼ばれた頂点捕食者だからねぇ。地球のために戦うけど、ゾティークのためには積極的に戦う気はないかなぁ。そもそも、この世界を収獲者と対峙できる段階まで引き上げる役割はルクシャ・ハーナが担うべきことだしねぇ」

「…………なら、嬢ちゃんは俺たちの敵か?」


 棘のある声音でレギオーがアンネリーゼへ問う。

 するとアンネリーゼは首を横に振りながら、お道化たように答える。


「敵じゃないよぉ。私はあくまでも持論を展開しているだけで、この世界でどのように動くのかは、秋雨君次第だねぇ?」


 その言葉と同時に、すべての視線が秋雨に集中する。


「だ、そうだが……シューウの考えはどうなんだ?」

「……目の前で死にそうになる人を見過ごすほど、俺は人間を辞めたつもりはない。だけど、俺にもやるべきことがある。だから、できる限りのことは協力するさ。まあ、それなり関わることになるとは思うけどな」


 本来の目的は奏多たち勇者パーティを助けるためであり、収獲者と戦うことではない。

 だが、勇者パーティのことだ。合流し、ゾティークに迫る脅威を知れば、彼らは戦うことを選ぶだろう。

 それが何となく予想できたからこそ、秋雨はそう言ったのだった。

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