第119話
収獲者の襲撃を乗り切り、一先ずの平穏を取り戻した。
とは言え、冒険者、及び偶々訪れていた傭兵団たちにより警戒は続いていた。
現状、収獲者について多くの情報を握っているのは間違いなくアンネリーゼだ。
冒険者ギルドとしても情報を得たいこともあり、秋雨たちは情報交換を行っていた。
「改めて、金等級冒険者のレギオー・カークランドだ」
その流れのまま、レミネ、ルクス、パドルフ、その他の上級冒険者たちの自己紹介がされる。
秋雨、クロ、ルシアもそれぞれ名前を名乗り、アンネリーゼの番となる。
「惑星ユゴスの頂点捕食者、アンネリーゼ・ミィ・ゴだよぉ。よろしくねぇ、冒険者君たちぃ?」
張り詰めた空気の中にはそぐわない温度感と声音で名を名乗ったアンネリーゼに、秋雨以外の者たちが訝し気な表情を浮かべる。
「冒険者ギルド・スローファル支部の支部長、バスク・ロランと申す」
珍妙な空気を引き締めるように支部長のバスクが低い声で名乗った。
一通りの自己紹介を終え、本題へ入ることになるのだが、レギオーが挙手し、アンネリーゼへ問いを投げかけた。
「話の腰を折るようですまないが、嬢ちゃんが言った頂点捕食者とはなんだ?」
どうやらおおよその者たちが気になっていたようで、その問いを止める者はいない。
アンネリーゼは「ふーん?」と何やら楽しそうな表情を浮かべてから口を開く。
「どうしようかなぁ? 正直、答える義務はないよねぇ?」
「……アンネリーゼ」
「そんな怖い顔をしないでよぉ、秋雨君。冗談だよぉ」
ケラケラと笑うアンネリーゼを、秋雨はギロリと睨む。
二人の間に漂う剣呑な空気が、周囲の温度を著しく低下させるような錯覚を思わせるほど。
レギオーは内心で「なんでコイツらは一緒にこうどうしているんだ?」と疑問を抱くほどだった。
「ルクシャ・ハーナって名前は知ってるかなぁ?」
「…………ああ、帝国に力を貸している竜人だな」
眉間に皺を寄せながらレギオーは頷く。
他の者たちも、その名は知っている様子だ。
「簡単に言ってしまうと、私はそのルクシャ・ハーナと同類って感じだねぇ? その役割は人類に敵対し、人類の生命体としての強度を引き上げることって感じだねぇ」
人類と敵対——その言葉が室内に響き割った時、秋雨、クロ、ルシア以外の者たちの視線が鋭くなる。
が、当然ながらアンネリーゼは気にも留めない。
「そんなに警戒しなくても大丈夫だよぉ。事を起こす気は欠片も無いからねぇ。まあ、君たちがどうしてもって言うのなら、相手をしてあげるのもやぶさかじゃないねぇ」
「その言い分だと、俺たち全員を相手にしても問題ないと聞こえるな?」
レギオーはアンネリーゼに問う。
「事実、問題ないからねぇ。秋雨君くらいの実力者か、或いはまあ、レギオー君くらいの実力者が五十人くらい集まればワンチャンあるくらいじゃないかなぁ?」
レギオーはジッとアンネリーゼの顔を見つめる。
その間、アンネリーゼはジッとニコニコしながらレギオーを見ていた。
「止めだ止めだ。嬢ちゃん、アンタは化物が過ぎる。あの蜘蛛——収獲者って奴よりもヤバい臭いがする」
首を横に振りながら、多少大袈裟にレギオーは言う。
それにバスクが問う。
「この娘はそこまでなのか?」
「ああ、違いない。この嬢ちゃんがずば抜けてるよ。ああ、勿論だが、そこのシューウも大概だけどな」
レギオーの言葉により、この場にある目が秋雨へと向く。
「……買いかぶり過ぎだ」
「謙遜が過ぎるねぇ? 私を二度も凍らせた人の言葉とは思えないねぇ」
「余計なことを言うな」
秋雨は眉間を摘まみながら、溜息を吐いた。
レギオーが化物扱いしたアンネリーゼ。そんな化物を二度も倒したと言われた秋雨に、誰もが興味を持つ。
「ふぅ、俺が言い出したことではあるが、話が逸れ過ぎた。じゃ、本題に入ろう」
レギオーは表情を引き締める。
「シューウ、嬢ちゃん、収獲者とは何だ?」




