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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第四章

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103/127

第103話

 少年を庇うため、振り下ろされた剣を防いだ秋雨に、公爵の男は顔を真っ赤にして激怒する。


「私の決定に異議を唱える意味を、お前はわかっているのだろうな!」

「さあ? アンタのような傲慢な奴に異議を唱えたらどうなるんだ?」


 受け止めていた剣を押し返し、秋雨は少年の前に立つ。

 周囲の視線は秋雨に集中し、公爵の男と側近の者たちはそれぞれ剣を構える。


「どうして……」

「まあ、理不尽に対して目を逸らすほど終わってないだけだよ」


 驚きの声を溢す少年に対し、秋雨は呆れ口調で答える。


「——さて、このまま穏便に見逃してくれると助かるんだが、そこんところどうなんだ?」


 無理だろうな——と思いつつも、秋雨は公爵の男へと問う。

 当然、その答えは火を見るよりも明らかだった。


「見逃す寝言は寝て言え! お前はこの場で処断する。これは私の決定だ!」


 唾をまき散らしながら怒鳴り、喚き散らす公爵の男。

 側近の者たちと集団で攻めてしまえば、簡単に片付くとでも思っているのかもしれない。

 しかし、秋雨はそんなに弱くない。


「対多数ね。ま、手間が省けて返って助かるって感じだな」


 余裕綽々に秋雨がそんなことを言い放つこともあって、公爵の男の蟀谷に青筋が浮かんでいく。


「やれ! 徹底的に切り刻め!」


 そんな鶴の一声と共に、取り巻きの者たちが一斉に秋雨へと向かって来る。

 秋雨はジーっと観察しつつ、手に持った氷刃刀と体術を用いて全て難なく攻撃を捌いていく。

 一応は手加減し、氷刃刀の攻撃もすべて峰打ちで済ませる。

 が、一向に諦める素振りを見せないあたり、公爵の男への忠誠心には関心してしまうほどだった。


「何をやっているのだ! たったひとりのガキに時間を掛けている!」


 そんな怒鳴り声が響き渡る。

 このままダラダラと戦闘を続けることもできる。しかし、秋雨としてもそれは疲れるだけだ。

 故に、さっさと終わらせることにする。

 右手を空へと伸ばし、真っ直ぐに公爵の男を秋雨は睨みつける。


 水之業・陽型——水天球、変形・水串。


 秋雨の頭上に直径二メートル程度の水の球体が顕現し、数多の水の槍が側近らを貫いていく。

 急所はすべて避け、軽症で済ませる程度の場所を狙い、無力化していく。

 痛みで悶える側近たちを横目に、秋雨は公爵の男へ言葉を投げかける。


「さて、誰を処断するって?」


 やれやれと首を振りつつ、呆れ口調で紡がれた言葉。

 公爵の男はわなわなと震えながら叫ぶ。


「私はティムドラ帝国の公爵だぞ! 私の身に何かあれば、お前もただじゃ済まんぞ!」

「はあ……ぶっちゃけ、そんなこと知ったこっちゃないんだ。つーか、そろそろ終わらせても良いか?」


 ダン——と地を蹴る音を置き去りに、秋雨の姿は一瞬にして公爵の男の眼前に現れる。


「————は」

「とりあえず眠っとけ」


 秋雨は氷刃刀の束頭で鳩尾をぶん殴ると、強烈な痛みと衝撃により公爵の男は白目を剥いて気絶してしまった。


「ふぅ、さて——片付いたわけだが……お姉さんがどうこう言っていたな?」


 秋雨は少年へと視線を向けて問う。

 と、少年は声を荒げる。


「そうなんだ。その男が姉さんを————」


 その時だった。


「やっほー、秋雨君。今戻ったよぉ……って、早速暴れちゃったみたいだねぇ?」


 ネットリと絡みつくような声音が響く——アンネリーゼだ。

 声の方へと秋雨が顔を向けると、アンネリーゼとその脇に抱えられた少女の姿が在った。


「…………アンネリーゼ、その娘は誰だ?」

「彼女のこと? ちょっと旅の資金調達のために、脛に傷がありそうな相手を探している最中に見つけたんだよねぇ。連れ去られそうになっていたから、お金巻き上げるついでに助けて来ただけだねぇ」


 サラッととんでもないことを宣うアンネリーゼ。

 と、少年が目を丸くしていた。


「どうした?」


 秋雨が首を傾げながら問う。

 すると——、

 

「ね、姉ちゃん⁉」


 脇に抱えられている少女を見て、少年がそう叫んだ。

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