12.14 聖女の声(2)
大きさを整えた薪を互い違いに——いわゆる井桁状に——積み上げて、広場の中心には小山がそびえ、その頂上に拘束されたジャンヌが立っている。
小山の麓、積まれた薪の隙間には小枝や干し草が無造作に詰め込まれている。大きな薪はどれほど乾燥していても十分に熱が伝わらないと燃え始めないため、小枝や干し草が着火剤になる。
だから、火刑の始まりは、他の処刑方法に比べると地味で時間がかかる。
小さなものから大きなものへ、小山の麓から高みの頂点へ。
炎は火勢を強めながら少しずつのぼっていく。
途中で炎が消えてしまわないように、あるいは、周囲の建物に延焼しないように、死刑執行人は最善の注意を払って火刑の炎を調節する。火起こしの達人でも数十分から一時間はかかるだろう。
その間、火刑に処される者は、すべてを見下ろしながら待たなければならない。
「近すぎる!」
十字架を掲げている異端審問官に向かって、ジャンヌが叫んだ。
「もう少し離れて。僧服のすそに火がついたら危ないですよ!」
声をかけられた審問官は、足元の火の粉を払いのけ、あわてて後ずさりした。
そして、はたと気づいた。陰謀まみれの異端審問のせいで、今まさに燃やされようとしている邪悪な犠牲者が、聖なる加害者を気遣っているという現実を思い知らされたのだ。自己矛盾に陥ったのだろう、彼は激しく狼狽した。
「十字架を落とさないで!」
ジャンヌの方が、よっぽど落ち着いていた。
「あたしを少しでも哀れに思うなら、その十字架を最後まで見せてちょうだい」
「あ、ああ……!」
刃のない槍の穂先にくくりつけた十字架を取り落としそうになったが、審問官は本来の聖職を思い出して立ち直った。贖罪と祈りの言葉を吐きながら、ジャンヌの最後の願いを叶えるために、紅潮した顔を煤まみれにしながら十字架を掲げ続けた。
フランスにとってルーアンの町は敵地だが、死にゆくジャンヌを目撃して心を動かされた者は何人もいた。異端審問を主導した司教も例外ではなかった。
「そこの人、私より前に出たら危ないですよ。えっ……!」
十字架を掲げる聖職者は、近づいてきた人影に危険を知らせようとしたが、その顔を見て驚きの声を上げた。最初の判決と同じく、貴賓席から高みの見物を決め込んでいるはずの人物が、危険を冒して降りてきたのだ。
「哀れな少女よ」
ボーヴェ司教のピエール・コーションは、火刑台上のジャンヌに向かって最後の戦いを挑んだ。
「これでよく分かっただろう? 誰もおまえを助けにこない。どこにも逃げられずに炎に焼かれてここで死ぬ。王を自称するシャルルに裏切られ、見捨てられた……。そうだとも、シャルルを信じたせいでおまえは死ぬのだ!!」
司教はおそらく、ジャンヌが死の恐怖から「王は助けてくれなかった、自分は見捨てられた」と考えて非難することを期待したのだろう。
もっと言えば、異端審問の時からずっと「ジャンヌの口からシャルル七世を貶める証言を引き出す」ことが最大の目的だったのかもしれない。
火刑が執行され、ジャンヌが燃え尽きたら目的を果たせない。
言葉を引き出すなら最後のチャンスだった。
しかも、集まった野次馬たち全員が証言者になる。宣伝効果は抜群だ。
だから、司教は危険を冒して燃え盛る火刑台に近づき、恐怖を煽って、思い通りの言葉を吐かせようと試みた。しかし、ジャンヌはまたもや反論した。
「違います。あたしはあなたのせいで死ぬんです!」
そのとき、炎の舌が伸びてジャンヌの足を舐めた。
ジャンヌは反射的に悲鳴を上げた。
足首まで杭に縛りつけられ、動けない体を震わせて「水を!」と叫んだ。
それは明らかに恐怖の叫びだ。炎を鎮める水であれ、熱を冷やす水であれ、ジャンヌには聖水が必要だったが、神は何も与えなかった。
炎の責め具は、犠牲者の痛覚に確実にダメージを与えた。
平常時に取り繕っていた理性や建前がどんどん剥がれ落ち、その人の生来の本質——いわば、魂の本性が暴かれていく。
「あぁ……、神様……、イエス様……」
けぶる十字架を見つめながら、うわごとのように神の名を呼んだ。
ピエール・コーションは前屈みで、朦朧と揺らめくジャンヌを凝視していた。
異端審問を主導した司教にとって、ジャンヌの火あぶりは陰謀を締めくくる最大のクライマックスだったに違いない。
「あたしは……、今夜どこにいるんだろう……」
「知らないのかね? 間違いなく神の御許だ」
「ああ、そうでしたね……」
ついに司教の望みが叶うかに見えたが、ジャンヌは再び立ち直ると、
「あたしは今夜、司教さまがしたことを神様に訴えますからね……!」
きっぱりと告げた。
「あたしがやったことが正しくても、正しくなくても、それは王様には何の関係もない。いい? 王様がやれと命じたんじゃないの……。あたしが……、自分の意思で……! やりたいことをしただけよ……!!」
多数の目撃者の前で、ボーヴェ司教ピエール・コーションの野望が完全に打ち砕かれた瞬間だった。





