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7番目のシャルル、聖女と亡霊の声  作者: しんの(C.Clarté)
第十二章〈二人のジャンヌの死〉編

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12.9 処刑人(3)職務と良心のはざまで

 この男は、いかにも死刑執行人らしい粗野な見た目をしているが、職務と良心のはざまで葛藤する理性と、ままならないこの世界に対する諦観を持ち合わせている。


 私は少し前の自分自身を重ねて、共感と哀れみを感じた。


 ブルゴーニュ公の父・無怖公と、ベッドフォード公の兄ヘンリー五世の報復として、私の命と引き換えに平和が訪れるなら——と考えて、オルレアンで再会したリッシュモンに「殺してくれないか」と頼んだ。


 理性と諦観がまざった投げやりな気分と、相手を試す下心もあったかもしれない。


 身近なところに死が多すぎると、人命に対する価値観がおかしくなる。

 ある者は、死を悼む感覚を失い、またある者は、自分の命さえも軽く扱うようになる。理不尽な死を何度も見送るうちに、生きている自分自身に疑問と罪悪感を抱き、誰かに裁かれたいと願うのかもしれない。


 リッシュモンは、私の誘惑には乗らなかった。ぞっとするほど昏い目で見下ろし、馬乗りになって私の首に手を伸ばしたが——、結局殺さなかった。


 目の前にいる死刑執行人の気持ちに共感すると同時に、あの日のリッシュモンの心境が少しわかった気がする。私もリッシュモンも、死刑執行人でさえ、本心では誰かの死に荷担などしたくない。


 ラ・イルに「やんのか?」と聞かれて、首を横に振った。


「八つ当たりで命を奪うほど、私は落ちぶれていない」


 死刑執行人は、寒風が吹き込む裏口の扉を閉めながら「それはベッドフォード公への当て付けか?」と自嘲気味に笑った。


「人の行いを裁くか赦すか、それを決めるのは神だけだ」

「司祭みたいなことを言う」

「一応、司祭の資格を持っている」

「へえ。もっとも、俺の知っている司祭、特に異端審問官は人に《《罪を着せて裁く》》のが仕事だがね」


 含みのある言い方だ。

 やはりジャンヌは理不尽な罪で処刑を宣告されたのだろう。


「……罪の意識があるなら、知っていることを教えて欲しい」

「大したことは何も知らない」

「どんな小さなことでもいい。手がかりが欲しい」

「手がかりって……。あんたはあの娘が生きているとでも思っているのか?」


 返事を待たずに、死刑執行人は閉めた扉にもたれかかって一方的に話し始めた。


「俺があの娘に会ったのは2回。最初の判決と、二度目の異端で処刑されたときだ」


 異端審問が始まってから三ヶ月後の5月24日。

 ルーアンの町の中央にある広場に処刑台が設置された。


 高みの観客席には、異端審問を主導したボーヴェ司教のピエール・コーションをはじめとする聖職者たちと、町を統括するイングランド軍の重臣ウォリック伯などが着座し、最後の演説と判決を見守っている。


 処刑台と観客席の周りは簡素な柵で二重に囲まれて、槍を持った役人たちが野次馬の動向に目を光らせている。集まった野次馬の大半は、これから始まる「少女の吊し上げ」を暇つぶしに最適な見世物だと思っているが、中には罪人を取り戻そうとする者が現れないとも限らない。実際、ラ・イルの潜入が成功していたら、この日はジャンヌを奪還する絶好のチャンスだった。


 教会が管轄する大塔から、手枷をつけたジャンヌ・ラ・ピュセルが連れて来られ、舞台は整った。


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