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7番目のシャルル、聖女と亡霊の声  作者: しんの(C.Clarté)
第十二章〈二人のジャンヌの死〉編

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12.1 デュノワの提案(1)ベリー公の特別な衣装

 私が王家の末王子として生まれたときに授かった称号はポンティユ伯のみだが、14歳で王太子になったときに箔付けのためかベリー公に叙任された。


 先代のベリー公は、祖父シャルル六世の弟——つまり私の大叔父——で、後継者に恵まれなかったので死後に王領に編入され、その後、私が称号と財産を受け継いだ。


 王太子兼ベリー公になったばかりの頃、財産目録を整理していたら一風変わった品を見つけた。


「秘密のパーティーで着るために特別に注文した衣装?」

「はい! それでですね……」


 私は生まれつき《《痩せぎす》》な体格で、性格も容姿もかなり地味だったので、侍従長のデュノワは「ベリー公の服を王太子のサイズに合わせて仕立て直しましょう」と提案した。


 デュノワは、私が若すぎることと華奢な見た目のせいで、他の貴族に舐められる状況を不満に思っていた。


 亡きベリー公は、裕福な遊び人として知られていた。私たちの大叔父がパーティー用にわざわざ特注した衣装と聞いて、さぞかし豪華な仕立てに違いないと思ったのだ。


 着こなしが悪かったり、同じ服を何度も着まわしていると見くびられることもある。宮廷費を無駄遣いすることはできないが、良質の衣装は何着あってもいい。


「では、現物を見てみようか」


 厳重に保管されていた衣装箱を開けて、私たちは絶句した。


「こ、これは一体……」

「本当に『服』なのか?」


 デュノワがおそるおそるつまみ上げた布切れは、一言で言えば卑猥だった。

 隠すべきところにあるはずの布地がなく、こんなものを着用したらどこもかしこもあそこも露わになってしまう。


「次のパーティーで着ますか?」

「着ないよ!!」


 私は即座に全力で拒否した。


「ですよねー」

「こんな恥ずかしいものが、本当にベリー公の特注衣装なのかな?」

「もしかして、ネズミにかじられたとか?」

「それだ! それしか考えられない!」


 私もデュノワもまだ子供で、大人の遊びに関する知識に乏しく、ネズミのしわざだと無理やり結論づけたが、のちに知った話によると、ベリー公が同性愛を楽しむために作らせた特注品だそうだ。後継者に恵まれなかったという事情も、それでなんとなく察しがついた。


「変なこと、思い出しちゃったな」


 帰国の途上で、リッシュモンも子供がいないことを思い出した。

 デリケートな話題だから、家臣の夫婦生活や子作りについて詮索することは控えている。だが、先日の思いがけない再会で、長年秘めていた想いを告白されたせいか、ベリー公の秘密と結びつけて納得してしまった。


 リッシュモンは、タブーを犯して遊んでいる風には見えない。

 厳格な性格ゆえに、むしろ苦悩するタイプではないか? ジャンヌに指摘されるまでずっと誰にも言えずに葛藤していたのだろうか。一体いつから?

 なんにせよ、あの不器用でまじめな人物を、一方的にからかったり中傷したり断罪したくはない。


 このことを誰かに相談することもできず、つい悶々と考えてしまう。


「他にも問題が山積しているのに、私は何をやってるんだろうな」


 ふと、あのとき見てしまった秘密の特注衣装とリッシュモン、あるいは私の姿を思い浮かべそうになって、慌てて想像を打ち消した。


(※)ベリー公の財産目録に記されている特注衣装(同性愛を楽しむための服)は、中世ヨーロッパの服飾に関する資料を読んでいたときに見つけました。


もし、若きシャルル七世(王太子)が現物を見つけたらどんな反応するかなーと思ったものの、本作では王太子時代がすぎていたのでお蔵入りしてましたが、今回みごとに復活しました。

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