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QUEEN BEE  作者: 鰐淵 荒鷹
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第74話:隠れる慈愛

 如月は一之進と並んで、森の小道を歩いていた。朝露を含んだ木々の葉が、微かな風に揺れて光を散らす。


 水の入ったリュックは一之進が代わりに持っていてくれた。


『女性にこんな思い物を待たせては歩けないよ』


 一之進の女性に対するケアを感じながら二人は歩いている。


 木漏れ日が、まだ湿り気を帯びた落ち葉の絨毯に斑模様を描き、二人の影を淡く染めていく。


 ときおり梢の上で野鳥が鳴き、羽音が枝葉を震わせた。そのたびに、森全体が生きて呼吸しているような気配を放つ。


 深く吸い込んだ空気は澄み切っていて、土と苔と樹皮の匂いが混じり合い、どこか懐かしさを帯びていた。


 長く都市の喧噪の中で暮らしてきた如月にとって、それはほとんど忘れかけていた“自然の音”だった。


 足裏に感じるわずかな起伏、踏みしめるたびに鳴る湿った葉の音が、無言の会話のように続く。


 一之進はそんな静寂を楽しむかのように、ゆったりとした歩調で歩きながら口を開いた。


「如月君。君はプロレス以外の格闘技には興味はないのかね?」


 唐突に放たれた問い。


 穏やかな声色だったが、その響きの奥には、力士としての鋭い観察眼と試すような響きが潜んでいた。


 如月は一瞬、足を止めかけた。言葉を探そうとしても、喉の奥で引っかかる。森の風が頬を撫でていくが、答えは出てこない。


 ――なぜなら、如月の生活のすべてが、これまでプロレスと共にあったからだ。


 寝ても、覚めても考えるのは技と構成、試合の流れ。


 勝敗の裏にある“物語”までも含めて、それが自分の生きる場所であり、呼吸そのものだった。


 如月はほんのわずかに俯き、土の上に伸びる自分の影を見つめた。揺れる木漏れ日がその輪郭を曖昧にし、風にざわめく枝葉の影が重なっていく。


 その黒い影は、長年リングの光の下で戦ってきた自分の“もう1つの姿”のように見えた。


 ――今さら、他の道に心変わりするつもりなどない。


 リングの上こそが自分の居場所であり、呼吸の仕方も、立ち方も、そこで覚えた。その世界から離れるということは、もはや「別の生き方を選ぶ」というより、「自分の死に方を変える」に等しい。


 だが、思い返せば英二だった頃――。


 まだ熱と血にまみれた青春の只中、他団体からの挑発を受け、総合ルールの舞台に参戦したことがあった。


 ルールや距離も違う世界で、肌を合わせたときに感じた“異質の圧力”はいまも忘れられない。


 それでも結果は悪くなく、むしろ好成績を残した。


 観客の歓声が渦を巻く中で、拳を突き上げた瞬間――「闘いの根は同じだ」と確信した。


 他の格闘技に興味がない、と断言するつもりはない。技の体系や呼吸法、立ち合いの間合い――学ぶべきものは山ほどある。


 けれど、如月の胸には1つだけ譲れぬものがあった。


 ――師匠との誓い。


 あの人と交わした約束を、裏切ることはできない。リングに生き、リングに果てる。その思いが、胸の奥深くに静かに根を張り、今も燃え続けている。


 一之進は、そんな如月の沈黙を察してか、ふっと笑みをこぼしながら言葉を続けた。


「実はね、私が理事をやっている“なでしこ角力”の興行は、基本的にプロレスと同じで、一興行に一取り組みが原則なんだが……」


 その声音には、構想を語る者特有の高揚と愉悦が混じっていた。彼は両手を軽くリュックのショルダーハーネスに掛けながら、ゆっくりと歩きながら語る。


 風に揺れる木々を眺めるその横顔は、どこか少年のようにも見えた。


 どうやら、一之進の中ではすでに新たな構想が形を成しているらしい。


 ――なでしこ女子 桜華伝承花麗おうかでんしょうはなうらら


 その名を口にした瞬間、言葉の響きに宿る美と力が、森の空気をわずかに震わせた。


 現在、なでしこ角力協会に所属する女性力士たちは、大相撲と同じ番付制で取り組みを行っている。


 だが、一之進はその伝統をあえて排除しようとしていた。


 十五日間にわたる総当たり戦。


 番付という枠を捨て、実力のみで頂点を決める新形式。そして――。


 ギフト保持者による参戦。


 土俵の上でギフターとノンギフター達が同じ土俵でしのぎを削って戦う舞台。


 それは、古き形式の延長ではなく、“女性力士たちの新たな闘いの花”を咲かせるための挑戦だった。


 語る一之進の横顔には、静かな炎のようなものが宿っていた。


 それは、長く伝統に身を置いてきた者だけが抱く、誇りと諦念、そして未来への渇望の入り混じった光だった。


 彼の瞳は遠く、木々の向こうに見えない土俵を見据えているようだった。


「君が参戦してくれると、きっと盛り上がると思ってね。もちろん本田社長にも、私が直々にお願いへ行くつもりだよ」


 言葉の調子は穏やかだったが、その響きには、確かな信頼と期待が込められていた。


 如月は返す言葉を探しながら、思わず目を伏せる。いつの間にか、話は大きな方向へと進んでいた。それが名誉な誘いだとわかっていても、心のどこかに小さなざわめきが生まれた。


 ――自分は、そこに立つべき人間ではない。


 胸の奥にそんな答えがかすかに響いた。そして如月は、そのざわめきを振り払うように、静かに口を開いた。


「すみません横綱……自分は、リングの上で研美先輩と立ち合いたい気持ちの方が強いです……」


 一之進はその言葉に、わずかに目を細め、深く息を吐いた。


 吐息が白く混じり、秋の森の冷たい空気に溶けていく。彼はしばらく何も言わず、遠くを見つめてから、神妙な面持ちで口を開いた。


「そうか……君も娘と同じ意見か。ただ……」


 その“ただ”の一言に、含みのある重さがあった。言葉の続きを飲み込むように、彼は口を閉ざす。


 如月がその表情をうかがうと、瞳の奥にわずかな陰り――それも、父としての痛みのような色が見えた。


 歯切れの悪い言葉。


 その奥に、誰にも言えない事情があることを如月は察した。


 それ以上語らないのを感じ取り、申し訳なさを覚えながら、ただ黙々と歩を進めた。


 落ち葉を踏む音だけが、二人の間に淡く響いた。沈黙は、重苦しいものではなく、互いの呼吸を確かめるような静けさだった。


 やがて、一之進がぽつりと口を開いた。


「うちの娘……親の私が言うのもなんだが、容姿端麗で、東西に並ぶ者なし。そんな佳人だと、私は誇りに思うのだが……」


 声の調子は穏やかだったが、どこか遠くを懐かしむような響きがあった。


 踏ん切りのつかない表情で、淡々と語る声には、父としての誇りと苦みがにじんでいた。


「リングの上で、強者と対峙したとき――あの慈悲の無さが、親としてはどうにも見るに堪えなくてね……」


 その言葉を聞いた瞬間、如月は少し息を呑んだ。言葉にできない温度の揺らぎが、空気の中に滲んだ。


 普段の研美は気っ風が良く、誰からも慕われる存在だ。


 如月は暇さえあれば、Queen Beeの資料室にあるライブラリーで試合映像を見ている。こちらの情報がないため、少しでも馴染もうとしているのだが、それ以上に単純にプロレスが好きだからだ。


 その映像には、Queen Beeのリングに立つ研美の姿もあった。膂力を生かした力強い試合運びと、正々堂々と相手に向き合う姿勢――そこには研美という人間がそのままに現れていた。


 だが、一之進の言葉の奥には、それだけでは済まない何かがあるように思えた。


 それは、父が娘の才能を誇るがゆえに、同時に恐れているもの――。


 その“慈悲の無さ”の奥に潜む、もっと深い何か。如月は言葉を失い、ただ風に揺れる木々の音を聞いていた。


 その表情には、横綱としての威厳ではなく、一人の娘を案じる父親の顔があった。


 長年、数多の弟弟子を見てきた者の目ではなく、ただ一人の娘を思う父親の目。その優しさと脆さが、静かな陽の中で滲んで見えた。


 如月は胸の内で問いを重ねる。


 ――研美先輩に、何かあるのか?


 その疑念は、風に揺れる枝の影のように、心の奥で静かに揺れ続けた。一之進の声の端々に、言葉にしない何かが確かに混じっていた。


 それは、過去の傷か、恐れか――如月にはわからなかったが、ただならぬ重みを感じた。


 一之進はふと立ち止まり、森の奥に視線を向けた。何かを振り切るように、両の掌を高く掲げて――。


 バシィンッ!


 鋭い柏手が森を裂く。


 乾いた音が四方へと反響し、木々の梢が一瞬、風を忘れた。野鳥の声が途絶え、代わりに無数の羽ばたきが枝葉を震わせた。


 木漏れ日の粒が、細かな塵とともに空中で揺れ、時間そのものが止まったようだった。


 その場にいた如月も、思わず呼吸を止めた。


 一之進の掌から放たれた音には、どこか“祈り”のような響きがあった。


 何かを祓うのか、それとも自らを戒めるのか――判断のつかない、不思議な気配が漂っていた。


「いや、ごめんね如月君。変なことを言って困らせてしまったみたいだね」


 一之進は気まずさを隠すように笑った。


 その笑顔はいつもの朗らかさを装っていたが、目尻にはかすかな悲しさが見えた。如月は一拍置いて、小さく首を振る。


「いえ……」


 その声は、森の静寂に吸い込まれていった。ふと、遠くの方で風が木々の隙間を抜け、葉がさわさわと鳴った。


(……研美先輩、なにかあるのかもしれないな……)


 胸の奥でそんな思いが小さく灯る。不安ではなく、確かめなければならないという予感に近かった。


 やがて、木々の間から施設の屋根が見えてきた。


 風に乗って、料理の香ばしい匂いがかすかに漂ってくる。緊張していた空気が、少しずつ現実へと戻っていく。


 近づくにつれて、にぎやかな声が耳に届いた。


 先に戻っているカナレ、十見子、そして料理を作るため残った研美――それに混じって、聞き覚えのある別の声があった。


 笑い声、叫び声、そしてどこか慌ただしい気配。森の静けさに慣れた耳には、それがまるで別の世界の音のように感じられた。


 如月は足を止め、わずかに顔を上げた。次の瞬間、彼女の瞳には、静と動が交わる――新たな場面の光が映っていた。


 参道を抜けると、視界がぱっと開けた。


 木々の緑が途切れ、そこには木造の施設の正面玄関が現れた。その前に、銀色のSUVが止まっている。


 エンジンの余熱がまだ残っているのか、ボンネットがじんわりと陽光を反射していた。


 車の近くには島村、望月、そしてSAKEBIの姿が見える。


 皆、どこか浮き足立ったように、騒ぎの中心を囲んでいた。その中央――斎藤の姿もあった。


 よく見ると、カナレが斎藤に詰め寄っていた。両手をばたばたと振り回しながら、声を張り上げている。


 その身振りは怒りというよりも、半ば呆れと恐怖が入り混じったような勢いだった。


「もうちょっとで食われるところだったんだぞ!」


 カナレが、いつになく真剣な声でまくし立てる。顔は真っ赤、眉間にシワを寄せ、全身で訴えていた。


 その迫力に押されるように、斎藤は普段の豪胆さが嘘のように、困った顔で頭を下げている。


「……すまん……」


 低く掠れた声。


 斎藤は視線を泳がせながら、申し訳なさそうに後頭部をかいた。その姿は、あの厳格な鬼コーチとはまるで別人だった。


 立腹するカナレと謝る斎藤――その構図が、如月にはどこか奇妙に映った。


 普段なら叱られる側はカナレの方だ。


 だが今、立場は完全に逆転している。


 そんな斎藤の狼狽ぶりを見て、如月は思わず駆け寄った。カナレの肩を軽く叩き、落ち着かせるように声をかける。


「どうしたんだ?そんなに怒って?」


 カナレはぷいと横を向き、頬をぷくりと膨らませた。


 唇をきゅっと結び、まるで子どものように不機嫌を隠そうともしない。その姿に、如月は思わず苦笑した。


 その間に、少し離れた場所から研美が静かに口を開いた。彼女の声は、空気をなだめるような柔らかさを帯びていた。


「熊さんとのじゃれ合いの件で、カナレが怒ってるんだよ……」


 研美の言葉に、如月は「ああ」と納得したように息を吐いた。思い返せば、これまでも斎藤の理不尽な特訓には事欠かなかった。


 だが今回は違う――冗談では済まされない、命に関わる危険があったからだ。カナレが本気で怒るのも、無理はない。


 しかし、それにしても。


 あまりにもしおらしい斎藤の姿が、逆に見ていられないほど痛々しかった。


 あの豪胆で怖いもの知らずの彼女が、まるで叱られた子どものように肩をすくめている。広い背中が小さく見えた。


 その様子を見かねたのか、研美が一歩前へ出た。足取りは静かで、声には柔らかさがあったが、瞳の奥は真っすぐだった。


「カナレ……斎藤コーチも思うことがあったんだから……」


 静かな声が空気を震わせた。


 その瞬間、風が通り抜け、場の緊張をほんの少しだけ和らげる。木々の葉がさわさわと鳴り、どこか遠くで鳥が鳴いた。


 だが、カナレはツンとしたまま動かない。両腕を組み、顔を背け、頬を膨らませたまま。誰とも目を合わせようとしない。


 その沈黙の中で、トラックのエンジン音だけが小気味よく響いている。空気が揺れず、時間だけが静かに流れていった。


 そのときだった。


 場の空気を読むように、一之進がゆっくりと歩み寄ってきた。大きな体をわずかに前傾させ、穏やかな声で口を開く。


「カナレ君。よかったら、もう一度うちの娘とぶつかり稽古をしてみたまえ。そうすれば、斎藤さんの真意が理解できると思うよ」


 その声音は、諭すでもない。ただ、長い経験を持つ者だけが出せる“信頼の響き”だった。


 その言葉が空気を満たすと、緊張で張りつめていた場の温度がゆっくりと下がっていく。


 カナレはわずかに目を見開いた。


 一之進と斎藤の顔を交互に見て、言葉を探すように唇を動かす。


 だが、結局何も言わず、渋々といった様子でコクリとうなずいた。


 その仕草には、まだ小さな棘が残っていたが――それでも一歩、前に進む意志が感じられた。


 普段は単純で明るい彼女が、ここまで頑なのは珍しい。如月はその姿を見ながら、胸の中で静かに呟いた。


(……よっぽど怖かったんだろうな)


 一之進の促しで、全員が稽古場に集まった。


 朝の陽射しはすでに高く昇り、障子越しに差し込む光が白く澄んで畳の上に落ちていた。


 山道を歩いてきた余韻がまだ体に残っており、ほんのりとした疲労と汗の匂いが空気に混じっている。


 外からは、森を抜ける風の音と、近くで鳴く鳥の声が重なり合う。午前の静けさの中に、これから始まる稽古への緊張がゆっくりと漂っていた。


「よし!カナレ、おいで!」


 研美の凛とした声が稽古場に響く。その声に応えるように、カナレはゆっくりと一歩を踏み出し、土俵に上がった。


 裸足で踏みしめる砂の感触が、生き物のように柔らかく沈む。観る者の視線が集中し、空気が少し重くなった。


 カナレは深呼吸をひとつして、仕切りの体勢に入る。その姿を、斎藤が真剣な面持ちで見つめていた。


 額に刻まれた皺が深くなり、手は無意識に拳を握りしめている。まるで、自分自身が土俵に上がるかのような緊張が、その背中から伝わった。


 そして――。


 カナレは、電光石火の勢いで地を蹴った。砂が爆ぜるように舞い上がり、一直線に研美の胸めがけて突進する。


 その瞬間、周囲の空気が一気に張りつめた。


 バシィッ!


 乾いた音が稽古場に響き渡った。それはまるで雷鳴のように、空間の隅々まで震わせる音だった。


 研美の身体が、ほんのわずかに下がる。そのたった数センチの後退に、見ていた全員が息を呑んだ。


 十見子と如月が「おぉ!?」と声を上げ、横で見ていた斎藤が思わず拳を握り締めた。


「よし!」


 その短い声には、歓喜と安堵、そして誇りが詰まっていた。


 カナレは何が起こったのかわからず、押し出すのを忘れて顔を上げた。目の前には、穏やかな笑みを浮かべた研美が立っている。


 彼女の胸の前には、確かな衝撃の跡が残っていた。


「これが、斎藤コーチの答えだよ」


 その言葉は、ただ真実を告げる声だった。カナレの瞳に、一瞬で理解の光が宿る。


 森での一件――あの地は、ギフトと体のバランス整える。斎藤は、ただそれを確かめさせたかった。


 稽古場に流れる空気が、ふっと柔らかく変わった。張りつめていた緊張がほどけ、光の粒が白く舞っている。


 カナレはそのことをようやく理解したように、ゆっくりと両拳を握りしめた。その動きは、感謝にも似た静けさを帯びていた。


 稽古場に流れる空気が、ふっと柔らかく変わった。


 先ほどまで張りつめていた緊張がほどけ、畳の上に立つ全員の肩の力がゆるむ。光の粒が障子越しに差し込み、砂埃のように舞う空気を金色に染めていた。


 その穏やかな余韻の中で、研美が口を開いた。


「如月と組んで、随分とギフトをコントロールできるようにはなったけど、今までのツケが体に溜まって、本来の力が出せなかったんだよ」


 言葉の端々には、仲間を思う温かさと、長く背負ってきた痛みのような響きが混じっていた。


 その声を聞きながら、カナレは静かにうなずいた。リングに上がるたび、ギフトを使いこなすことばかりを考え、いつしか自分の肉体そのものの感覚が鈍っていった――。


 その言葉が、まるで心の奥を見透かされたようで、胸の奥に沁みた。


 彼女は自分の両拳をぎゅっと握りしめ、見つめた。拳の中で、小さく熱がこもる。それは悔しさでもあり、もう一度強くなれるという確信でもあった。


 そのとき、空気を切り替えるように、一之進が声を上げた。


「よ~し!それじゃあ、みんな飯にするか!」


 低くも朗らかな声が稽古場に響いた瞬間、場の空気が一変する。張りつめていた緊張が解け、全員の表情が一気に和らいだ。


 「待ってました!」とばかりに歓声が上がり、笑い声が重なっていく。外の光までもが少し明るく感じられた。


 斎藤も、安堵の息をつくように笑みを浮かべた。その笑みは、いつもの厳格な教官の顔ではなく、見守ってきた選手たちを誇らしく見つめる、優しい女性の顔だった。


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