第24話
「魔獣に新種が発見されました」
先日イレギュラーが起こった際に集められた会議室にまたも呼び出された。来られる魔法少女は全員に、職員も大半はいるだろう。今回は前回のように怒声が飛び交っているわけではないが、同じように大人たちの顔色は悪い。
理由はわかる。私も先日テレビの生中継でこれを知った時は驚愕した。あと単純に、遠目で見てもあれはなかなか気持ちが悪い。
「こちらをご覧ください」
そういった明坂さんの後ろにあるモニターにとある画像が映る。
それは団地内にある公園だろう。子供たちはおらず、彼らの日常を彩っていたであろうブランコや滑り台などの遊具は無残にも破壊されていた。
破壊された遊具には、何かに強く蹴られたような跡や大きな生物に噛みつかれたような跡がある。
これまでと違うのは、それが歯ではないとわかる事。もっと大きく、そして凶悪な顎によって噛まれたとみるだけで分かる。
そして画像の中心には、それを成した仕立て人が2匹映っていた。
「こちらの画像の中心に映っているものは──バッタだと思われます」
それは太陽を反射し光沢を纏った緑色の跳躍者。後ろ脚を弓の弦を引くように力を貯め、いまにもうこちらへ飛び込んできそうな躍動感を持ち、大人の頭ほどもある大きな複眼には、破壊された公園の光景がすべて映り込んでいる。
そう、大人の頭ほどもある大きな複眼だ。このバッタは非常に大きい。全長5mはおそらく超えているだろう。
それが2匹。
「こちらに映っているバッタは魔力を持ち、魔法少女以外に干渉を許しません。それは魔獣と同じ特性です。故に我々は、見た目から今後も現れるであろう魔力を持ち虫の姿を模した生物を『魔虫』と呼称し、対策を講じていくこととなります。なおこちらの魔虫は熊本県で発見されたものになりますが、既に討伐されています」
魔獣という脅威が終わらない中、新たに脅威をもたらすことになるであろう魔虫。これは魔獣と同じく魔力をもつものでありながら、魔獣とは違う部分がある。
それは巨大化していること。発見された事例がこの一件しかないので確定はできないが、その姿は元の虫を何十倍にもしている。
魔獣の場合はそのようなことはない。個体差はあれど、元の姿を模した生物とほとんど変わらない大きさをしている。先日戦った狼の魔獣も、これまで発見された例では最小で1m、最大で1.5mと言ったところだった。
ただこれは悪いことともいえない。大きくなり戦闘力は上がっているだろう。それに単純に被害も増える。大きいとはそれだけで強みだ。あと見た目が気持ち悪い。口内が見えたら小学生は泣きそう。
でも考えてみてほしいのだが、元の姿のまま魔力を持っていたら酷いことにならないか?都会ならいい。緑色が少なくて虫の色は目立つ。踏みつければ簡単に倒すことができるだろう。
だが田舎で現れたら絶望だ。緑が多く虫にとっての保護色。対処する以前にまずどこにいるかわからないという状況に陥ってしまう。
それでいて魔法少女以外は対処できないのだから、どれほどの被害が出るかわからない。隙間から家の中に入れば、そこの住民はなすすべなく殺されるだろう。
「現状この一件以来魔虫の発見報告はありませんが、前例ができた以上2度目がないという保証はありません。魔虫に関して詳しいことがわかるまで、もし魔虫が現れた場合はその魔虫の等級に関わらず倍以上の人員で対処に当たることとします」
魔獣と戦う時は、今まで等級がE級なら魔法少女2人、D級なら5人、C級なら20人、B級からは跳ね上がって50人、A級は測定不能といった感じでやっていた。
これに魔虫限定で倍以上の人員にするということは、最低でもE級なら魔法少女4人、D級なら10人、C級なら40人、B級からは100人、ということになる。
これはさらに人が足りなくなるぞ。比較的人の多い東京ですらこのありさまなのだから地方なんてどうなるのやら。命には代えられないのだろうけど。




