表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女という年ではない。  作者: あるにゃとら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/33

第23話

「お忘れだと思いますので改めて伝えておきます。魔法少女名を考えてください」


 とは、先日本部で訓練帰りに明坂さんに言われた言葉である。

 私もすっかり忘れていたが、私はまだ名前がなかったのだ。


言い訳をするなら、ここ数日は忙しすぎた。新たにスマホを買い替える手続きをして、魔法の訓練をして、高校に来て勉強して疲れて寝てと毎日大変なのだ。

 あ、あと放課後はみんなでゲーセンに行ったりパフェを食べたりしていた。結構余裕あるか。

 

 あ、魔法の訓練は最近もはや魔法の訓練ではなくなっている。私は本当に魔法が使えないようだ。科学的な知識が邪魔をして魔力が魔法にならない。

 なので私が行っているのはひたすら体力をつけることと拳のキレをよくするための正拳突きだ。魔法が使えないならこの身一つで何とかするしかあるまい。


 明坂さんにも一つ頼んで、近接格闘術の講師を呼べないかと聞いている。数日後には自衛隊の方から近接格闘のプロがやってきて、私をぼこぼこにしながら教えてくれるそうだ。顔だけは殴らないでほしい。


 閑話休題。そんなわけで私は魔法少女名を考えなければならないわけだが、これがなかなか難しい。単純に思いつかない。

 オーソドックスなのは花の名前や自分の名前そのままらしいが、どちらもピンとこないのだ。AIに聞いても数年前に放送されていたプリ〇ュアの名前をそのまま出してきて使えないし。


 これは私一人では無理だということで、本日教室を借りての学習会がひと段落着いた休憩時間にクラスメイトに相談してみた。流石に全員は集まらなかったものの20人入るので、何か一つくらいはいい案をくれるだろう。


 ちなみに他の魔法少女に相談しなかったのは年が離れているからだ。ちょっと感性が違い過ぎる。魔法少女が可愛いというものは私にはきつかった。

 気持ちの問題でしかないが、今後ついてくる名前なのだから私自身も大切にできる名前にしたい。


「という事なんだけど、何かいい案はありますか」

「むずい」

「素手で戦うんだしホウケンとかどうだ?崩れる拳。『崩壊』を2回も出してたし」

「女子っぽくな~い」


 さすがに無茶ぶりが過ぎたようだ。ただでさえ勉強で頭を使った後に頭を使わせているせいで、疲労がたたり何人かが崩れ落ちている。


「何でもいいから、何かしらのインスピレーションが欲しい」

「つってもな」

「アニメとかからもらえば?」

「それ権利大丈夫?」

「アニメがだめなら漫画……もダメか」

「権利関係があやふやなものならいいんじゃないか?桃太郎とかの昔話とか、後はドイツかフランスだかのグリム童話。それに神話か」

「あ、確かにそれならあやふやでいいかも」


 なるほど、昔話。確かにそれなら権利なんてないし、多くの人に知られていて名前を聞いただけでイメージされやすい。

 それに昔ばなしならあんまりにも派手な名前とかもないだろうしね。流石に桃太郎とかは断るけど。魔法少女らしくない。


「神話はまずいんじゃない?日本ではないけど、海外の宗教関係の組織が魔法が出てきてから過激になってテロとか起こすようになったって」

「あ、そういえばそうだった。そういえば魔法少女にも神話から名前を取った子はいないな。じゃあ神話はなしだ」


 あー宗教関係ね。確かにそれはまずい。日本ではそもそもファンタジーが広く知られていたり特定の神を信仰しているわけではなかったりと特に影響はなかったが、海外は魔法少女が現れてから大分荒れたらしい。


 なんせ使うのが魔力と魔法だからね。魔なる力と魔なる法。神を信じる宗教関係者はそれはもう暴れに暴れた。

 今ではお偉いさんが無理やり鎮圧して多少大人しくしているが、それでも過激な人間は結構な頻度でテロを起こしたり、魔法少女に危害を加えようと魔獣と戦った後の魔法少女に攻撃を仕掛けたりしている。


「あ、それならちょっと考えているのがあるんですけど……」

「教えてほしい」

「は、はい……」


 案があると伝えてくれたのはこのクラスの委員長こと赤井聖奈さんだ。あまり自己主張しない気弱な子で、私と話すのは記憶が正しければこれで2回目。1回目は学習会に誘う時である。


「そのヴィーラというのはどうでしょう?」

「ヴィーラ?」


 初めて聞く名前だ。恐らく私以外も初めて聞く人が大半なようで、合点がいったという表情をしているのは一人しかいない。


「ヴィーラは、南スラヴを中心とする民間伝承に伝わる妖精です。自然に宿る存在とされているんですが、これは関係ないのでおいておきます」

「関係ないのか」

「ヴィーラをあげる理由はこの後ですので……。ヴィーラは、長い髪と透き通る衣を纏った女性です。気まぐれで、怒ると嵐を呼ぶとされています。ヴィーラが現れるときは風にとともに現れるそうです」

「おお、ちょっと分かるかも」

「あたしも」

「わかるの?」


 理解を示したのは奏と美鈴だ。一体どこに共通点を見出したのだろうか。長い髪はともかく、透き通る衣なんて纏っていないし気まぐれじゃない。怒っても嵐を呼ばないし、風とともに現れることもない。そもそも魔法は使えないし。


「いや心愛は結構気まぐれだよ。友達になって一か月だけどなんとなくわかる」

「それな。あと魔法少女の時衣装が白いから、なんとなく透けそうだよね」

「心愛が怒るのはみたことないからわからないけど、怒ったら怖そうだし」

「屋根を伝って移動してるとき、速すぎて風を纏ってるようにも見えるよ」


 な、なるほど。言いたいことは結構あるが、それは置いておいて。そう言われると私も、ヴィーラがいいんじゃないかと思い始めた。


「えー、ではヴィーラがいいと思う人」

「はい」

「はい」

「はい」


 皆手を挙げた。

 というわけで、今日から私は魔法少女ヴィーラを名乗ることになったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ