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わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが  作者: 水谷繭
12.妨害と隠し部屋

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12-5

 少々気がかりなことはあったけれど、なるべく気にしないようにして、私はテスト勉強に追われた。


 今回のテストは、十位以内に入れるかもしれない絶好のチャンスなのだ。逃すわけにはいかない。



 そうしてあっという間に時は進み、とうとうテスト当日となった。


 その日、私は始業時間の一時間も前に学園に到着した。学園で最後の復習をするためだ。


「今度こそ十位以内に入ってやりますわ!」


 そう声に出して、気合を入れて机に鞄を置いた。


 新しく作ったまとめノートを読み返していたら、数日前の図書室でのことが思い浮かんだ。この辺りの範囲は、アベル様に教えてもらったところだ。


 そういえば、あの日現れたふわふわ髪の少女はどうしたのだろう。


 あれ以来何もしてこないけれど、あの時の彼女はどう見ても納得した様子がなかった。


 考えてみれば、直近で出会った中で一番怪しいのはあの子ではないか。中等部の生徒だから犯人候補から除外してしまっていた。


「テストが終わったら、あの子に確認しに行くべきかもしれませんわね……」


 そんなことを考えながら、私はまとめノートに視線を走らせる。


 そのうちわからない部分が出てきたので、アベル様にもらったあの参考書を取り出そうとした。


 しかし本が見つからない。


「え? アベル様にもらった本は……?」


 鞄の中をいくら探っても本はなかった。


 あの、どうみても小学生向けの本。最初は馬鹿にされているかと思ったけれど、アベル様が丁寧に付箋を貼ってくれて、私のテスト勉強のお供にずっと使っていたあの本は、今では戦友のような存在だった。


 また盗まれたのかもと、さっと血の気が引く。


「本当になんなんですの……! 許せませんわ!!」


 ペンやハンカチならまだ許せるけれど、あの本は許せない。


 私は広げた教科書やノートを閉じて立ち上がった。


「テスト前ですけれどちょっと見に行ってやりますわ、あのふわふわ髪の女! 犯人かどうかはまだわかりませんけれど、犯人だったら許しません!」


 私は怒りに任せて、中等部校舎まで駆けていった。


 ふわふわ髪がもう登校してきているのかはわからない。けれど、動かなくては気が済まないくらい苛立っていた。



「あの子確か、アベル様のクラスメイトだと言っていましたわよね……」


 中等部校舎までやって来ると、私はアベル様の教室に向かうべく、階段の方へ向かった。


 すると、前方によく目立つピンクの髪が見える。


「あれっ、リリアーヌ。何してるの?」


「アベル様!」


 前方からやってきたアベル様は、不思議そうに私を見ていた。その後で、彼はぱっと笑顔になる。


「もしかして僕に会いに来たの? 嬉しいな、実は僕もこれからリリアーヌを探しに行くところだったんだ。運命だね!」


「決めつけないでください。アベル様に会いに来たわけじゃありませんわ」


 私は呆れて言う。


 アベル様に会いに来たわけではない。アベル様にもらった本を推定犯人から取り返しにきただけだ。


「なんだ、残念。それなら中等部校舎まで何の用?」


 アベル様はちょっとがっかりした顔をしながら尋ねてくる。


「実は最近、ものがよくなくなるんです……。ペンやハンカチやリップなんかがいつの間にかなくなっていますの。今日はとうとうアベル様がくれた本までなくなっていて」


「え、何それ、嫌がらせ? リリアーヌに嫌がらせするなんて許せない……! 一体誰がそんなことをしてるんだろう」


「……心当たりは少しありますの。実はアベル様には言っていなかったのですが、この前中等部の女の子三人に詰め寄られまして……」


「本当に?」


 アベル様は目を見開いた。


 私はそんな彼に向かって、この前の件を説明した。


「……というわけなんです」


「そんなことがあったんだ……。それであの時、知り合いにミルクティー色の髪の女子はいるかって聞いてきたんだね。ごめん、全く気付かなかった」


 アベル様は申し訳なさそうに言う。


 私は首を横に振った。


「いいえ、私も話しておくべきでした」


「多分その子は、ポレット・ルーベル嬢じゃないかな。リリアーヌが気になることを言っていたから確認しておいたんだけど。ミルクティー色の長いウェービーヘアに、オレンジ色の目をした子でしょ?」


「ええ、そういう外見でしたわ」


「なら、きっとポレット嬢だ。悪い子には見えなかったんだけどな……」


 アベル様は難しい顔をして言った。


 それはアベル様から見たら悪い子には見えないだろう。彼女はアベル様のことが好きなのだから。


「というわけで、そのポレット・ルーベルさんが犯人なら、今まで盗んだものを取り返そうと思うのですわ」


「わかった。ポレット嬢に話を聞いてみよう」


 アベル様は真面目な顔でうなずいた。


 私たちは二人で教室まで向かう。しかし、アベル様の教室まで行ってみたものの、ポレット嬢はいなかった。


「いないみたいですわね……」


「あ、でも席に鞄がある。多分登校してきてはいるよ」


「え、本当ですか? じゃあ、校舎内にいるかもしれませんわね」


「ちょっと探してみる?」


「ええ、まだテストまで時間もありますし」


 私たちはポレット嬢を探すことにした。


 しかし、校舎を回ってみたものの、彼女の姿は見当たらない。


 階段下もエントランスも休憩スペースも確認したけれど、どこにもいなかった。

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