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「いいじゃないですか、認めてあげれば。リリアーヌがやる気になっているんだし」
「いや、しかしシャリエ公爵家の後継にかかわることなのだから、あまり基準を甘くするのは」
「リリアーヌは最近随分とお勉強をがんばっていますし、そんなに心配することはありませんよ。あなただって、親戚の子を跡取りにするよりリリアーヌが継いでくれたほうが嬉しいでしょう?」
「確かに実の子が継いでくれるのが一番いいが……」
お父様は眉間に皺を寄せて考え込んでいる。お父様自身もリリアーヌにシャリエ家を継いでほしい気持ちはあるらしい。
それはせっかく守ってきた公爵家なのだから、出来ることなら実子に継がせたいだろう。
以前のリリアーヌがジェラール様のことしか考えていないアホの子でなかったら、お父様だってすぐにでも賛成したかったはずだ。
ただお父様の心配もわかるけれど、私は記憶を取り戻す前のリリアーヌとは違うのだ。
「お父様! 私は何も難易度を下げてほしいからお願いしているのではありません。ただ一刻も早くシャリエ家の跡取りとして認めてもらい、これまでより一層深く次期公爵としての学びを深めていきたいと望んでいるだけなんです! そのためにも、次の期末試験まで待っていられなくて……! どうかお願いします!」
「リ、リリアーヌ! そこまで本気だったのか!」
私が力を込めて言うと、お父様は感動した顔になる。
それから、厳かに頷いてくれた。
「わかった。一斉学力テストで10位以内に入った場合でも、跡取りにすることを検討しよう。がんばるんだぞ、リリアーヌ」
「ありがとうございます、お父様!」
「よかったわね、リリアーヌ」
私は手を組み合わせて両親にお礼を言った。
よしよし、うまくいった。一刻も早く次期公爵としての学びを深めたい云々はお父様を説得するために盛ってしまった自覚があるけれど、うまく響いたようだ。
私のアドリブ力も捨てたものではない。
私はとてもいい気分で、お皿の上の鴨肉を口に運んだ。
***
翌日、私は早速アベル様の教室まで昨日の話の報告に行った。
「アベル様―!! 無事お父様に一斉学力テストもテストのうちに入ると認めてもらえました!」
「え、よかったじゃん! 交渉うまくいったんだね!」
アベル様はこちらを振り返ると笑顔で言った。
「ええ、私の演技力を駆使して認めてもらいましたの!」
「すごいすごい」
「というわけで、アベル様! またテスト勉強協力してくださいね!」
「うん、もちろん。次は絶対目標達成しようね」
アベル様は笑って言った。
それから、私はアベル様に手伝ってもらいながら毎日一斉学力テストに向けて勉強した。
放課後は図書室へ行き、家に帰ってからも夜中まで練習問題を解き、休日は王立図書館に行ったりアベル様にお屋敷まで来てもらったりしながら試験対策に取り組んだ。
今回の教科は三教科しかないので、一つずつ力を入れて取り組めた。
次こそはいけるかもしれないと思うくらいに、テスト勉強は順調だった。
そんなある日、ちょっとした事件が起こった。
それはいつも通り、アベル様と一緒に学園の図書室に残っていた日のこと。時間も遅くなってきたので、私たちは今日の勉強は終わりにして帰ることにした。
図書室を出て、すっかり暗くなった窓の外を眺めながら廊下を歩く。
玄関まで歩いている最中、アベル様が言った。
「あ、教室に忘れ物したみたい。リリアーヌ、ごめん、ちょっと待っててくれる?」
「忘れ物ですか? わかりました、そこで待っていますね」
私は近くにあったミニテーブルとソファのある簡易休憩スペースを指さして言う。アベル様はもう一度私に謝ると、駆け足で教室まで駆けていった。
「中等部校舎のアベル様の教室まで行くなら、少し時間がかかりそうですわね……」
ひとり言を呟きながら、休憩スペースのソファに腰掛ける。テーブルに頬杖をついてアベル様の帰りを待った。
すると、静かな空間に突然少女の声が響いた。
「あの、リリアーヌ・シャリエ様ですよね」
驚いて振り返ると、そこにはふんわりしたミルクティー色の髪をした可愛らしい女の子と、その子を守るように両隣に立つ二人の少女立っていた。
全員中等部の制服を着ている。見覚えのない子達だけれど、一体誰だろう。私は不思議に思いながら返事をする。
「はい、私がリリアーヌ・シャリエですが……。私に何かご用ですか?」
「私は中等部でアベル様と同じクラスの者です」
ふわふわ髪の少女は、若干怯えの混ざった表情でじっとこちらを見つめながら言う。




