アフターストーリー(1/4): お彼岸
『おー遥、おはよう。サンタさんからのプレゼントはあったか』
『サンタさんじゃなくて父さんでしょ!』
『いや、違うぞ。フィンランドにはサンタクロース村というのがあってだな……』
『サンタさんなら、プレゼントを開けるときのわくわく感、絶対わかってるもん。こんな、包装もなくバスケットボールだけポンって置いていったりしないよ!』
『いやー球って包装するの難しくて……』
『絶対にワゴンのやつじゃん、それにこれミニバスのボールじゃなくて中学生とかが使う大きいサイズだよ!』
『いやーまさか小3でばれるとはなーまあ、中学でもバスケしたらいいじゃないか』
*
『誕生日おめでとう。いやーもう12歳かー早いなー』
『ありがとう』
『それで遥、まだなのか』
『え、何が』
『反抗期だよ、反抗期』
『なんでだよ、反抗することがねえよ』
*
『遥、中学生になって、なんか悩みとかないのか』
『別に自分の悩みくらい自分で解決できるよ』
『はあ~お前は何も分かってねえな』
『なんだよ』
『いいか、親ってのは聞きたがりなんだよ。よく覚えとけ。じゃあ、好きな人は?』
『……いない』
『お? お? 付き合ったら教えろよ』
*
『夏休みの宿題終わったのか』
『あとワーク6ページ』
『ははっ、そのくらい昨日のうちにやっとけよ』
『俺は毎日ちょっとずつやって、ちょうど始業式の前日に終わらせる主義だから』
『中2になっても、それだけはぶれないよな~。まあでも、高校生になったら2日前に終わらせろよ』
『あっ2日前でいいんだ。てか、どうして』
『たまにはそういう年があったらおもしろいだろ』
* * *
今思い返しても、父の頭の中は理解できない。遥の、よく言えば柔軟な思考、悪く言えば意志の弱さは、間違いなく父に振り回されて染みついたものである。しかしそういうところも含め、遥は大雑把でよく笑う父のことが大好きだった。
父は、遥が中2のとき交通事故で死んだ。
遥は心の中で呟いた。
(安木高、受かったよ。それから……付き合ったよ、父さん)
遥は合わせていた手を下ろし、目を開けた。そして墓を一瞥し、踵を返した。




