本編(5/5)
『合格発表、何時に行く?』
遥が家でごろごろしていると、那継から連絡が来た。
9時から12時まで安木高校に合格者の受験番号が張り出されているらしい。
『早く行っても混むから11時くらいかな』
『遥らしいな、俺もそんくらいに行こ』
高校に着く。遥が自転車置き場に行くと、なぜか那継と歩結がいた。戸惑っている遥に、那継が「よっす!」と上機嫌に挨拶してくる。
「いやーあんたら考えることが一緒だなー」
どうやら歩結も混むから今来たらしい。歩結と同じことを考えていたという事実に、少し頬が緩む。
そんなこんなで掲示板を見に行く。3人以外誰もいなかった。そして、3人とも受かっていた。倍率は1.02、落ちるのは5人くらいなので、内心大丈夫だと思っていたが。
食堂で書類を受け取り、自転車置き場に戻る。
遥は流れ的に3人で帰るものだと思っていたが、那継が買い物をして帰ると言い出した。
「体育会の借りは返した」
那継は自転車置き場でこそっと遥にそう言った。それから校門で那継と別れた。
* * *
歩結と2人並んで自転車を漕ぐ。
「……」
那継が会話を回してくれていたので、途端に口数が減る。車も通らず、少し鳥の鳴き声がするくらいの、静かな空間だった。それでも、遥はなぜか気まずいとは思わなかった。無理に話さなくてもいいという安心感があった。そして、懐かしさを感じた。
「なんか――休日の部活を思い出した」
遥は前を向いたままぽつりと言った。
「私も。あの時間好きだった」
「俺も」
歩結も、俺と同じことを感じていたんだ。遥は嬉しくなった。
すると、歩結がブレーキを握り、地面に足をつけた。
どうしたんだろう。遥も止まった。
歩結がこちらを見ている。
「すごく――耳赤いよ」
しまった。遥は片手でぱっと耳を触った。
「どうしたの?」
歩結がこちらを見ている。遥はさっと目をそらした。
「別に……なんでもないけど……」
歩結がじっと見つめてくる。遥は、自分がますます火照るのを感じていた。
「そりゃあ好きな人と2人で帰ってるんだから耳くらい赤くなる」
思わず口走ると、ぽかんと間が空いた。何言ってんだ、俺。自分を責めながらも、おそるおそる歩結のほうを見る。
「私も遥のこと好きだよ」
それはどういう……
「それは付き合ってくれるということでいいの」
「うん。でも、どうしたらいいのかよくわからない」
「大丈夫、俺も分からん」
目が合う。
2人の小さな笑い声が、青空に溶けていった。




