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第63話 「やった、よな……?」

(よし、いいぞポーラ)


 現れた兵士たちは霊などではなく、ポーラの降霊魔法と召喚魔法を駆使して召喚された兵士たちだった。レックスの(つぶや)きやマリカのユークレースを守る動作なども、全て計算された上での演技。

 兵士たちを召喚したのも、決してユークレースを攻撃するためではない。ただユークレースを追い詰めるだけに召喚された兵士である。


「ユークレース様、ここは退()きましょう。レックス、あとは頼めるかしら」

「あぁ。任せろ」


 素早く会話を終え、マリカはユークレースの背中を押す。だが、ユークレースは渋った様子で立ち去ろうとしなかった。


「まずはユークレース様のご安全を確保するのが優先です。レックスは武術の心得もありますから、彼を信頼してください」


 マリカの発言でようやくユークレースは納得したのか、首を小さく縦に振った。


「その霊をしっかりと(しず)めるのだぞ……!」


 きちんと仕事をしろと訴えるように、ユークレースはレックスを強く(にら)みつける。

 マリカがユークレースを連れ、早足で聖堂を出ていく。


「……ポーラ、もういいぞ」


 マリカとユークレースがいなくなったのをしっかりと確認し、レックスはポーラに声をかける。

 ポーラが姿を見せると、兵士たちはふっとその場からいなくなった。


「ふぅ、身を隠すのも楽ではないのう」

「ありがとな。隠れてた上に別の魔法も使わせて」

「気にするでない。作戦のためじゃ」


 笑い合ったレックスとポーラはすぐに表情を引き締め、古代兵器に視線を移す。


「さて、壊すか」

「ただの魔族二人でやれるかのう」

「動いてるわけじゃないし、きっといけるよ」

「精霊の加護がなくてできるじゃろうか」


 ポーラの言うことは正しかった。精霊がいない今、自分たちの力で古代兵器と立ち向かうしかない。それに、二人で破壊するという作戦を立てているためにマリカたちの助けは借りられない。

 セレナとサファエルにも時間を(かせ)いでもらっているが、限界がある。だからこそ迅速(じんそく)に、古代兵器の残骸(ざんがい)を破壊する必要があった。


「思いつく壊し方ってあるか?」

「うむ、一つは風属性を勢いよく射出(しなしゅつ)する方法じゃな。風の衝撃で破壊するのじゃ。次に思いつくのは火属性で燃やし尽くす。これじゃと燃え尽きるまでの温度と時間が足りない可能性もあるがのう」


 ポーラの作戦を聞きながら、レックスも破壊できる方法を考える。


「とにかく、色々やってみるしかないか」

「そうじゃな。立ち止まって考えるより行動じゃ」


 レックスとポーラは風属性の魔法を使い、(まつ)られている残骸に向けて射出する。二人の合わさった力の風は残骸に当たる――が、風は残骸を前にして霧散(むさん)してしまう。

 間髪入れず、次に火属性の魔法で残骸に火をつける。残骸に火は燃え移ったものの、焼け落ちていく気配は少しもなかった。


「やっぱり駄目(だめ)か……」

「諦めるのは早い。手当たり次第という言い方は適切かは分からんが、やれることはやるぞ」

「そうだな」


 その後も様々な属性の魔法で破壊を(こころ)みるものの、残骸が壊れる様子は微塵(みじん)も見せなかった。

 そろそろ時間を稼いでくれているマリカたちが誤魔化しきれなくなる。レックスたちは古代兵器の残骸を前にして、次第に焦り始めた。


「なんかこう、手で割れないかな……」

「お主、これを菓子の(たぐい)だと勘違いしとらんか?」

「ごめん、冗談だよ」


 場を(なご)ませたかったが、冷静にポーラに切り捨てられてレックスは苦笑する。

 それでも、触れたらどうなるのか。よく考えたら邪悪な魔力で倦厭(けんえん)していたせいで一度も試していなかった。レックスは残骸に近づいておそるおそる手を伸ばす。

 すると、魔力がじわじわと落ち着き始め、感じる魔力がなくなっていった。

 どういうことかと、レックスもポーラも信じられない様子で残骸を見つめる。


「レックス、お主なにをした?」

「な、なにもしてないよ。ただ触れただけだよ」

「触れただけで魔力が収まるわけがなかろう」


 (あき)れたようにため息をつくポーラ。思案しながら残骸に視線を向ける。


「しかし、魔力が落ち着いた今なら、二人でいけば破壊できるかもしれぬ。魔力がある種の防御魔法になっていた可能性があるからのう」

「じゃあ、もう一度やってみよう」

「そうじゃな」


 レックスとポーラは手を(かざ)し、風属性の魔法を手に集中させる。動きを合わせ、残骸に向けて勢いよく射出した。

 バキッ。

 一点に目掛けて放つと、残骸に亀裂(きれつ)が入った。

 亀裂は二人がそれ以上触らずとも広がり、崩れ落ち、最終的に残骸はただの砂の山となった。


「やった、よな……?」

「そうじゃな。もう魔力も感じないただの砂になったな」


 ポーラの言う通り、それまで邪悪な感覚がしていた魔力は一切感じない。

 確かに古代兵器の残骸を破壊したのだと、レックスの中にじわじわと達成感が込み上げてきた。

 そんな中で、ポーラがレックスを(いさ)めるように呼ぶ。


(うれ)しいのはもちろん分かるが、感動に浸っている暇はないぞ。外にいるマリカたちと合流せねばならん」

「あぁ、そうだな」


 再びポーラは気配を消す魔法を使い、二人は急いで地上へと向かった。

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