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第57話 「これまで辿った旅の逆を行くというのは」

Side.復興大臣時代

「古代兵器の残骸(ざんがい)かぁ」


 階段を登りながら興味深そうに考えるセレナ。あのとき倒した古代兵器がまだ残っていることが信じられないのかもしれない。

 王宮を出たレックスたちはクォーツの入り口で立ち止まる。


「残骸を辿る感覚はマリカにしか分からないのでしょうか」

「その可能性が高いのう。もし全世界の者が知覚(ちかく)できていたら、今頃世界は混乱状態じゃからな」


 ポーラの言うことは間違いないだろう。自分たちが知覚できないのがなんとも歯痒(はがゆ)いが、ここはマリカに託すしかない。自分たちは道を先導して歩くことや魔法でマリカを支えればいいのだ。


「マリカ、どこにあるか分かりそうか?」

「大まかな場所は分かるけど、具体的には分からないわ。ごめんなさい」

「謝る必要はないよ。そうしたら、いくつか候補を絞って行ってみよう。みんな、思いつく場所はあるか?」


 レックスが(たず)ねると、マリカたちが四人同時に手を挙げた。まさか四人同時に手を挙げるとは思わず、手を挙げたままマリカたちは顔を見合わせる。


「えーっと、じゃあまずセレナから。セレナが思う場所はどこだ?」

「海底神殿だよ!」

「海底神殿?」


 レックスは思わず繰り返す。海底神殿とは初めて聞いた。海底ということは海の中に神殿があるのか。レックスは興味深そうにセレナの話を聞く。


「やっぱり神殿にはあると思うんだ。海の中だから基本的には誰も来ないし、邪魔されることもないと思うよ」

「その海底神殿にはどうやって行くのでしょうか」

「一番早いのは海の中を突っ切って移動することかな。潜水艇(せんすいてい)を借りるのもいいけど、時間は惜しいよね」


 潜水艇なしで移動とは、実に海の精霊らしい提案だ。確かに、潜水艇を借りる時間があれば少しでも早く海底神殿に向かいたい。

 だが、ここで行き先を決定するのは早計(そうけい)だ。手を挙げた全員の話を聞いておかなければ。


「じゃあ、次。サファエルは?」

「僕はスピネル郊外の神殿にあると思いました。僕たちが行ったのは一箇所だけですが、他にも神殿はあったはずです」


 レックスはスピネル郊外の光景を思い出す。そういえば、向かった神殿以外にも小さな神殿がいくつかあったような気がする。あのときは気に()めていなかったが、あの辺りに眠っている可能性も十分にある。


「分かった、スピネルにも行こう。ポーラはどこだ?」

「わしはルチルの森にあると思うぞ。ジャスパーたちがおった集落の森じゃ」


 ポーラは集落に行ったときのことを思い出すように話を続ける。


「あの森は広い。わしらが歩いたのもほんの一片(いっぺん)じゃ。もしかしたらどこかの地中に埋まっているかもしれぬ」


 ルチル自体があまり開拓されていない地方だから、古代兵器の残骸が眠っていてもおかしくない。もしかしたらヒスイたちに話を聞けば分かるかもしれない。

 納得したレックスは次にマリカの方を向く。


「マリカはどこにあると思う?」

「アズライトよ」


 レックスに尋ねられたマリカははっきりと答えた。予想していなかった発言にレックスたちの目が(わず)かに開かれる。


「私はあそこで領主に会って、古代兵器の一部を見ているわ」


 レックスたちは驚愕(きょうがく)した。まさか、アズライトにいたときにそんなことが起きていたなんて。


「と言っても、一部を収集しただけと言っていたから特になにも起きなかったわ。けれど、あそこには確実に古代兵器の残骸がある」


 静かに告げるマリカが嘘をついているようには思えなかった。嘘をつく理由もないし、アズライトに行くべきだとすぐに判断した。

 しかし、レックスたちはアズライトにいい思い出はなく。アズライトに行くということは敵地に乗り込むようなものだった。

 だが、立ち止まっていてはいけない。古代兵器の残骸の破壊は自分たちに課せられた使命なのだから。


「それじゃあ、確実に居所(いどころ)が分かってるアズライトから向かおう。それでいいか?」


 レックスの問いかけに、マリカたちはもちろんだと大きく(うなず)いた。

 覚悟を決めて歩き出したところで、「そうじゃ」とポーラが立ち止まる。


「こういうのはどうじゃろうか。これまで辿(たど)った旅の逆を行くというのは」

「逆を辿る?」

「そうじゃ。ただ破壊しに行くだけでは義務化されてしまう。それなら、少しでも心(おど)る内容にすれば良い」


 ポーラはニヤリと笑って語る。表情からいい案だと言っているような気がした。


「てことは、アズライト、スピネル、ルチル、ベリルってことだね。楽しそうだしいいね!」


 セレナの言葉にポーラはニコリと笑って応える。セレナはすっかり楽しそうに「もう一回行けるなんていいね!」と盛り上がっていた。


「面白いと言っては不謹慎(ふきんしん)かもしれないですが、なかなかいい(こころ)みだと思います」

「サファエルもそう思うよね!」

「はい。僕は皆さんの話を聞いただけですから。実際に行ってみたいと何度も思っていました」


 サファエルも爽やかな笑顔を見せる。


「ということだけど、レックス。どうかしら」

「もちろんいいよ。早速行こう」


 意見が一致し、レックスは過去の旅を辿る道のりで古代兵器の残骸を破壊することにした。


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