表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/77

第56話 「……古代兵器の鍵とか?」

 見ると、玉座の下の床が少し(ゆが)んでいた。ただの(へこ)みかと思ったが、少し違う気がする。


「どうしたの、レックス」

「あぁ、ここの床、ちょっと歪んでる気がして……」


 レックスに言われ、マリカたちも玉座の裏に回って床を(のぞ)き込む。


「言われてみればそうだけど、争いの拍子で歪んだだけじゃないかしら」

「もしかして、隠し部屋とかじゃない!? 見てみようよ!」


 わくわくした様子で、セレナはレックスとサファエルを見る。


「……動かせってことか?」

「うん!」


 当然のように言っているが、期待のこもった眼差(まなざ)しのセレナに言われては仕方ない。レックスとサファエルは顔を見合わせて苦笑し、持ち上げて玉座を動かす。

 玉座を避けたところで、「わしが壊してやろう」とポーラが風属性の魔法を使って床を破壊する。

 次の瞬間、(ふた)を開けたように勢いよく魔力が(あふ)れ出した。レックスとポーラは目を見開いて思わず後ずさる。


「なんだ、この魔力……」


 ただの魔族が持つ魔力ではない。禍々(まがまが)しい、邪悪を詰め込んだような魔力だった。


「嫌な空気だね。魔力感知はできないけど、あたしにも嫌な感じは伝わってくるよ」


 レックスの横で、セレナが神妙(しんみょう)面持(おもも)ちで(つぶや)く。精霊だから多少なりとも感知はできるらしい。


「例えるなら、あのとき戦った古代兵器と同じ魔力の感覚じゃな」


 ポーラの言葉にマリカたちは目を(みは)る。かつて世界を襲った災厄と同じ魔力を感じるなんて、マリカたちは(にわ)かには信じ(がた)い話だった。

 レックスはポーラに言われて思い出した。古代兵器も禍々しく嫌な魔力を持っていたことを。


「この下になにかあるんでしょうか」


 サファエルが覗き込む先には階段があり、地下に続く道ができていた。しかし先は見えず、深淵(しんえん)が広がっているように見えた。

 踏み出すのを躊躇(ちゅうちょ)するような景色だが、溢れ出した魔力の原因も気になる。


「気をつけて行ってみよう」


 意見が一致し、レックスたちは階段を降りていくことにした。


「まさか、王宮にこんな場所があるなんて思わなかったわ」


 マリカは信じられないといった様子で呟く。

 階段は暗かったが、火を(とも)す台がそこかしこに置かれていたため、レックスたちは火属性で火を灯しながら階段を降りていく。


「一体なんの部屋でしょうね」

「隠し部屋っぽいし、やっぱりお宝かなぁ」


 どこか弾んだ調子のセレナ。

 もしかしたらお宝が置かれている可能性もある。王宮内を回っても宝石やそれに(あたい)する物はほとんど置かれていなかったから、それを隠すための場所かもしれない。王宮内にある目で見て分かる高級な品は、根こそぎ人間に奪われてしまったようだから。


「もしくは祭祀(さいし)のためじゃないかしら。こういう隠れたところで祈りを捧げそうよね」


 マリカが(あご)に手を置きながら思案する。

 確かにマリカの考えも()()るが、レックスは玉座の下というのがどうしても引っかかっていた。祭祀が目的ならもう少し目立つ場所にあったり、専用の部屋が用意されていたりするはずだ。


(なにがあるんだろう……)


 レックスも一人考えながら、階段を降りていった。

 階段を降りるにつれて、魔力もどんどん濃くなっていく。体調が悪くなるほどではないが、気分は決していいものではなかった。

 ようやく階段を降り切ると、中はなにも見えないほど暗かった。

 松明(たいまつ)代わりに火属性の魔法で火を灯すと、そこにあったのは巨大な歯車の(かたまり)だった。見上げても全てを見渡すことはできず、レックスたちの視界に映るのはほんの一部分だった。


「これって……」


 レックスは唖然(あぜん)として、巨大な歯車を見つめていた。


「魔力の(みなもと)はこれじゃな」

「この歯車から、そんなに嫌な魔力を感じるのですか?」


 サファエルの疑問にポーラが(うなず)く。


「魔力の流れが同じってことは、古代兵器と関わってるのかな?」

「どうじゃろうか。ただ魔力の流れが同じと言う可能性もある。同じというのはあまりいい予感はしないがのう」


 ポーラは腕を組んで眉を(しか)める。


「……古代兵器の鍵とか?」


 ふと、口をついて出た言葉。マリカたちの視線が集中する中、レックスは歯車を見上げながら呟く。


「鍵? これが?」

「俺も推測なんだけどさ、魔力の流れが同じってことは古代兵器と繋がってる可能性が高いだろ。だから、鍵がこれだとしてもおかしくないと思うんだ」


 そこまで口にしてレックスは気がつく。


「そうか……あのときはマリカが古代兵器を動かしていたけど、本来は別の方法で動かすのかも」

「なるほど、仮にこれが古代兵器の鍵だとしたなら、人間がクォーツに攻めてきた理由も納得がいくのう」


 そう考えると全てが(つな)がる気がする。人間が血眼(ちまな)になって探し回っていたものが、こんなところにあるなんて思わなかった。

 テヴァスは昔から管理してきたといっていた。つまり、王族が代々この鍵を管理していたのだ。そして、これを守ったせいで両親が殺されてしまった。


(そこまでして管理する必要があるのかよ……)


 レックスは唇を噛み、耐えきれずに歯車に手をつく。

 そのとき、レックスが手をついたところから歯車が(あや)しく光る。


「……っ」


 歯車の光に呼応(こおう)するように、マリカが胸を押さえて(うずくま)った。


「マリカ、大丈夫か?」

「……大丈夫。胸の奥がざわざわする感覚がしただけ」


 マリカの背中をさするレックスの横で、セレナたちは歯車を観察していた。


「今、これが光ったね」

「レックスが触れたせいかのう」


 ポーラの何気ない一言にレックスは急激に青ざめる。


「俺が、なにかやらかしたか?」


 レックスは冷や汗をかきながらマリカたちを一瞥(いちべつ)する。マリカたちは顔を見合わせ、無言の時間が訪れる。


 そんな中で「恐らくですが」とサファエルが手を挙げる。


「レックスのお父上である王が、この地に封印魔法を(ほどこ)していましたよね。ですから、血縁であるレックスが触れたことで封印が解けかけた……と考えてみました」

「やっぱり俺がやらかしてるじゃないか!」


 マリカから離れ、レックスは頭を抱えてしゃがみ込む。

 自分の些細(ささい)な行動が、大きな被害を生みそうになるなんて。


「でも、古代兵器はあのとき破壊したよね。鍵だけなら問題ないんじゃないかな?」

「良くないじゃろう。古代兵器じゃぞ。鍵だけでもなにが起こるか分からんというのに」

「んー、まぁ本体はないしいいんじゃないかな――」


 言いかけたセレナだが、マリカが「いいえ」と(さえぎ)ったことで口を閉じる。


「恐らく、まだ古代兵器は破壊できていないわ」


 マリカの発言にレックスたちは目を見開く。


「どうしてそう思うのですか?」

「私、古代兵器の残骸(ざんがい)在処(ありか)が分かる気がするの」


 サファエルの問いかけに、マリカは歯車を見つめながら答える。マリカの(ひとみ)は揺るぎのないものだった。


「あのとき古代兵器と一体化したときの名残(なごり)が、きっと体の中に残っているんだわ」

「共鳴か。だから古代兵器の場所が分かるということじゃな」

「原理はそういうことだと思うわ」


 マリカは立ち上がり、レックスたちを一瞥する。


「私たちで、古代兵器の残骸を一つ残らず破壊しましょう」


 マリカはレックスたちに向けて力強く微笑む。

 文字通り、マリカが古代兵器を破壊するための鍵になるのだ。マリカには(すで)に覚悟が表れていた。


「私たちならやれるわ」

「……そうだな。マリカが言うならできる気がするよ」


 こんなに頼もしい仲間がいるのだから、きっとできるはずだ。できないことなんてない。

 レックスは立ち上がり、ついた砂埃(すなぼこり)を払う。


「こうなったら、早速行くしかないね。早くしなきゃ大変なことになるかもしれないし!」

「そうじゃな。早めに片付けて宴を開こうじゃないか」


 あれこれと盛り上がりながらマリカたちは階段を早足で登り始めた。古代兵器の残骸の破壊に向かおうとしているが、誰もが気負いしていないのがなによりの救いだった。


「……」


 レックスは一人その場に残り、無言で歯車を見つめていた。次にぼんやりと手のひらに視線を落とす。

 歯車から感じる嫌な魔力とは違う、暗闇で灯された蝋燭(ろうそく)のように温かい感覚がレックスの中に生まれていた。自分の中にある魔力とも違う。これは一体なんなのか。


「レックス、行くわよ」

「あ、あぁ」


 階段を登っていたマリカに呼び止められ、我に返ったレックスは急いでマリカたちを追いかけた。


(もう復興大臣どころじゃなくなったな……)


 王宮を歩きながらレックスは考える。

 これまでは復興大臣として各地を巡り、仲間と再会し、復興への道を開いてきた。

 しかし、今から行うのは都市の復興ではない。これは世界を救うための復興だと。

 古代兵器の残骸を破壊して世界を救い、もう一度世界を平和にするのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ