表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/45

第40話 「ようこそ、信仰都市スピネルへ」

Side.勇者時代

 レックスたちはルチル地方を抜け、再び港町に戻ってきた。港町を訪れるのは何度かあったが、やはりここが様々な場所へ繋がっているために適していると判断したからだった。

 港町に戻るまでの間、マリカはつきっきりでポーラに魔法を教えてもらっていた。


「飲み込みが早いのは、教える側としても(うれ)しいのう」


 ポーラは嬉しそうに指先をくるりと回す。ポーラの横でマリカもつられて嬉しそうにしていた。


「魔法は想像することが大事なのよね」

「その通りじゃ。理論的に学ぶことも大事じゃが、結局は魔法を使う者の想像に(ゆだ)ねられる。水属性を使うのも、どんな水を想像するかで生み出されるものが全く異なる。じゃから、想像力が豊かな者ほど魔法の上達は早い」


 ポーラの解説にマリカだけでなく、レックスも真剣に聞いていた。

 レックスにとってポーラは魔法の師匠に等しい。師匠の言うことはこぼさず聞いておこうというレックスなりの態度の表れだった。


「レックスとマリカ、どっちが魔法の上達が早いか勝負だね」

「競い合うのもお互いを高め合うから良いことじゃ。ただ競い合うことに意識を向けすぎて、丁寧さを()くことだけは御法度(ごはっと)じゃからな」


 セレナとポーラに言われ、レックスはマリカを見る。マリカもちょうどレックスを見ていたのか、二人の目が合う。


「レックス、負けないわよ」


 マリカが珍しくニッと笑う。


「あぁ、受けて立つよ」


 マリカの笑顔につられるように、レックスも笑顔を返した。

 そんな二人の様子を、セレナとポーラは微笑(ほほえ)ましく見守っていた。

 その後も特訓を続けながら、ようやく港町に到着した。


「戻ってきたけど、次の行き先はどうするの?」


 セレナに尋ねられ、レックスは腕を組んで(うな)る。


「特に決まってないんだよな。また情報収集をして行き先を決めるのがいいかな」

「そうしたら私に提案があるのだけど、いいかしら」


 マリカが小さく手を挙げる。


「もちろんだよ。どんな提案なんだ?」

「行ってみたい場所があるの」

「行ってみたい場所?」


 首を傾げながら繰り返すレックスに、マリカは笑顔で頷く。


「宿屋で働いていたとき、商人の人から話を聞いたわ。なんでも、スピネルっていう中立都市があるらしくて、人間以外の種族も受け入れる変わった都市みたいなの」


 そんな変わった都市があるのか。レックスたちは感心した表情でマリカの話を聞く。


「面白そうだな、行ってみるか。セレナとポーラはどうだ?」


 レックスが呼びかけると、セレナとポーラはもちろんと言った風に(うなず)いた。


「あたしはいいよ! そんな場所があるなんて知らなかった!」

「わしも行ってみたいのう」


 全員が賛同(さんどう)したことで、レックスたちはスピネルへ向かうことになった。

 馬車を探したら向かう馬車があると聞き、商人からの了承も得てレックスは馬車に乗せてもらった。


「それにしても、スピネルに行きたいなんて変わってるね」


 道中、商人から話を振られる。


「行く人はあまりいないんですか?」

「いいや、ときどきいるね。お祈りをしたいとか言う人をよく聞くよ」

「お祈り、ですか」

「おや、スピネルがどんなところか知らないのかい?」


 レックスたちが頷くと、商人は嬉々(きき)として説明を始めた。


「スピネルは人間以外の種族を受け入れている独立中立国家で、偏見(へんけん)を持つ人もいない変わり者が多い都市だよ。天使族と悪魔族を特に崇拝(すうはい)していて、信仰心が強い人が多いね」


 聞き慣れない種族にレックスたちは首を(かし)げる。天使と悪魔なんて、神話でしか聞かないような存在だ。


「天使族と悪魔族っていう種族がいるんですか?」

「そうだよ。普段は天界と魔界にそれぞれ住んでいて、地上に降りてくることはほとんどない。信仰する人からしたら神のような存在だろうね。これは現地の人に教えてもらった情報だから、正確さは保証するよ」


 商人の情報を繋げ合わせたら、スピネルというのはなかなか神々(こうごう)しい街だ。レックスは珍しそうに商人の話を聞いていた。


「俺は商人だからスピネルに行くけど、あそこで暮らそうとは思わないな」

「どうしてですか?」

「だって人間以外が住んでるって思うと居心地が悪いだろう?」


 商人は乾いた笑いをこぼすが、レックスたちは笑いを返せなかった。

 恐らく商人はなんの悪意も答えている。これも人間至上主義が根づいている証拠だと、(あん)に伝えているようなものだった。

 レックスたちの間に気まずい沈黙が訪れ、レックスたちは思わず目を伏せた。


「あぁ、名物の大聖堂が見えてきたよ」


 空気を変えるように、商人が目の前を指差す。

 レックスたちが視線を向けると、巨大な建築物が見えた。(へい)に囲まれていて足元までは見えなかったが、屋根だけでも十分に荘厳(そうごん)さがレックスたちに伝わった。まだ距離はあるのに大きく見えるなら、近くで見たらどれほど圧倒されるのだろう。


(すごいな……)


 初めて見る神秘的な建造物に、レックスは心の中で感動していた。

 スピネルの入り口に到着して検閲(けんえつ)も抜け、レックスたちは塀の中へと入っていった。


「ようこそ、信仰都市スピネルへ」


 信徒(しんと)らしき人物が入り口でレックスたちを迎えた。

 中は港町ほど賑やかではないものの、それなりに栄えていた。商人の言う通り、人間以外にも魔力感知をしたら何人かの魔族も確認できた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ