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第18話 「ということで、改めてよろしく!」

Side.復興大臣時代

「レックス、おはよう」


 レックスが目を開けると、そこにはマリカの姿。一足早く支度(したく)を終えていたらしいマリカはレックスに笑顔で微笑(ほほえ)みかけた。


「昨日はセレナの面倒を見てくれてありがとう。あれから大丈夫だった?」


 そういえば、酔っ払ったセレナの面倒を見ていたのだとレックスは思い出す。自分も疲れから部屋に戻ったらすっかり寝てしまっていたから。


「部屋に戻ったらすぐに寝たよ。マリカが心配するほどじゃなかったよ」

「そう、それなら良かったわ。朝食は用意してくれたみたいだから、準備ができたら一緒に行きましょう」


 マリカに言われ、レックスは支度を始める。

 レックスたちに用意された部屋はある程度の設備があり、レックスがのびのびと準備をする空間が整っていた。

 準備を終えたレックスたちは、王宮内の一室を案内される。そこには(すで)に朝食が用意されていて、レックスたちを迎える準備ができていた。

 王宮での食事なんてレックスは慣れていなかったが、マリカは流石(さすが)といったところか。慣れた様子で腰掛け、食事の準備を始めた。


「おはよぉごじゃいます〜」


 そこにやってきたのは、欠伸(あくび)をこぼすセレナだった。セレナは寝ぼけ(まなこ)(こす)りながら席につく。


「おはよう、セレナ。気分はどう?」

「いっぱい飲んだから頭痛い〜。海藻スープ飲む〜」


 席につくや否や、セレナは近くにあった海藻スープを一気に飲み干す。勢いに苦笑したレックスとマリカも、各々食事を摂り始める。

 食事は海藻スープに貝柱などのいくつかの前菜、塩を練り込んだパン、甘味(かんみ)、ハーブティー。豪華(ごうか)絢爛(けんらん)ではないものの、食器や盛り付けから十分に上品さは演出されていた。

 王宮内の雰囲気に押されながらも食事を進めるレックス、王宮など慣れっこだといった表情のマリカ、寝ぼけながら食事に手をつけるセレナ。三者三様の食事の光景が出来上がっていた。

 程なくして食事は終わり、セレナは一度部屋へ戻っていった。レックスとマリカは部屋に残り、朝食後のゆったりとした時間を過ごしていた。


「ベリルを出発したら、次はポーラのところかしら」

「そうだな」


 次の行き先が決まり、レックスとマリカはセレナが戻るのを待つことにした。


「おっはよー!」


 再び部屋に現れたセレナは、先ほどの状態が嘘のようなくらい明るい状態になっていた。朝食を食べて元気が出たのだろう。相変わらずセレナの破天荒(はてんこう)さにレックスもマリカも苦笑するばかりだった。


「それじゃあ、俺たちはそろそろ出発するよ」

「あ、その前に。レックス」


 セレナはレックスの前にたち、マントをふわりとレックスに(かぶ)せる。


「うん、準備完了」

「そうだった。ありがとな」


 レックスとセレナの穏やかなやり取りを見て、マリカは首を(かし)げる。


「どうしてセレナがレックスのマントを持っているの?」


 ぽかんとしていたセレナだが、レックスとマリカを交互に見てニヤリと笑う。


「お姫様は純粋だなぁ。男女二人が部屋にいて、やることなんて一つでしょ」


 セレナはニヤニヤとマリカに語りかける。

 言葉の意味をようやく理解したマリカは、段々と顔が赤くなっていく。


「変なことを言うな。セレナがマントを離さなかっただけだろ」

「ぶぅ、冗談でしょ」


 レックスの冷静な返しにセレナは唇を(とが)らせる。レックスとセレナの軽快な二人のやり取りは仲のいい兄妹にも見えた。


「そ、そうだったの。じゃあ平気よ。私はなんにも思わないわ」


 一人で焦るマリカが面白かったのか、セレナはさらに笑みを深めた。


「よぉし、じゃあ潜水艇(せんすいてい)まで行くぞー!」


 セレナを先頭にして、レックスたちは潜水艇の停泊地(ていはくち)へ向かった。


「ベリルでの一日は楽しかったよ」


 潜水艇の出発地に到着し、レックスとマリカはセレナの方に向き直る。セレナも「あたしも楽しかったよ!」と笑顔を返した。


「話し合いに参加したときはどうなることかと思ったけど、セレナのフォローがあったから上手くいったよ」

「どういたしまして。ベリルもレックスたちのおかげで前進できると思うよ」


 ちょうど近くに一隻(いっせき)の潜水艇があったため、レックスたちは潜水艇に乗り込む。


「セレナ?」


 レックスとマリカに続いてセレナも潜水艇に乗り込んでいた。

 どうしてセレナが乗っているのか。丁寧に地上まで見送りに来てくれるのだろうか。


「あたしも二人について行こうと思って!」


 笑顔のセレナにレックスとマリカは思わず顔を見合わせる。

 ついて行くとは、レックスの復興大臣の仕事について行くことだろうか。マリカだけでなく昔の仲間がいるなんて、心強いのは間違いない。だが、しかし。


「俺たちはいいけど、セレナは仕事があるんじゃないか?」

「そうよ。セレナは海の精霊としてベリルにいる必要があるんじゃないの?」


 レックスたちが尋ねると、セレナは平気と言わんばかりの笑顔を向ける。


「ちょっと空けても大丈夫! 書類仕事なら他の人ができるし、最近はお祈りも全然やってないし!」


 あっけらかんと答えるセレナだが、大丈夫かとレックスたちは不安になる。明るく言っているが、職務放棄をしようとしているのでは。


「セレナ様!」


 すると、遠くからセレナを呼ぶ声が聞こえた。見ると、魚人や人魚の役人らしき人々がレックスたちの元に走ってきていた。


「昨日は見逃しましたが、今日は業務が溜まっております! 今すぐにお戻りください!」

「やば、もう来ちゃった。急いで出発して!」


 運転手に声をかけたセレナは振り返り、迫る役人たちに笑顔で手を振る。


実地(じっち)調査ってことで! お土産(みやげ)買って帰ってくるからー!」


 その言葉を最後に扉が閉められ、潜水艇は出発する。

 レックスとマリカは、なにかを叫ぶ役人たちが段々と小さくなっていくのを呆然(ぼうぜん)と見守るばかりだった。

 ちょこんと座るセレナに視線を移すと、セレナは得意げに笑っていた。


「ということで、改めてよろしく!」


 セレナは元気よく片方の(まぶた)を閉じる。

 セレナの奔放(ほんぽう)さについていくのは大変だ。レックスとマリカは(あき)れながら息を吐いた。

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