王都観光1日目
王都に着いた次の日、俺たちは朝食を食べてすぐに王都観光へ出かけた。
ちなみに朝食はバイキング形式で、好きな食べ物を好きなだけ食べることができた。さすが高級ホテルなだけあって、食材が少なくなってくるとすぐに追加で出されるので、どれだけ取ってもなくなる心配がなく、心置きなく食べることができた。
昨日の夜は疲れていてすぐに寝てしまったが、朝起きてから部屋を見て回ると、お風呂が付いていたため朝風呂を浴びることにした。
まさか宿にお風呂が付いているとは思ってもいなかった。さすがグランツ商会本店が経営しているホテルだ。
家にあるものよりも何倍も完成度が高く、さらに装飾まで施されていた。俺がお風呂から出ると、3人とも入りたそうにしていたので、「ゆっくり入ってきていいよ」と伝えると、とてもうれしそうに入っていった。
ちなみに浴槽は大浴場のようになっており、シャワーも何か所かあったので、3人一緒に入って楽しんでいた。
ご飯を食べた後は、すぐに準備をして宿を出た。
行き先はまだ決めていない。王都は広く、観光名所もたくさんあるらしい。ツアーなんかもやっているそうなので、いろいろと考えてから決めようと思っている。
とりあえず俺たちは冒険者ギルドへ寄って情報を集めることにした。王都は多くの観光名所があるため、冒険者でもわざわざ観光に来る人たちがいるらしい。
俺たちは受付の人にクエストや出現する魔物などの情報も聞きながら、この街のおすすめの観光スポットを尋ねた。観光を一通り終えたらクエストを受けるつもりだったので、ちょうどよかった。
「観光スポットですか。そうですね。ベタなところだと、街のシンボルである時計塔とかでしょうか。王城以外の建物では、この王都で一番高い建物ですよ。上の展望台にも登ることができます。レインさんたちは冒険者なので大丈夫だと思いますが、上りはすべて階段ですので、結構疲れますよ」
話を聞いていると、ほかにも面白そうな場所があった。王都の城壁は一部開放されていて、武器などは持ち込み禁止だが、上を歩くことができるらしい。
あとは人気のお店が立ち並ぶ南の大通りや、王国一歴史のある図書館など、いろいろと教えてもらうことができた。
「さて、いろいろと情報は聞けたけど、まずはどこを回ろうか。王都はとても広いから、教えてもらったところだと1日1か所しか回れなさそうだ」
受付の人に教えてもらった観光スポットは、どれも王都の東西南北にある有名な場所なので、1日で2か所以上回るのは難しいらしい。
回ろうと思えば回れるらしいが、せっかく来たのに観光もあまりできないのでは、さすがにもったいない。
ちなみに、冒険者ギルドと俺たちが泊まっているホテルは街の中心街にあるので、どこへ行くにもアクセスがとても良く、ありがたい。
「そうですね。全部見に行くにしても、どこから回りましょうか」
「俺的には、まず時計塔か城壁で上から王都を見渡してみたいな」
「それはいいですね。高いところから見る景色は、下から見るのとはまた違った景色を楽しめますしね」
「私も賛成です。高いところはとても気持ちがいいですから」
「じゃあ時計塔か城壁の二択になったけど、どっちに行く?」
「そうですね。私は城壁をおすすめします。最初は端から見渡した方が、王都の広さを実感できると思います」
そんな提案をしてきたのはエルシアだった。さすが世界旅行を目的として旅をしていただけあって、発想がとてもいい。
「それはいいな。確かに王都の広さを一番感じることができそうだ。2人も異論がなければ、城壁に向かうってことでいいか?」
「「はい」」
4人の意見がそろったので、俺たちは街の東側にある城壁へ向かった。
ちなみに王都内には、街の中心部から各方角へ向けて1時間ごとに馬車が走っている。もちろん冒険者ギルド前にも止まるため、そこから東門へ向かう馬車に乗り、城壁まで向かった。
前世でいうバスのようなもので、主要な施設の前で止まり、客が乗り降りする。料金は一律銀貨1枚だ。結構な値段がするため、利用する人は主に通勤や観光に来た人たちなのだそうだ。
街の中心から出発する時間と同時に、各方角からも中心へ向かう馬車が運行されているらしい。実に便利だ。
このルート以外にも、街の城壁の内側を一周する馬車ルートも存在するらしい。
俺たちは馬車に乗り、30分ほどで目的の東門に到着した。歩くと人混みなどで2時間ほどかかるところを、ずいぶん早く着くことができた。
俺たちが降りた後、馬車は門の外の広大な農地の先にある駐屯所まで向かうらしい。確かに仕事へ向かう兵士が数人乗っていた。
門の外は人通りが少なくなるため、中心街から門までの距離の倍ほどあるが、結構すぐに着くらしい。
馬車から降りた俺たちは、門のすぐ横にある城壁へ上がれる場所へ向かった。そこで荷物の確認を済ませてから、城壁の上へ上がった。
ちなみにロイについてひと悶着あったが、何とか一緒に城壁へ上がることができた。
「おぉ、めちゃくちゃいい眺めだな」
上へ上がると、そこからの眺めはとてもきれいだった。城壁の内側を見ると、王城へ向けて放射状に道が伸びており、外側を見ると、内側とは打って変わって広大な農地が広がっていた。
馬車に乗っているときはあまり見えなかったが、ところどころに風車が立っていて、とても見応えがあるものだった。
「こうして見ると、王城に向けて少しずつ坂になっているんだな」
すると、横で警備をしていた兵士のおっちゃんが教えてくれた。
「ここは昔、何もない平野だったが、王城を造るためにわざわざ土を盛ったっていう話があるぜ。何でも魔法まで駆使して造られたんだとか。まぁ、どこまで本当か分からないがな」
「そうなんですね。教えてくださり、ありがとうございます」
「いいってことよ」
俺たちは城壁を歩きながら、王都の景色を堪能した。
「風が抜けていて、とても気持ちがいいですね」
「こうして見ると、王城の付近は建物が少ないな。それに内側にもう一つ壁があるんだな」
「あれは確か貴族街ですね。あの辺りは有力貴族の屋敷が立ち並んでいるので、一軒一軒の間が結構空いているそうですよ」
「よく知ってたな、シノ。それにしても、貴族が住むところは屋敷に加えて庭も広いんだな」
「前にセルディアの街の図書館で調べたんです。もしかしたら何か依頼などで王都へ来ることがあるかもしれないと思いまして。貴族街だと知らずに入ってしまって、何か問題を起こしたら終わりですから」
「確かにな。ありがとう、シノ」
「さすがシノです。図書館で事前に調べていたとは、私とエルシアも見習わないといけませんね」
「そうですね」
俺たちは城壁の上で見て回れる場所を一周し、城壁から降りた。行きはここまで馬車で来たが、帰りは歩いて観光しながら帰ることにしていた。
ちょうど城壁から降りたタイミングで、正午を知らせる鐘が鳴った。
「いい時間だし、お昼ご飯にしようか。何か食べたいものはある?」
俺は3人に何が食べたいか聞いてみたが、「何でもいい」と言われたので、通りを歩いておいしそうな匂いのするお店に入った。
入ったお店は、なんと丼物屋さんだった。この世界はパンが主流だったので、こちらの世界に来てからは食べられなかったのだが、ついに食べることができる。
「マジか。あんまり期待していなかったけど、まさかお米があるなんて。王都だから、もしかしたらあるかもしれないとは思っていたけど」
「ご主人様、この料理を知っているんですか?」
いつも食事を作ってくれているシノが質問してきた。
「ああ。俺の故郷のご飯だな。お米って言って、パンの代わりになる主食を使った料理だ」
どうやら質問してきたシノだけではなく、2人もお米について知らなそうだ。シノは普段料理をしているので、気になったのだろう。
口で説明しても分からないと思ったので、実際に食べてもらうことにした。
中に入ると、そこは和風の内装になっていた。
「いらっしゃいませ。奥のテーブルへどうぞ」
カウンターの中にいる店主らしき人が元気よく声を掛けてくれた。店員は店主以外にも2、3人いて、お客さんは俺たち以外にも5、6人おり、カウンター席が埋まっていた。
俺たちは案内された席に座り、注文をした。メニューは前世でいう海鮮丼のようなものはなさそうだが、それ以外はそれっぽいものがありそうだ。
「ご注文は何にしますか?」
「じゃあ、おすすめでお願いします」
俺は何にするか決められなさそうだったので、おすすめにした。ほかの3人も俺と同じくおすすめにしていた。
少し待っていると、すぐに店員さんが運んできた。ぱっと見では野菜炒めをご飯の上にのせているようだ。ちなみに、さすがに食器は箸ではなくスプーンだった。
試しに一口食べてみると、とてもおいしかった。前世でいう回鍋肉みたいな味付けで、いい感じだ。
俺はスプーンが止まらず、一気に食べ切ってしまった。3人も夢中で食べていた。どうやら気に入ってくれたらしい。
「ご主人様、これはとてもおいしい料理ですね」
目を輝かせながら、シノがこちらに話しかけてきた。
「そうだろう。俺も久しぶりに食べられて感動してるよ」
「私の故郷でも食べられていなかった穀物ですね」
どうやらエルフの里でも、お米は食べられていなかったらしい。
産地が気になった俺は、お店の店主にお米の仕入れ先を聞いてみた。
「すみません。このお米はどこから仕入れたんですか? できれば自分たちで食べる用に購入したいのですが」
「お米っていうとライスのことか。この街だとグランツ商会で取り扱っているぞ。まぁ、店舗には並んでいないだろうけどな。産地については俺も詳しくは知らないが、この大陸の外って話だな」
まさかグランツ商会で扱っているとは。店頭に並んでいなかったから、ないものだと思っていたけど、一度でも聞いておくべきだった。
「教えてくださり、ありがとうございます。とてもおいしかったです」
食事を終えた俺たちは店を後にし、観光を続けながら宿へ戻った。
「いや~、疲れたな。いろんなお店を回って、いろいろ買っちゃったな」
「ご主人様。本当にこんなに買っていただいてよかったのですか?」
俺たちは帰り道も観光をしながら、気になったお店に入っては買い物をして回っていた。もちろん3人の分もそれなりに買ったのだが、どうやら遠慮しているらしい。
「いいんだよ。買ったお金は、元をたどれば3人が頑張って稼いだお金だからね」
そんな説明をして何とか納得してもらい、ご飯を食べてお風呂に入った後は、明日の観光に備えてすぐに眠った。
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