王都観光2日目
次の日、俺たちは宿の前から馬車に乗り込んだ。行先はみんなで話し合って図書館に決めていた。図書館で情報を集めつつ、ほかにも回りたい場所も出てくるのではないかと思い、先に行くことにしたのだ。
ちなみに図書館は街の北側、中心からあまり遠くない位置にある。図書館の周りには王国一の学園があり、朝早くから制服を着て歩いている学生を見かけた。
学園についてだが、12歳から15歳の子供が通うことができ、試験に受かり学費を払うことができれば、貴族平民関係なく入学することができるらしい。しかし、入試の難易度が高いらしく、生徒は半数以上が貴族なのだとか。
貴族なのに、この学園の試験に落ちると親から怒られる子供もいるらしい。
そんな風に街を眺めていると、すぐに図書館に到着した。
図書館は朝9時から開いているらしいが、まだ時間まで少しあったので、近くの学園の前まで歩いてみることにした。
学園は想像の数倍大きかった。インターネットによると、生徒数は500人弱らしいが、人数に比べて一つ一つの施設の大きさがとんでもなかった。
普段は生徒、教師、勤務者など以外は立ち入り禁止なのだそうだが、王国側か学園側に認められれば入ることができるらしい。
それ以外にも、年に一度の学園祭の期間は、厳重な警備の元、一般の人の立ち入りが許可されている。
「どうやら学園祭以外のタイミングで入るのは難しいみたいだな。今年の学園祭はちょうど先月に終わったみたいだし、もし来るなら一年後だな」
「そうなんですね。それにしても、ご主人様よくそんなことをご存じでしたね」
「まぁ、そこらへんはあんまり詮索しないでくれ」
リュゼ達3人は俺の奴隷なので、口外される心配がないからインターネットについて教えてもいいかもしれないが、不特定多数の人がいる状況であまり話さないほうがいいだろう。
「そろそろいい時間だし、図書館の方に戻ろうか」
学園の前でいろいろ話していたら、すぐに時間になった。
「学園の建物も大きかったけど、こっちもだいぶ大きいな」
「さすが王国一歴史のある図書館ですね。セルディアの街の物とは全然違います」
休みの日に図書館に出掛けていることがあるシノは、とても興味津々だ。
「中に入ったら自由行動にしようか。一応、図書館内は戦闘行為禁止だから安全だと思うし」
「そうですね。あの図書館前に立っている護衛の方たちは明らかに私たちより強いでしょうし、大丈夫だと思います」
そんなことを伝えてきたのはリュゼだ。どうやら見るだけで相手がどれくらい強いのか、大体わかるらしい。俺には全くさっぱりだ。
「じゃあ昼食のタイミングで一度集まろうか。正午の鐘が鳴ったら正面入り口まで来てくれ」
「「「はい(わかりました)」」」
そう言って俺たちは図書館の中に入り、別行動をすることにした。ちなみに図書館の入場料は一人銀貨1枚だった。さすがに王都は物価が高いな。
図書館には朝9時なのにもかかわらず、結構な人が来ていた。みんな学者っぽい恰好をしていて、俺たちみたいな冒険者の恰好をしている人など一人も見つからなかった。
俺はまず、この国について調べることにした。魔法についてなんかも気になったが、そっちはエルシアが向かっているようなので、俺はこっちに来た。
歴史なんてインターネットで調べればいいじゃんかって? それだと自分が気になった情報しか得られないから、たまには本で調べるのも重要だ。
とりあえず、俺はこの国の歴史の本を手に取った。
「まずは歴史を調べないとな」
今から300年ほど前、まだこの大陸の南側が魔物に支配されていた時代、この大陸の人類のほとんどは白龍山脈を挟んで大陸北側の厳しい環境で暮らしていた。
当時、今の帝国が変わらず大陸北側を支配していたが、そこの王族の一人が当時の帝国の体制に不満を持ち、兵をあげた。
そうして帝国はその王族によって支配された。その戦いで負け、逃げ延びた王族の一部が南部に移り住み、今の王国を築き上げた。
「ざっとこんな感じか? クーデターを起こされて負けた王族がここに国を築いたってことか。でも今の帝国の噂を聞く感じ、あまりよさそうな雰囲気じゃないんだよな」
街の酒場などで、たまに帝国から逃げてきた人たちがいるのだが、その人たちの会話を聞くに、どうやら帝国では人族至上主義なるものがあるらしい。
名前から察するに、人族以外の種族を軽視しているのだろう。以前気になってインターネットで調べたところ、人族以外の種族は全員見つかり次第、奴隷にされているらしい。
また、帝国は他種族の奴隷を国外から高値で取引しているらしい。もしかしたらエルシアを奴隷にした奴らも、帝国に売りさばこうとしていたのではないだろうか。
「まぁ、そこらへんは帝国に行く用事ができたタイミングで考えればいいか」
次に俺はこの国の地理について調べようとしたのだが、図書館にはとても大雑把なものしか置いていなかった。
気になってインターネットで理由を調べたところ、地図は軍事作戦などで悪用されないよう、平民の見られるところには置いていないらしい。
それはそうだ。もし他国の人間が簡単に地図を入手出来てしまっては、戦争で不利になってしまう。
なので俺は、いったん詳しい地図はあきらめて、ほかのことを調べることにした。
次に気になっていたのは魔道具についてだ。俺はとりあえず水洗式のトイレとお風呂を作ることができたが、まだ満足していない。前世でいう家電なんかの再現を行いたいと思っている。
今考えているのは、エアコンや扇風機などの空調設備系か、洗濯機や食洗機、冷蔵庫など家事に使うものなどだ。
現状、冷蔵庫に似たような仕組みの物はあるらしいが、燃費が悪いうえに大きさがすごいらしい。なので、それをなんとか小型化して家で使えるようにしたいと思っている。
とりあえず、一から作るよりも改良する方が簡単なので、冷蔵庫に似た魔道具について調べることにした。
夢中になって魔道具について調べていると、外で正午を知らせる鐘が鳴った。
「もうこんな時間か。一度みんなと合流して昼食をとろう」
俺は一度本を片付けて、正面入り口に向かった。
入り口に着くと、先に3人が待っていた。
「お待たせ。ちょっと遅かったかな?」
「いえ、ご主人様は気になさらないでください」
「そうか。じゃあ、お昼をどうしようか。この近くだと確か冒険者ギルドの受付の人がおすすめのカフェがあるって言ってたし、そこにしてみようか?」
「いいですね。賛成です」
エルシアが答えて、ほかの2人も頷いたので、俺たちはおすすめされたカフェに向かった。エルシアは甘いものに目がないので、ずっと行きたかったのだろう。
ちなみに図書館の入場料だが、一回払うとその日のうちは何度も出入り自由だそうなので、とてもありがたい。
おすすめされたカフェは、とてもおしゃれな場所だった。中にはカップルか女性客しか見当たらず、少し気まずくなりながらも案内された席に着いた。
メニューは前世のカフェとあまり変わらなかった。注文は、俺はサンドイッチ、リュゼとシノがフレンチトースト、エルシアがホットケーキを頼んでいた。
ほかにもケーキやパフェなどがあったが、エルシアもさすがにお昼ご飯にデザートを食べようとは思わなかったらしい。まぁ、トッピングで甘いものをたくさん付けていたんだけどね。
「これは美味しいな」
出てきたサンドイッチは結構ボリュームがあり、とてもおいしかった。ほかの3人もおいしそうに食べている。
「ご主人様。デザートも追加で頼んでもいいですか?」
ホットケーキを軽々食べきったエルシアが、そんなことを聞いてきた。
「ホットケーキにもいろいろトッピングしてたみたいだけど、まだ食べるの?」
「そんな、ご主人様。私を食いしん坊みたいな言い方しないでください。甘いものはいくらでも食べられるだけです」
「まぁいいけど、あと一つだけな」
そう言うと、エルシアは嬉しそうにメニューを選び始めた。
リュゼとシノの2人はというと、もう満足らしく、俺が「何かいる?」という視線を送ると、首を横に振っていた。
エルシアが追加のデザートを食べきるのを待ち、俺たちは再び図書館へ戻った。昼食中に各自どこを回ったのかを共有して、午後に見て回るところを決めた。
俺とエルシアは午前と同じく、魔道具と魔法の本を見て回ることにしていた。両ジャンルとも本の数がとてつもないので、続けて見ることにしたのだ。
シノはというと、午前中は料理の本などを調べていたのだが、午後からはシノにいろいろな街の情報を集めてもらうことにした。
特に調べてほしいと伝えたのはオルーシスの街についてだ。あの街にはダンジョンやオークション会場など、いろんな場所があるので、俺たちが将来行くことになりそうだと思ったからだ。
ちなみにリュゼは午前中、武術や魔物に関する本を読んでいたらしい。さすが戦闘好きなだけあって、読む本も戦闘に関するものだった。
午後も図書館にこもって情報収集を続けた俺たちは、夕方になってようやく図書館から出てきた。
「いやー、それにしても面白かったけど疲れたなぁ。さすがにあれだけいろんな本を読むと頭がパンクしそうだ」
「そうですか? 私は王都にいる期間中、毎日通いたいくらいです」
そんなことを言っているのはシノだ。どうやら本当に本が好きらしい。
「俺はもう当分は図書館に行かなくていいかな。もしこっちで自由時間ができたら、シノは図書館に行ってきたらいいさ」
リュゼとエルシアもぐったりしているので、もし自由時間ができても図書館には行かないだろう。
そのあと宿に戻った俺たちは、読書で疲れ果てていたので、ご飯を食べてすぐに寝てしまった。
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