オークション会場
次の日、俺たちはオルーシスの街の散策をしていた。ゴズさんの好意により、1日長く泊まれるようにしてくれたので、今日はオークション会場を見に行こうとしている。
「確かこっちにあるって言ってたよな」
俺たちは教えてもらった通りに街の中を散策し、オークション会場を目指していた。
「はい。教えてもらった通りなら、もうそろそろ見えてくるはずです」
少し進んでいると、突き当たりにとても大きな建物が見えてきた。
「でかいな。貴族の屋敷と比べても、だいぶ大きいぞ」
俺の正面にある建物は、確かにこの世界に来てから見た建物の中で一番大きかった。
「確か正面の入り口から入って中を観覧できるみたいですよ。今はオークションのシーズンではないので、自由に出入りできるみたいです」
ちなみに、オークションをやっていない期間、このオークション会場では普通に商品の売買ができるらしい。珍しい魔道具や武具、アクセサリーなど、普通のお店では並ぶことがないとても貴重なものもあるのだとか。中には、次のオークションに出品するものの展示などもあるらしい。
「とりあえず会場を一回りしてから、売っているものを見てみようか」
そう決めた俺たちは、入り口の横にある販売所を通り過ぎて先に中に入って行った。
正面には大きな扉が何個かあり、その内側はとても大きなホールになっていた。中は一階席だけではなく、二階席らしきものがあった。
「中は豪華だな。多分、上の階は貴族や大富豪などが使うVIP席だろ。明らかに作りこみが違う」
普通の一階席でも十分豪華なつくりをしているのに、二階席は明らかに雰囲気が違った。一階席にはない仕切りなどがあり、下からはあまりのぞけないように設計されている。
ホールの端にいる係の人に二階席の観覧をできないか聞いてみると、二階席の中でも一番グレードの低い席なら見てもいいという許可を得た。ただ、監視つきらしい。
別に見られて困るようなことはするつもりがないので、見られるだけでとても満足だ。
一番低いグレードの部屋しか見られないのは、防犯上の理由だろう。もし前もって暗殺者などが下見に来れてしまったら、オークション中に襲われる可能性があり得るからだ。
一階を見終えた俺たちは、もう一度係の人に声をかけ、監視のもと二階席を見に行くことができた。二階席は下から見た通り部屋が分かれており、隣の様子は見えないようになっていた。
下からはあまり見えなかったが、逆にこちらからは下の様子をはっきりと見ることができた。
「これはすごいな。ちなみに、この席を使う人はどのような人たちなんですか?」
俺は案内兼監視役の人に質問してみた。
「そうですね。主に上級貴族や、王家御用達の大商会、Sランクパーティーの方など、オークションに多数の貢献をしてくださった方たちがご利用されます」
てっきり貴族なら誰でも使える部屋だと思っていたのだが、どうやら貴族の中でも一握りの人しか使用できないらしい。
そんなところに入れるとは、ダメもとで聞いてみた甲斐はあった。
そのあと、二階席も満喫した俺たちは、オークションが行われるステージの裏側に向かった。
ステージの裏には、表のホールと同じくらいか、それより大きな空間が広がっていた。ただ、表のホールとは違って、こっちは質素なつくりになっていた。
「こっちは出品されるものとかの待機場所だったよな」
「はい、そのはずです。この部屋はさっきのホールとは違って、防犯が意識されたつくりになっていますね。内側から守りやすくなっています」
俺にはあまりわからないが、リュゼがそんなことを言ってきた。
「そうですね。外からのぞける場所が少なく、逆に入口に向けて攻撃できる場所かつ、隠れるのに適した場所がいくつもあります」
今度はシノが、斥候の視点から説明をしてくれた。
俺はあまりわからないのでエルシアに顔を向けると、エルシアも何が何だかわからないという顔をしていた。
「そうか。俺にはわからないな」
「私も全く。さっぱりわかりません」
そのあと、裏側を軽く見て回った俺たちはオークション会場の観覧を終え、最後に販売所によって売っているものを見に行ってみた。
販売所の中は結構な人数がおり、中には護衛がたくさんついた人たちもいるので、貴族もいるのだろう。
売っている商品を試しに見てみると、外で売っているものよりも0が数個多い値段のものばかりだった。
「マジか。高すぎるだろ」
以前、俺がオークションに代理出品してもらったクリスタルホーンラビットの角レベルの値段か、それ以上のものがごろごろ置かれていた。
本当はもう少し見て回りたかったが、値段に気後れした俺たちは、さっさと販売所を後にした。
「なんかあそこにいると歩くのにも緊張するな。もし触って壊しでもしたら、奴隷落ちだけじゃすまなそうだ」
「そうですね。少ししかいませんでしたが、とても落ち着きませんでした」
三人の顔を見ても、どうやらあそこは場違いすぎて疲れているように見えた。
「いったんどっかのお店に入って、昼食がてら休憩しよっか」
俺たちはオークション会場の近場にあったカフェに入り、昼食を取った。
「午後はどうしよっか。俺はオークション会場を見られたから、あとは三人が行きたいところを回ろう。ほかにも観光名所があるみたいだけど、どこか行きたい場所はある?」
「そうですね。私は探索者ギルドに行ってみたいです。概要は冒険者とあまり変わらないようですが、ダンジョンの中にどのような魔物がいるかなど、とても気になります」
そんなことを言ってきたのはリュゼだ。
「私は洋服屋さんを見たいです。いまのこの国の流行を抑えておきたいと思います」
シノはどうやら、自分で作る服のアイディアを見に行きたいらしい。
「私は図書館に行きたいです。この街の歴史や、魔法についての本などを見てみたいと思います」
エルシアは世界中を見て回るという目的を果たすためにも、図書館でいろんな書物を読みたいのだろう。
「確かこの街にある図書館って、とても大きいんだよね? 今から行くとあまり時間が取れないから、エルシアには悪いけど、図書館は帰りの護衛でこの街を通るときでもいいかな?」
「わかりました。私も正直、短時間で図書館を見て回るのは大変だと思うので賛成です」
エルシアがそう賛同してくれたので、俺たちは探索者ギルドと洋服屋さんに行くことにした。
「まずはここから近い探索者ギルドのほうに先に行こうか」
行く場所が決まった俺たちは、カフェを出てまずは探索者ギルドに向かった。
探索者ギルドは作りや依頼ボードなど、基本的には同じような感じになっていた。ただ、討伐の魔物の種類や採取物など、この地域の地上では取れない素材の依頼が出ているので、どうやら地上とダンジョン内の生態系は全くの別物なのだろう。
探索者ギルドを見終わった俺たちは、次に洋服屋さんに向かった。洋服屋さんでは主にシノとロイが服を見ていて、俺とリュゼ、エルシアの三人は、たまに聞かれる服の好みに答えるだけだった。
そんなふうに一日中観光をした俺たちは、満足して宿に戻った。
宿に戻ると、ちょうど夕食の始まる時間らしく、ゴズさんが酒を飲んでいた。
「おう、レイン。こっちにこい。一緒に飲まねぇか?」
「ゴズさん、前にも言いましたが、俺はお酒あまり好きじゃないんで遠慮させてもらいますよ。それに、明日の朝には出発なので、ゴズさんもほどほどにしておいてくださいね」
俺たちはゴズさんと同じ席に座りはしたものの、お酒は飲まず、食事だけ共にした。
明日の朝が早いということもあり、すぐに食事を済ませ、部屋に戻り眠りについた。
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