カルムの街の宿で~奴隷side~
王都への護衛依頼で隣町のカルムの宿に泊まった夜のこと。リュゼ、シノ、エルシアの三人は、夜、ベッドの上で話していた。
「そう言えば、何気に同じ部屋に泊まることってなかなかありませんでしたね」
「確かにそうですね。ご主人様は優しいので、奴隷の私たちにも一人一部屋与えて下さってますから」
「私は無理やり奴隷にされてしまったので他のことは知りませんが、ここはやはりとてもいい環境なんですね」
「そうですね。私とシノがいた商会は比較的よいところでしたが、それでも4人部屋でしたね」
「同僚の先輩に聞きましたが、ほかの場所だと雑魚寝で10人一緒ということもあるらしいですよ。さすがに男女は別らしいですが」
「そう言えば、お二人はどうやってご主人様に購入されたのですか?」
「そうですね。大した事はありませんが、普通に戦闘奴隷として購入されました。まぁ、自分で売り込んだので、買わせたといったほうが正しいと思いますが」
「リュゼさんは、どうして自分を売り込むようなことを?」
「それが、シノはわかると思いますが、ご主人様の前に私たちを購入するか悩んでいた方がいたのですが、それがとてつもなく悪い噂しかない貴族の方でして。それに、私たちを見る目がどうしても気色が悪かったんです」
「確かにあれは酷かったです。私たちをそういう目的で買おうとしているのが明らかでしたね」
「どうしてもあの貴族に買われるのは嫌だったので、自分から売り込んだんです。私たちも奴隷とはいえ女性です。あんな貴族の相手なんてしたくありません」
「それで自分から買われに行ったんですね。それにしても、ご主人様って私たちに全く手を出して来る気配がありませんよね」
「正直、自分の容姿に自信がなくなりそうです。ご主人様の相手ならいくらでも構いませんのに」
「リュゼさんはいいじゃないですか。スタイルも良くて出るとこ出てますし。私なんて何もありませんから」
そんな事を言いながら、シノがリュゼの胸元を睨んでいた。
「そんな事を言うなんて、お二人はご主人様のことが好きなんですか?」
エルシアがそんな事を言うと、2人が顔を真っ赤にした。
「そ、そんな事あるわけないじゃないですか。私たちは主人と奴隷。恋愛感情を持つなんて」
「そ、そうです。リュゼさんの言う通りです」
「なら、私がご主人様に言い寄ってもいいですね」
「「それはだめ(です)!!」」
2人が声を合わせてそんな事を言った。
「ほら、二人ともご主人様のことが好きじゃないですか。それで、二人はご主人様の何処が好きなんですか?」
「それは、奴隷なのに家族みたいに接してくれるところとか、わざわざ必要ないのに新品の物を買ってくれたり」
「私は何でも褒めてくれるところが好きです!」
「二人とも、良くそんな恥ずかしいこと言えるわね。さっきまで好きだとも言えなかったのに」
エルシアがからかうと、二人の耳がかぁーっと赤くなった。
「それで、二人はご主人様にアピールしないの?」
「そ、それは」
「逆に、エルシアさんはご主人様の事が好きなんですか?」
リュゼが詰まったが、シノがエルシアに聞き返した。
「もちろんです。絶望的状況から救って下さったのもありますが、救って下さったあとも優しく、どうするか選択肢を示して下さったり」
「あなたも大概恥ずかしいこと言ってるじゃない」
リュゼが言い返すと、今度はエルシアが顔を赤くする番だった。
「これで三人ともご主人様の事が好きなことがわかりましたが、私は譲りませんよ。私のほうが後から入ったので、一応義理を通すためにこの話を二人としたのですが、ここからは正々堂々勝負です」
「あなたとはご主人様と過ごしてきた時間の差があります。絶対に譲りません」
「私もです。リュゼさんにも負けませんよ」
この日から三人のアピールが日に日に激しくなり、レインが辟易するのはまた別の話。
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