盗賊討伐
次の日の朝早く、俺たちはグランツ商会に馬車を借りて出発した。何気に馬車に乗るのは初めてだ。
今回乗る馬車は貴族が乗るような豪華な馬車ではなく、荷台に人が乗れるスペースを作った簡易的な馬車だ。これでも歩くより十分楽に移動ができる。
操縦はリュゼに任せて、俺は馬車に乗っている間に魔道具作成を行うことにした。
シノはこの一か月間、ロイの糸を使った洋服作成を頼んでいるのだが、ロイヤルシルクスパイダーの糸を扱うためには高い裁縫レベルが必要らしく、今日もレベル上げに勤しんでいた。
今回作ろうとしている魔道具はランプだ。この世界で普及しているランプは固定型のものばかりで、持ち運び型のものはほとんどない。
なぜなら、魔道回路の作成に必要なトレント材では衝撃に耐えられないからだ。なので魔鉄を使うしか方法がなく、値段が高騰してしまうため、そもそも作られることが少ないらしい。
持ち運び型の魔導ランプが使われるのは軍の移動くらいらしい。それ以外はろうそくを使ったランプを使用するんだとか。
しかし、ろうそくのランプも風で消えてしまったり、光量が弱かったりと問題があるため、自作の魔導ランプを作ることにしたのだ。
ちなみに家でもうほとんど作ってきていて、今からやる作業は組み立てと魔道回路を描くくらいだ。ちなみにランプの魔道回路はゴズさんのところで嫌というほど作らされたので、体が覚えている。
そうして俺は1時間も経たずに魔導ランプを作成し終えた。
「リュゼ、お疲れ様。何か変わったことはない?」
「はい、大丈夫です。それにしてもご主人様はすごいですね」
「何が?」
「そんなふうにすごい魔道具をパパっと作ってしまうところです。本来、そんなにすごい魔導具を作れる人は国で働けるくらいの人なんですよ」
「そうなんだ。でも俺に教えてくれたゴズさんはもっとすごかったよ。あれでもゴズさんはもともと国家研究所で働いてたって言ってたっけ?」
「それでご主人様、そろそろやりますか? 人通りも少なくなってきましたし、練習するにはよさそうですよ」
そう、前もってリュゼと話していたのだが、馬の操縦を習いたいと言っていたのだ。
ここまではセルディアの近くの村に行く人だったり、冒険者だったり、歩きで街道を移動している人たちもいたのだが、さすがにここまで来ると馬車しかいない。
「わかった。何かコツはある?」
「そうですね。まずは馬に任せるでいいと思いますよ。馬は賢い生き物ですので。それにグランツ商会の馬はよく教育されてますので、安心して任せられます」
俺はリュゼに言われた通りに操作した。
そうして練習しているうちに、俺たちは一つ目の宿泊スペースにたどり着いた。
「結構疲れたな。やっぱり馬車を操縦するのは気を張るな」
「とても上手でしたよ、ご主人様。初めてとは思えませんでした」
「私も後ろに乗っていましたが、全然揺れなかったのでスキル上げがはかどりましたよ」
こんなに褒めてもらってなんだが、操縦を始めてすぐに馬術のスキルを手に入れてしまったのは内緒にしておこう。それに今日一日中操縦して、レベルも2になっていた。
「よし、今日はさっさと用意をして明日に備えようか。見張りの順番は決めた通りでいいね」
「「はい」」
そうして俺たちはテントと夕食の準備をして、その日は終えた。
見張りは俺が最初で、一番楽なポジションをさせてもらった。俺が一番きついところをやろうと思ったのだが、二人が頑なに譲らなかったので仕方なくこの時間になったのだ。
次の日、何もなかった俺たちは馬車をもう一度走らせて盗賊たちを探しに行った。今日は馬車を走らせながら、定期的にシノに森の中に入ってもらって軽く探索を行った。
ちょうどお昼時にどこかで一度止まってご飯を食べようとしていたのだが、後ろの荷台のシノから声がかかった。
「ご主人様、多分この馬車狙われています。この街道の前方右側の森に複数の気配があります。多分依頼対象の盗賊だと思われます」
多分、女二人男一人でカモだと思ったのだろう。
「ご主人様、一度馬車の中に入ってください。盗賊というのは男は殺して女は売り物にする奴らです。もしご主人様が御者をやっていると、弓で狙われる可能性があります」
「そうか、わかった。シノ、左側には誰もいないんだな」
「はい。気配は右側にしかありません」
「よし。ロイ、左側の藪に入って後ろをついてきてくれ。馬車の速度を少し落とすからついてこれるはずだ。合図したら後ろから盗賊を襲ってくれ」
そう命令して、前から見えないよう後ろからロイをそっと下ろした。
シノが教えてくれた場所から五分くらい経った時、馬車が囲まれた。
「おい、そこの馬車止まれ。全員中から降りてこい」
そう言われた俺たちは、タイミングを合わせたように戦闘を始めた。俺はロイに合図を出して後ろから襲わせ、俺たちはそれに合わせて正面から戦う。
囲んでいた盗賊たちは後ろから来たロイの攻撃で一瞬で崩壊した。
「うわああああああああああ。お頭、後ろから魔物が!」
「どうなってるんだ? こんなはずじゃ」
盗賊たちは混乱して総崩れになった。俺たちはそこを順番に倒していく。数分もすれば盗賊たちは全員倒れていた。
「うっ。やっぱり人間を殺すのはキツイな」
俺は人の死体を見て少し吐きそうになってしまった。
「ご主人様、あとは私たちがやっておくので馬車で休んでいてください」
「リュゼさん、死体の処理は任せました。私は生き残った一人を尋問しておきます。この人から盗賊のアジトの場所を聞き出せるといいのですが」
(二人は俺と違ってタフだ。慣れているのもあるのかもしれないが、やはり厳しい環境で育ってきたのだろう。)
俺は三十分もすれば気分も落ち着いたので死体の処理を手伝った。三十分で落ち着いたのは多分神様の加護のおかげだろう。もし何もなかったら数日は引きこもっていた自信がある。
途中、商人が何回か通ったが、軽く事情を話すと感謝された。どうやら盗賊の被害にあっていた人たちだったらしい。
「ご主人様、聞き終わりました。アジトはここからちょうど森の中を北にまっすぐ進んだところにあるらしいです。残りは四人ほど、アジトを守っている人がいるだけだそうです」
シノが尋問を終えたのか戻ってきた。
「わかった。一度全部終わったらすぐに行こう。遅すぎるとアジトにいる仲間に疑われかねない。逃げないうちに行かないと」
「そうですね。急ぎましょう。シノも死体の処理を手伝ってください」
俺たちは十分ほどで死体処理を終え、盗賊のアジトに向かった。アジトまでの道はわかりにくいように舗装されており、馬車一台がぎりぎり通り抜けられた。
盗賊たちが襲った馬車を持って帰る道だろう。
「そろそろアジト付近だと思います。気配察知に数人が引っ掛かったのでこれだと思います。私が一度隠密で見てきますので、お待ちください」
俺とリュゼはそこで馬車を止め、いつでもいけるようにした。
五分もしないうちにシノが戻ってきた。
「戻りました、ご主人様。アジトは情報通り岩場にありました。見張りが二人、中に二人との情報でしたが、中にはほかに数人の気配がありました。もしかしたら中に捕らえられている人がいるかもしれません」
「そうか。中の人たちを人質にされたら厄介だな。ここはロイに行ってもらった方がよさそうだな。魔物を倒すために中から応援を呼んだところを一気に叩こう。ロイ、最初は一人わざと残してくれ。時間をかけるんだ」
ロイにそう命じて、俺たちは茂みに隠れた。俺たちが位置に着くとロイが盗賊の前に出た。すると盗賊が、
「おい、魔物が出たぞ。くそ、お頭たちがいないときに。おい、助けてくれ」
俺たちの予想通り、盗賊たちは中から援軍を呼んだ。
「ちっ。シルクスパイダーか。めんどくさい魔物だ。全員で囲むぞ」
盗賊たちが全員出てきたところで俺たちも出て戦おうとしたのだが、ロイが一瞬で全滅させてしまった。
「ロイ強いな」
「ですね。まさか私たちが出ていく前に全滅させてしまうとは思ってもいませんでした」
「ご主人様、私が一度中も見てきます。ここで少し待っていてください。一応中から盗賊の残党が出てくるかもしれないので気を付けてください」
そう言ってシノが隠密を起動して中に入っていった。その間、俺とリュゼは死体処理を行った。
この作品の続きが気になる、面白いと思った方はぜひ下の☆をクリックとブックマーク登録して応援していただけると嬉しいです!!!




