冒険者ランク昇級試験
ロイが俺たちと一緒に暮らし始めてから約一か月程たった。その日は朝から冒険者ギルドに行って依頼を受けようとしていたのだが、その前にセレナさんに呼び止められた。
「レインさん、少しいいですか?」
そう呼ばれた俺たちは、セレナさんの後をついて個室に入った。
「それで、なんでしょうか」
俺は個室に呼ばれて話をするような覚えがないので、何の話だか分からなかった。
「そうですね。まずレインさんは、冒険者ランク昇級試験というものを知っていますか?」
そう問われた俺は分からなかったので、首を横に振った。
「冒険者ランク昇級試験は、D~C、B~A、A~Sのランクアップの時に行われる試験です。今回はその試験をレインさんに受けていただきたいと思いまして。別に時期はいつでも構いませんが、できれば一週間以内に受けていただけると幸いです。依頼内容は、受けると言われた時点でお教えします」
どうやらギルドは俺にCランクになってほしいらしい。確かD~Cランクの試験は盗賊の討伐だと、前に教えてもらったはずだ。
でも今まで人間を相手に戦ったことがないので、結構不安だ。しかし、この世界で生きていくには人間との戦いもできるようにならなければいけないだろう。
「そうですね。準備をしたいので今日今から受けるわけにはいきませんが、一週間以内には受けに来ますね」
そう伝えて、その日は別の依頼を受けた。
依頼を終えて屋敷に帰った後、二人と話し合うことにした。
「今日セレナさんに言われたことだけど、ランクアップの依頼は受けようと思ってる。それにあたって対人戦になる可能性が高いと思うんだけど、二人は人を相手に戦える?」
「私たちは問題ありません。戦闘奴隷として売られる者たちは、全員対人戦闘および殺人の経験があります。もちろん殺したのは死刑囚などの殺されるべき人たちだけですが」
「それに盗賊の討伐ですが、冒険者ギルドから提出される依頼はすべて殺人の許可が出ているので、殺しても罪に問われることはありません」
そうリュゼとシノが教えてくれた。
殺してもいい人を殺すとしても、やはり三か月前まで日本で安全に暮らしていた俺にとっては厳しいところがあった。
「あの、ご主人様。もし人を殺すのに抵抗があるなら、私たちに任せていただければすべて倒しますが」
気を利かせたリュゼがそんなことを提案してきた。しかし、この世界で生きていくには通らなければならない道なので、この機会に経験した方がいいだろう。
「いや、いいよ。自分で人を殺す経験をしておかないと」
そのあと話して、明日冒険者ランク昇格試験の依頼を受けることに決めた。
次の日の朝、冒険者ギルドに着いてセレナさんに話しかけた。
「セレナさん、冒険者ランク昇格試験を受けることにしたので、依頼の詳細を教えてください」
「わかりました。では、ついてきてください」
そう言われて案内された部屋は、昨日とおんなじ部屋だった。
「今回レインさんのパーティーに受けてもらうのは盗賊討伐の依頼です。内容は、このセルディアの街を出て西の街道を進んでいった先で、ちょうどセルディアの街と隣町カルムの中間地点あたりです。少し離れたところなので、街の外での外泊になります」
「わかりました。依頼を受けます」
「それでは期間は一週間ですので、それまでに依頼を終えて報告しに来てください」
俺たちはセレナさんにこの部屋を使っていいか聞き、許可を得たので、ここで作戦を立てることにした。
まず俺はインターネットを使って情報を調べた。
セルディアとカルムの距離だが、大体馬車で三日らしい。王国の中心部に行けば馬車で一日おきの距離に街があるらしいが、ここは辺境なので仕方がないだろう。
一応、馬車で一日おきの場所に水場と外泊ができるスペースが作られているらしい。
ちょうどその宿泊スペースのところで盗賊の被害が出ているらしい。二か所ある宿泊スペースの両方で被害が出ているので、その中間のどこかにあると言われている。ちなみにそこは定期的に騎士団が巡回して安全を確保しているのだが、騎士団がいるときは毎回出てこないのだとか。
だが、騎士を盗賊の捜索に出すには時間がかかりすぎてしまうため、こういう仕事は冒険者に回ってくるらしい。
「とりあえず今日は外泊の準備だけして、出発は明日にしようか。何か買っておいた方がいいものってあるかな?」
そう二人に尋ねた。
「そうですね。まずは移動のための馬車を借りないといけませんね。全員が馬に乗れるなら馬を三頭でもいいのですが」
そうリュゼが教えてくれた。
「ごめん、俺、乗馬の経験はないな」
「すみません。私も乗れないです」
どうやらシノも乗馬の経験はないらしい。
「でしたら私が二頭引きの馬車の操縦ができますので、それでいきましょう。馬車を借りるのはグランツ商会がいいと思います。あそこほど信頼できる商会は、この国にはないと思います」
確かにグレンさんにもいろいろお世話になったし、グランツ商会で借りるとしよう。
「それならテントやその他もろもろの道具も、グランツ商会でそろえるのがいいと思います。少し値は張るかもしれませんが、いい商品がそろっていますよ」
シノの言う通り、この街で一番品揃えがいいのもあそこだろう。
ということで、俺たちはグランツ商会に向かうことにした。
商会に入ると、すぐにグレンさんが話しかけてきた。一体どこから俺たちに気づいたのだろうか。
「いらっしゃいませ、レイン様。今日はどういったものをお探しですか?」
「まずは二頭引きの馬車を一台貸してもらいたい。期間は明日から一週間だ。その期間、馬が食べる餌なども一緒に買わせてほしい。それと外泊の予定があるから、それに必要な道具を一式頼む」
「わかりました。こちらですべてそろいますので、少々お待ちください」
そう言われて、俺たちはまた奥の部屋に招待された。
少し待っていると、グレンさんとその後ろにいろいろなものを持った従業員が三人入ってきた。
「こちら外泊用の道具一式です。それと馬車の契約書を持ってきました。内容に間違いがないか確認したら、サインをお願いします」
そう言われて道具一式と契約書を渡された。中身を確認した俺はサインをして、グレンさんに渡した。
その間、二人には道具の方の確認をしてもらった。
「代金は道具一式が金貨三枚。馬車の方がレンタル料金貨五枚と、餌代が金貨一枚と銀貨四枚です。馬車のレンタル料ですが、こちら何事もなく返却していただければ半額お返しいたします」
「わかりました。何から何までありがとうございました」
そう伝えて、俺たちは買ったものをマジックバッグに詰めると、商会を後にして屋敷に戻った。
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