魔道具作製その1
次の日、俺は工房に来ていた。今回のキングウェアウルフの討伐で、数日は何もせずに生活できるだけのお金が入ったので、今日こそは俺の夢に向けて生産職スキルのレベルを上げるのだ。
まず最初は、お風呂作りに取り組むことにした。いきなり浴槽を作るのではなく、まずはシャワーを作ってみることにした。
俺が考えているものは、水と火の魔石を使ってお湯を出し、それを上から流すという簡単なものだ。魔道回路のほうはゴズさんにもらった本に載っていたので、何とかなりそうだった。
問題は、シャワーヘッドの部分の作り方と、魔道回路を描くトレント材が、今回はお湯を使うので木では腐ってしまうことだ。
「とりあえず、シャワーヘッドの部分を作るために鍛冶スキルのレベルを上げるか」
俺は炉に火をつけ、ひたすら鉱石をインゴットにする作業を始めた。俺が先日買ったインゴットの種類は三種類で、鉄、鋼鉄、魔鉄だ。
まずは加工が一番簡単な鉄から始めた。
ちなみに加工の難しさは鉄<鋼鉄<魔鉄の順番だ。その上に魔鋼鉄<ミスリルという鉱石もあるが、その二つは加工が難しすぎて、そもそも扱える鍛冶師がとても少ないらしい。
ちなみにシャワーを作るためには、魔鉄の加工までできるようにしないと難しいだろう。なぜ魔鉄なのかというと、トレント材の次に魔道回路作製に使える素材が魔鉄だからだ。
魔鋼鉄とミスリルも魔力の通りは良いのだが、流石に加工できるようになるには時間がかかりすぎる。
朝から作業を始めて、お昼時になってようやく鍛冶のスキルレベルが上がった。
ちょうどいいタイミングでシノが昼食に呼びにきてくれたため、一度屋敷に戻ることにした。
ちなみにシノとリュゼには、それぞれ仕事を任せていた。シノには裁縫スキルを活かして鎧の下に着る丈夫な服の作成を頼んでおり、リュゼには冒険者ギルドに行って昨日の討伐報酬の受け取りと買い物を頼んでいた。
「リュゼ、報酬はいくらだった?」
「一人当たり金貨五枚だったので、合計で金貨十五枚でした」
今回の大規模討伐が初めてだった俺には、これが高いのか安いのか分からなかった。
「それとこちら、頼まれた物とお釣りの金貨十三枚です」
「ありがとう。それで、シノの方の進捗はどうだい?」
「今持っている素材では難しそうです」
「そっか。ちなみに、なんの素材が欲しいの?」
「そうですね。シルクスパイダーの糸とかですかね。ですが高級な素材なので、そう簡単には手に入らないと思います」
そんな風な会話をしながらご飯を食べ終えて、また工房に戻った。
ちなみにリュゼに頼んだ買い物は、ポーション作成に必要な素材だ。
どうしてポーションの素材を買ってきてもらったのかというと、リュゼが何か俺の役に立ちたいと言ってきたので、錬金術をやって貰おうと思ったからだ。
魔道インクを作る以外にも、錬金術のレベルを上げていけば高品質のポーションを作れるようになり、冒険者で活動する時に役立つので一石二鳥だ。
俺はリュゼに錬金術のやり方を教えながら、ひたすら鉄鉱石をインゴットに変え続けた。
朝からずっとやっていると鉄鉱石のストックも無くなってきたので、今度は鋼鉄をインゴットにする作業を始めた。
しかし鋼鉄は加工はできるのだが、どうしても硬くて鉱石からインゴットにする時間が鉄の倍以上かかった。
一日中作業を続けたおかげで、ようやく鍛冶スキルのレベルが三になった。ちなみに普通の人はもっとかかるので、神様の加護のおかげだ。
リュゼのほうはというと、半日作業しても錬金術は覚えられなかったらしい。
鍛冶スキルが三に上がったタイミングで、明らかに作業効率が上がった。これなら、もしかしたら鉄の細かい加工ができるかもしれない。
そう思って最後に鉄インゴットを加工してみたのだが、思ったようにできなかった。やはり鋳造しないと難しいのかもしれない。
今日はもういい時間なので、これ以上の作業はまた明日にすることにした。
屋敷に帰ると、シノがすでに夕食の準備を終えていた。
「今日は、ご主人様に教えてもらったレシピの一つを再現してみました」
そう、今日の夕食は唐揚げだ。前にレシピを教えたのだが、まさか再現できるとは、さすが料理スキルといったところだろうか。
「おいしいな。さすがシノだ。完全に再現できてる」
「ありがとうございます。それにしても、肉を揚げるというのはこんなに美味しくなるのですね」
「確かに、こんなこと考えたこともなかったです」
二人ともそんなふうに言ってくれるなら、また前世のレシピを教えてみよう。
「それで、明日も工房にこもろうと思ってるんだけど、二人はどうする?」
「私は今日と同じく、錬金術を覚えたいと思っています。これなら私もご主人様のお役に立てるので」
そうリュゼが言った。
「いいの? 好きに出かけたっていいけど」
「大丈夫です。すでにだいぶ良くしてもらっているので、大丈夫です」
「そうか。シノはどうする?」
「そうですね。私も今日と同じく裁縫をやろうかと」
「シノも好きなことをしていいからね」
そんなふうに雑談をしながら食事を終えた俺は、部屋に戻って寝る準備をした。
「それにしても、なんで二人はあそこまで俺に尽くしてくれるんだろうか。別に俺は何もしてないんだけどな」
そんなことを考えながらベッドに入ったのだが、今日は外に出ていなかったのに、鍛冶で思ったよりも体力を使っていたのか、すぐに寝てしまった。
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