キングウェアウルフ戦 後半
キングウェアウルフとの戦闘は一人の冒険者の悲鳴から始まった。
どこからともなく現れたヤツはいとも簡単に一人のBランク冒険者を倒してしまった。しかしそこでこちら側もただ見ていただけではなく、すぐにギルドマスターとAランクパーティーがキングウェアウルフとの戦闘を開始した。
それ以外の冒険者はというと周りのウェアウルフとの戦闘を続けていた。
こちらはギルドマスターとAランクパーティーを抜いた20人、いや一人やられてしまったため19人。それに対してウェアウルフの数はおよそ100匹。
そこから先は厳しい戦いが始まった。
作戦会議ではキングウェアウルフとの戦闘は相手のレベルによるが、およそ20分はかかると言われていた。しかしそれはなんの邪魔も入らなかった場合だ。今はウェアウルフの数が多すぎてこちらで止めきれずに少なくない数が行ってしまっている。
「数が多すぎる」
「ご主人様。やはり私たちも向こうに行って戦った方がいいと思います」
そうリュゼが言ってきた。
「それしかないか。なるべく援護するけど気をつけろよ。それとシノは隠密を発動させているからってキングウェアウルフの方には近づくなよ」
「わかっています。ご主人様も気を付けて下さい」
そういうとシノはスキルを発動させて消え、リュゼは剣と盾を構えて敵に向かっていった。俺はまた木の上に上り、リュゼが怯ませた敵を徹底的に狙った。
どこにこれだけの量のウェアウルフがいるんだというほど次々に出てくる。周辺は死体の山になっている。たまにキングウェアウルフの魔法がこちらまで飛んできてひやひやした。
キングウェアウルフとの戦闘が始まって30分が過ぎたころ、ついに倒しきることに成功したらしく、残ったウェアウルフを全員で倒した。
みんな結構ボロボロでケガを負っている人も少なくなかった。俺とシノは隠密を活用して戦闘をしていたため無傷なのだが、リュゼは装備もボロボロでいたるところに傷を受けていた。
「大丈夫かリュゼ。とりあえずこれでも飲んでおけ」
そういって俺は下級のヒールポーションを渡した。
「ありがとうございます。ですが幸い後遺症になりそうなケガは一切負っていませんので安心してください」
俺とシノはケガをしているリュゼを休ませ、ウェアウルフの死体の処理に向かった。
Aランクパーティーとギルドマスターはキングウェアウルフと戦っていたのにまだ余裕らしく、率先して死体処理を行っていた。
「おうお前ら無事だったか」
「えぇ。隠密スキル様様って感じでしたけどね。正直このスキルがなきゃ死んでますよほんと」
俺とギルドマスターが話していると、横からほかの冒険者の人が話しかけてきた。
「マスター、被害は死者二人に重傷者一人です。一人は最初に食われたやつ、もう一人は飛んできたキングウェアウルフの魔法にやられて死にました。重傷者ですが腕が一本食われたため冒険者を続けるのは難しいかと」
「そうか。報告ありがとうな」
それだけ伝えてその冒険者は自分のパーティーのところに戻っていった。
「おいレイン。そんなしけた顔すんなって。これは仕方のないことなんだ。冒険者は常に危険と隣り合わせ。それをわかったうえでみんなやってるんだ」
「そうですね」
わかってはいたが今回の戦闘で二人の冒険者が命を落とした。一歩間違えれば俺も死んでいたかもしれない。
この世界は前世と違い死との距離が異様に近い。街の中にいたって魔物に襲われればすぐに死んでしまう。
俺はこれ以上何も考えないように体を動かした。ひたすらウェアウルフのしっぽを取り、死体を燃やす。
体を動かしていればその間何も考えなくて済む。
そうして俺たちはウェアウルフをすべて片付けた後、キングウェアウルフの解体に取り掛かった。
「おいレイン、お前解体レベルいくつだ?」
「3ですけど」
「それならこいつの解体を手伝ってくれ。解体スキルを持った奴がほとんどいなくてよ」
「わかりました。それで必要な素材はなんですか?」
「まずは魔石。これは絶対にとってくれ。あとは皮と爪と牙だな」
今回討伐したキングウェアウルフは魔法を使うため体内に魔石があるらしい。この魔石は魔道具作りで使われているものと違い、大きさや出力が桁違いらしい。
ちなみに魔道具作成に使われる魔石は鉱山で取れるものだ。鉱山で取れるものは大きさや出力は小さいものの、安定性が魔物から出る魔石より良いらしく量産に向いているらしい。
では魔物から出た魔石は何に使うのかというと、武器や防具を作るのに使うらしい。いわゆる魔剣とか言われるものだ。
俺はギルドマスターに言われた通り解体していった。サイズがとても大きいため何人かでやっているのにだいぶ時間がかかってしまった。
残った死体はもちろん魔法で焼いた。
ちなみにウェアウルフの肉はおいしくないので誰も食べないらしい。そもそも筋肉質すぎて硬くて食べられたものではないのだとか。
解体を終えた俺たちは一度拠点に戻り、軽い食事をとってから片づけをし、街に戻った。
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