討伐準備
次の日まだ門が開く時間には早いが、俺たちは門の前に集合していた。もちろん周りには昨日集まった冒険者たちがそろっていた。
「朝早くからすまんな。俺たちが今日向かうのは西の森だ。そこにキングウェアウルフが発生した可能性が高いと判断されたため、それの調査及び討伐のために向かうことになった。みんな無事に帰ろう。俺からは以上だ」
ギルドマスターが挨拶をして、俺たちはすぐに出発をした。
普段この時間は門が開いていることはないのだが、今回は特別に領主様に相談して開けてもらえることになったらしい。
この討伐隊のメンバーは俺たち以外がBランク以上の冒険者たちとギルドマスターで構成されている。ちなみにギルドマスターは元Sランク冒険者だそうだ。
さすがに現役時代と比べて力は落ちたそうだが、それでもAランク冒険者と同格かそれ以上の実力は持っているらしい。
正直この街にこれほど強い人たちがいるとは思っていなかった。ちなみに今は依頼でいないのだが、この街には二人組のSランク冒険者がいるらしい。
さすが辺境にあるとはいえ、冒険者の街と言われるわけだ。
俺たちは小一時間ほど歩いて目的の西の森付近まで来ていた。すぐ近くには昨日依頼できた牧場がある場所だ。そこで一度休憩をし、俺とシノが一度森の偵察に入ることになっている。
「じゃあレイン、シノ頼んだぞ」
「「はい」」
そうギルドマスターから激励をもらい、俺たちは森の中に入っていった。
今回の偵察は西の森調査のための拠点候補地を探すことだ。
大体、高ランクの魔物が現れ、そのあたりを調査する場合、拠点を建てて行動することが一般的である。高ランクの魔物になると発見するのが難しく、また見つけてもすぐに倒す行動に移れないため、拠点を建てるのだそうだ。
「シノはどこがいいと思う? 俺は危険かもしれないけど、昨日ウェアウルフと遭遇した場所がいいと思う。水場も近くにあって、撃退に有効活用できる岩場もある」
「いえ、あの付近はやめましょう。キングウェアウルフがいた場合、あそこには監視が配置されていると思います。高ランクの魔物になればなるほど、人間と同じくらいの思考能力を持っていると思ってもらって構いません。Sランクの魔物にもなれば、会話できるものもいるくらいです」
「そうか。なら、ほかの候補地を探すしかないな」
「私的には、あの川のさらに下流がいいと思います。水の確保は大切ですし、まず最初にウェアウルフとの戦闘になるのは間違いなく昨日の岩場付近になると思います。そこからなるべく近くがいいでしょう」
そう、シノと候補地をある程度決め、そこに向かうことにした。
ちなみに俺は森の中の探索などしたことがないため、道はシノに任せっきりだ。
30分ほどで俺たちは目的の場所に着いた。昨日より1キロほど下流で開けている場所があったため、そこに決めた。
俺とシノは、あらかじめ決めていたように、俺が戻りギルドマスターたちを連れてくる。シノはその間、昨日の場所の探索に向かうことにした。
森での行動が不慣れな俺でも、さすがに今通った道をわからなくなるほどではない。
「ギルドマスター、拠点の場所が決まりましたのでついてきてください」
「全員聞いたな。休憩は終わりだ。すぐに出発するぞ」
さすが一流の冒険者たちで、すぐに出発できた。
「それでシノはどうしたんだ?」
「昨日ウェアウルフと戦闘になった場所を見に行ってもらいました」
森の中を進みながら、ギルドマスターが話しかけてきた。
「連れてきた俺が言うのもなんだが、大丈夫か?」
「大丈夫だと思います。それに、森の奥までは絶対に行くなと言っておきましたので」
「そうか。ならいいんだが」
そんなことを話していると、すぐに拠点の位置に着いた。そこにはもうシノが戻ってきており、報告してくれた。
「昨日の場所ですが、やはりウェアウルフがいました。数は10匹以上です」
「そうか。お前たちはいったん休んでくれ。拠点は俺たちが建てる」
俺たちはお言葉に甘えて、他の人達が仕事をしているのを眺めていた。
普段ならちょうど街の門が開くころ、拠点の作成が終了した。俺たちは情報共有をしながら朝食を食べた。
「俺たちは一度ここで待機だ。もちろん見張りは順番に回していく。その間、レインとシノには先ほど見つけた群れを偵察してきてくれ」
「わかりました」
「偵察が終わったら半数を残してその群れを倒しに行く。異議のあるやつはいるか」
ギルドマスターが全員の顔を見渡すが、反論する人はいなかった。
俺たちは話し合いを終えたらすぐに出発した。今回の偵察内容は正確な数の把握と、その周りにほかのウェアウルフが待機していないかの確認だ。
「シノどうだ?」
「数は22匹です。数が先ほどより多くなっているため、もしかしたらこちらの行動がばれている可能性があります」
「そうか。それでこの群れ以外の気配は感じられるか?」
「いえ、ここからでは難しいです。川の反対側にわたってみないとわかりません」
「すまないが、俺がついていくと足手まといになるから頼んでもいいか?」
「問題ありません。ご主人様はここで待っていて下さい。もしものことがあればすぐに撤退を」
そういうとシノは跳躍して、次の瞬間には川の対岸の木の上にいた。これは暗殺者というより忍者なのでは、というのが俺の最近のシノの評価だ。
5分もしないうちにシノが戻ってきたのだが、その顔は明らかに険しいものだった。
「ご主人様。見つけました。多分キングウェアウルフだと思われます」
「そうか。本当にいたんだな」
「一応、遠くから確認しただけなので断定はできませんが」
「俺が鑑定を使って確認したいが、一度報告に戻る方がよさそうだな」
そう言って俺たちは拠点に戻った。
「それで、どうだった」
「すぐ上流にいる群れは22匹です。しかし、明らかに先ほどより数が増えているように見えました。こちらの行動がばれている可能性があります。それと、シノがキングウェアウルフらしきものを発見しました」
そういうと周りからざわめきが起こった。
「遠くから見ただけで断定はできないそうですが、俺が一度行って鑑定してみたいと思っています」
「そうかわかった。お前たち、状況は聞いた通りだ。もしかしたら思っていたより短期決戦になる可能性が高い。今日にでも討伐に出れるように準備してくれ」
そのあとは対キングウェアウルフ戦の作戦会議が行われた。俺たちはというとキングウェアウルフの戦いには参加せず、取り巻きのウェアウルフを任された。
キングウェアウルフの方は主にギルドマスターとAランクパーティーが当たることになった。それ以外の冒険者も一応攻撃はするが、主にウェアウルフの対処をするらしい。
ちなみにそのAランクパーティーは6人で構成されており、盾使いが一人、剣士が一人、槍士が一人、弓使いが一人、魔法使いが一人、ヒーラーが一人と、とてもバランスの取れたパーティーで、周りからはいつSランクに上がってもおかしくないと評判らしい。
作戦を決めた俺たちは、当初の予定とは違い全員で上流に発見した群れに向かった。
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