ランクアップ
狩りを終えた俺たちは南門から入ったが、そこの買取所には寄らずにわざわざ北側の買取所まで向かった。南側は混んでいて時間がかかるのもあるが、主な理由はガイさんに挨拶するためだ。マジックバッグに素材を入れているため周りに迷惑もかけないし、いいだろう。
買取所に入るといきなり声が飛んできた。
「久しぶりだなレイン」
「久しぶりですねガイさん」
ガイさんと会ったのはクリスタルホーンラビットの素材を納品した日が最後なので、実に一ヶ月ぶりだ。
「なかなかお前さんが来ないから冒険者を辞めちまうんじゃないか心配だったぜ。それにしてもお前、えらい別嬪さんを連れてるな。それも二人。お前さんのパーティーメンバーか?」
「えぇ、みたいなものです。これから一緒に活動していくことになった。リュゼとシノです。二人とも俺よりだいぶ強いですよ」
「そうかい。俺はガイだ。よろしくな。それで今日は何の素材を納品するんだい」
「それがですね。ちょっと下がってくださいガイさん。危ないですよ」
ガイさんが後ろに下がったのを確認して、俺はカウンターにヴェルディアスを四匹出した。
「お前さん、これはヴェルディアスじゃねぇか。よく倒せたな。それにマジックバッグも買ったんだな」
「えぇ、クリスタルホーンラビットが思ったよりも高く売れたので買ってみました。倒せたのは主に二人のおかげですけどね」
「それでもちゃんと弓の痕もあるし、これはお前さんがやったんだろ? すごいじゃないか」
「えぇ、まぁ。それでこれの買取をお願いします。あ、一匹は家で食べるつもりなので肉以外の素材で……いや、皮も一匹分残してください」
そういえばヴェルディアスの皮は丈夫なので防具に向いているらしい。全身フルプレートの鎧を着るわけにはいかないので、それ以外の場所の防御のために使ってみるか。
「おう、じゃあ三匹分だな。ヴェルディアスは皮と肉だけしか素材にならないからな」
そう言うとガイさんはパパっと作業を終わらせた。
「全部で金貨一枚に銀貨五枚だな。料金はギルドでもらってくれ。それじゃあまたな」
「はい、また来ますね」
そう言いながら俺たちは買取所を出た。
「やっぱりCランクの魔物は値段が違うね。でも大量発生がもうすぐ終わっちゃうらしいし、そうなるとまた一気に稼ぐのは大変かもな」
「そうですね。本格的に常時依頼ではなく、ちゃんとした報酬が出る依頼を受けた方がいいかもしれませんね。あとはランクアップをしていけば討伐依頼も高いものがありますから」
そうリュゼが助言してくれた。
「そうだな。冒険者にも慣れてきたし、依頼を受けてもいいかもな」
そんなことを話しながら歩いているとギルドに着いた。ギルドに着くと明らかに前よりも視線を感じる。昨日もそうだったのだが、やはり美少女二人を連れてるというだけで目立つらしい。
列に並んでいると俺たちの番になった。
「お預かりします。少々お待ちください」
今日も受付にいるセレナさんが対応してくれた。しかし今日はいつもと違い、奥の部屋に一度入って行ってすぐに戻ってきた。
「こちら代金と冒険者カードです。今日からレインさんたちは全員Fランクに昇格です。おめでとうございます」
「昇格ですか? それまたどうして」
気になって聞いてみると意外な答えが返ってきた。
「それはギルド買取所にいるガイさんからの推薦です。あの方は元Aランク冒険者ですので、実力のある冒険者がいると推薦してくるんです。それでギルド側でも問題ないと判断した場合のみランクアップできます。それにレインさんは依頼もそれなりに達成しているので」
ガイさんが元冒険者なのはなんとなくわかっていたが、まさかAランクだったとは。
「そうなんですね。今度ガイさんに会ったらお礼を言っておきます」
「一応ランクアップして上のランクの依頼を受けるときは十分気を付けてくださいね。ランクアップ後が一番冒険者の死亡率が高いので。まぁヴェルディアスを狩れるようなら大丈夫だと思いますが、一応です」
「わかりました。気を付けます」
そうして俺たちはギルドを出て買い出しに向かった。ちなみに今日は俺も料理しようと思っている。前世の料理の再現だ。
作ろうと思っているのはハンバーグだ。時間と手間はかかるが、俺が一番好きな牛の食べ方だ。
玉ねぎに似た野菜と合い挽き用の豚肉を買い、卵と調味料も買い足した。
俺が調理するにあたって二人からいろいろと言われたが、そこはもちろん押し通らせてもらった。というか故郷の料理を作りたいと言ったらすぐに納得してくれた。
ハンバーグを作るためにまずは合い挽き肉を作った。ちなみに作り方はとてもファンタジーで、容器に牛肉と豚肉を七対三で入れて、あとはリュゼに風魔法でひき肉にしてもらった。
ちなみに頼んだらすごくもったいなさそうな顔をしながらやってくれた。さすがに高級肉をぐちゃぐちゃにするのはちょっと嫌らしい。
ハンバーグという料理を知らなければ、もったいないと感じても仕方がないだろう。
俺は作ってもらったひき肉とみじん切りにした玉ねぎ、卵を混ぜてタネを作った。パン粉はなかったため今回はなしだ。
それをフライパンで焼いた。残った肉汁は調味料と混ぜてソースにした。
二人が作ってくれた付け合わせを盛りつければ完成だ。
「よし、食べよっか」
ちなみに食事は全員でとることにしている。
これについてもひと悶着あったのだが、俺がいいから一緒に食べようと言ったため一緒になった。
「うーん、うまい! やっぱり肉と言えばハンバーグだよな。ステーキもいいけど俺はこっちのほうが好きだ」
「ご主人様、これはおいしいですね」
嫌そうに作っていたリュゼもハンバーグのおいしさに気が付いたらしい。
「私が作るのより全然おいしいです。どうして私の方が料理スキルのレベルは高いのに。自信なくしそうです」
シノはというと少し涙を浮かべながら食べていた。どうやら悔しさとおいしさがぶつかって何とも言い難い状態になっていた。
「これはレシピがいいだけだよ。シノが作った方が絶対おいしく作れるから。今度作るときはよろしくね」
「はい。わかりました」
ヴェルディアスの肉はまだまだ余っているので、今度は牛の唐揚げなんかも作ってみよう。




