グランツ商会
手紙を受け取った俺はグランツ商会に向かった。取引はしたが、直接商会に行くのは初めてだ。
「うわ、でっかいなぁ」
グランツ商会の前に着くと、冒険者ギルドと変わらないくらい大きな建物がそこにはあった。正直、中に入るのをためらうくらい豪華だった。
「もっとちゃんとした服で来るべきだったかな」
お店の前で中に入るか悩んでいると、中から声がかかった。
「いらっしゃいませ。レイン様で間違いないでしょうか?」
「はい」
「グランが中で準備しております。ついてきてください」
俺はお店の人に案内されるままに中に入っていった。中は外側ほど豪華ではなく、思ったよりもシンプルだった。
俺以外にも客がいたが、普通の格好をしているので別に場違いという雰囲気にはならなかった。
これなら大丈夫だろうと思っていたのだが、俺が案内された部屋はものすごく豪華な部屋だった。お茶や菓子も出してもらったのだが、どう見ても高級品で少し口にするのがためらわれた。
「お待たせいたしました」
お茶を飲み、一息ついた瞬間を見計らったかのようなタイミングで、部屋にグランさんが入ってきた。
「いえいえ。全然待っていないので大丈夫ですよ」
「では早速、オークションでの売り上げ金額をお伝えします。クリスタルホーンラビットの角は大金貨40枚になりました」
「だ、大金貨40枚ですか? 普通、大金貨20枚のはずじゃ……。どうしてそんな値段に」
大金貨40枚といえば、日本円にすると約四百万円だ。
「それが、この国の第二王女殿下が病に倒れていまして、その病の治療のためにエリクサーが必要らしく、王族の代理の方が一気に大金貨40枚も出したので、それで決まりました。さすがにほかに狙っていた方たちも、大金貨40枚以上出す方はいらっしゃらなかったので、すぐに決まりましたね」
「王族の方が。それなら納得です」
「それで、その代金から手数料の銀貨5枚を引いて、大金貨39枚、金貨9枚、銀貨5枚のお渡しになります」
「ものすごい大金ですね。正直、持ち歩くのが不安な額ですね」
この世界には銀行という概念がないため、自分で持ち歩くのが普通なのだ。
本来、クリスタルホーンラビットのような高ランクの魔物を倒すのはもっと強い人なため、奪われる心配もないのだろうが、俺はまだ駆け出しの冒険者だから格好の獲物だろう。
「それなら、護衛に奴隷を買われてはいかがでしょうか?」
「ど、奴隷ですか?」
一応、奴隷というものがこの世界にあるのは知ってはいたが、自分とは関係ないものだと思っていた。
「レイン様は田舎のご出身でございますよね。奴隷といっても、そこまで酷いものではありません」
そう言うと、グレンさんが奴隷について詳しく教えてくれた。
奴隷はまず種類がある。借金奴隷、戦争奴隷、犯罪奴隷だ。一般に売られているのは借金奴隷と戦争奴隷の二種類で、犯罪奴隷は主に鉱山や建築現場などの危険な仕事をさせられることが多いらしい。
ほかにも違法奴隷というものも存在し、人攫いや人身売買などで取引される奴隷は、持っているだけで罪になってしまうらしい。
「もちろん、当店では違法奴隷の扱いは行っておりませんのでご安心ください」
「それは疑っていませんが、やはりどうしても奴隷というものに抵抗があって」
「奴隷といっても、そこまでひどいものではないんですよ。口減らしなどでよく奴隷になりに来る方たちがいらっしゃいますが、正直、村で暮らすよりも、ほとんどの場合、奴隷として暮らす方が裕福な生活ができますから」
奴隷を買う人はお金持ちが多いため、自由はなくても、わざわざ奴隷になりたいという人は少なくないらしい。しかも、奴隷になるときの契約内容によっては、数年働けば解放されることもあるらしい。
「それに、この国には奴隷を守る法律がありますし、レイン様がお考えのようなことはないと思いますよ」
「じゃあ、少し見せてもらうことはできますか?」
なんだか口車に乗せられているような気もするが、とりあえず奴隷がどんなものなのか、今後のためにも見ておいて損はないだろう。
「それでは、どのような奴隷をご所望でしょうか。性別、年齢、用途など、ご希望があればそれに沿った者を連れてきますが」
「そうですね。あまりよくわからないので、グレンさんのおすすめとかでもいいですか?」
「当初の目的はレイン様の警護でしたよね。それなら戦闘奴隷がよろしいかと」
「じゃあ、それでお願いします」
「それでは連れてまいります」
そう言うと、グレンさんは部屋から出ていった。
「なんかうまく誘導されちゃったな。奴隷なんて買うつもりなかったんだけど、そこはさすがやり手の商人って感じだったな」
待っている間、インターネットでも奴隷に関することを調べていたのだが、この国における奴隷の立場は悪くないらしい。
では、この国以外だとどうなのかというと、大陸の南側の国では、この国とほとんど同じく奴隷に関する法が定められていた。しかし、白龍山脈の向こう側の帝国では、奴隷は労働力としか見られていないらしく、扱いもあまりよくないらしい。
「帝国か。あまりいい感じの国ではなさそうだな。もし行くことがあれば注意しないと」
そんなことを考えていると、グレンさんが奴隷を連れて戻ってきた。
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